プラシーボ?オカルト?アルミテープの謎【渡辺敏史の新型86試乗1】

そう、僕にとって最大の興味は、こういうプラシーボともオカルトとも取られかねないアイテムに大のトヨタが手を出したということにありました。担当者に話を聞いてみると、アルミテープ採用に至る経緯の発端は、開発時と実験時での車両挙動の乖離にあったといいます。机上では成立した空力特性が風洞ではなぜか現れない。或いは風洞まで順調だったのに、実地ではどうも様相が違う。こういう揺らぎの事象を社内ではオバケと呼びながら、その原因を探り続けていたそうです。と、そこで行き着いたのが静電気同士の喧嘩だったということなんですね。

もちろんそれは分析による実証をもって、社内稟議を通過、科学的根拠を伴っての特許も出願し、現在に至るわけです。が、想像するに以前のトヨタなら、アルミテープが・・・と口にした時点で一笑されるか一蹴されるか一掃されるかのいずれだったのではないでしょうか。それが日の目をみたのはやっぱり、大将自らが「もっともっと!」といいクルマづくりに発破をかけている、それによる空気の変化っていうのがあったんでしょう。
20160914Toyota86 Al Tape_s022

と、ここまでタラタラと書いておきながらなんですが、僕はこのテープによる効果の有無、断言できるほどには感じられませんでした。試乗は旧86の車内で、同乗したエンジニアがコラム下にテープを貼ったり剥がしたり・・というかたちで行われましたが、んまぁ言われてみれば、操舵初期の応答性や切り返し等でのロールの収まりにシャープさが出たかなぁという感じでして、お前それプラシーボじゃね? と問い質されれば反論は出来ないかなぁという感じです。もっとも、この日は悪天候だったことに加え、テスト車がそもそも動的な優位性の高い86であることがかえって違いが嗅ぎ取れない原因だっという可能性もあります。これが所定の空力特性を得るための手段だとすれば、かえって外乱に弱いミニバンやSUVの側にわかりやすく違いがみてとれるかもしれませんし。

じゃあなんで86でテストするのよ・・といえば、今回がマイナーチェンジ版86の試乗会だったからです。そもそもこのタイミングでの発表に至ったのは特許の目処が立ったからであり、まぁ86のお披露目にヴォクシー持ってくるわけにもいかんだろうというトヨタの気持ちも理解は出来ます。

(文:渡辺 敏史/撮影:前田 惠介)

【関連記事】

トヨタ86KOUKI!ビッグマイナーの結果は?【渡辺敏史の新型86試乗2】
https://clicccar.com/2016/10/08/404937/

648万円の86「GRMN」は高い?安い?【渡辺敏史の新型86試乗3】
https://clicccar.com/2016/10/09/404938/