── WRX STIに不利になるようなレギュレーション変更がありましたが、これも対応は大変だったのでは?
「レギュレーション変更が公表されたのが、実は今年に入ってからだったんです。今年に入って急に変えられてれても、実は間に合わない。アウディ勢は、変更されるレギュレーションにのっとって去年からクルマづくりをしている。そういうところでアウェイだなぁと感じましたね。それがわかったのが、実はけっこう最近でした
うちは2月か3月にはクルマをドイツに送らなければならない。そうなると、エンジンに関しては小さくなったレギュレーションに仕様に合わせて開発ができない。昨年仕様にそのままリストリクターを小さくして臨むしかないわけです。そして、日本で事故をして(船便で)送れなくなった。そうしたことにエネルギーを使われてしまいました」
── アウディはしっかり対応できていたと。
「アウディは、リストリクターが大きくなって、タイヤも太くなって、タンク容量も大きくなって、そういうレギュレーションのなかでクルマづくりをしている。でも、レギュレーションについて我々のほうが理解が低かったということですよね。ルールはヨーロッパで作られています。ドイツで勉強が必要だということを痛感しました」
── そういうマシンの状況下、トップを走るアウディTT RS2を追いかけているとき、また、トップに立った後にアウディTT RS2を引き離そうとしても、なかなかその差が変わらず、我慢比べのような展開が続きましたね。
「完全にクルマ作りで負けたなと思いました。有利な展開なはずなのに、逃げられない。蛇ににらまれたカエル状態。まだまだ力が及んでないなと思いましたね。真っ当に戦ったら追いつけないと思いましたね」
── いっとき差がついても、また戻ったりという展開はなんだったのでしょうか?
「アウディのドライバーのレベルの差だと思いますね。1人はめちゃめちゃ速い選手がいました。彼が走っているときは、うちはかなわなかった。ほかの2人はまあまあ、1人はあまり速くない。そのドライバーのときにうちは追いつくんだけど、そのあとがうまくいかなかったですね」
── その点、STIチームの4人は全員が総じて高いレベルで走れていますしたね。
「そうですね。4人が、うちのクルマのすべてを出してくれました。雹がふったときにグラベルに飛び出して当たりそうになったときも、よく避けられたよね。あれはカルロの執念でした。普通だったら終わっていましたよ。壁とクルマの間に入っていった。パッと切ってすぐ戻した。だから、リアバンパーをかすったくらいで済んだんです。フロントが当たっていたら、クルマが回転してしまって足がやられて、多分終わりだった。直後に来た車にも挟まれて、絶対に終わっていたと思います」