AGSありきのハイブリッドシステムであり、AGSはMTとATの利点を併せ持つコンパクトで伝達効率に優れるのが特徴。日本ではよりポピュラーなCVTを搭載できなかったのはスペースの都合とのこと。
なお、コンパクトな駆動用バッテリー(リチウムイオンバッテリー)は、4.4Ahと容量も小さめでEV走行スイッチは用意されていません。さらに、エンジンルームに鉛バッテリー、助手席下に12Vリチウムイオンバッテリー(S-エネチャージ)を合わせると3つのバッテリーが積まれていることになります。
走り出すと、AGSのシフトフィールが走りのフィーリングそのものも左右している印象を受けます。スズキのAGSはシングルクラッチとしてはよく出来ていますが、それでもDCTや変速レスのCVT、トルコン付きATと比べると、MTベースらしい変速の「間」があります。
それをソリオ・ハイブリッドでは、AGSを介さずに直接駆動軸に伝える利点を活用し、10kW/30NmのMGU(駆動用モーター)の駆動力がトルクギャップを埋めることで、よりスムーズな走りが可能になっています。
実際には、とくに1-2、2-3速の変速時にややトルクギャップがうかがえますが、従来のAGS搭載車よりも確かに変速の間も小さく感じさせます。
エンジン走行、モーター走行、ハイブリッド走行をかなりこまめに切り替えていて、街中中心から首都高速くらいの速度域だとEV走行の頻度もかなり多め。エンジンの再始動はショック、音ともによく抑えられていて、走行中はほかの音・振動の要素も多いですからほとんど気になりません。
駆動バッテリー、駆動用モーターともにコンパクトであるため、EVスイッチがないのは惜しい点ですし、変速操作をより積極的にしたいAGSだけに、シフトレバーもしくはパドルシフトでマニュアル操作がしたいところですが、残念ながらマニュアルモードは用意されていません。
こうした細かな点をのぞけば、小さいボディで広いキャビン、荷室を維持しながら32.0km/Lのカタログ燃費を実現しているのはダイハツ・トールなどのライバルに対する強みです。
(文/塚田勝弘 写真/小林和久)