レーシングドライバー・モリゾウ選手とトヨタ自動車・豊田章男社長がいる現場

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先にも書きましたが、世界の豊田章男社長です。

当然ガードも厳しく、やすやすとお話できるような雰囲気ではありませんし、新聞経済系記者はまだしも自動車メディアの端くれがおいそれと話しかけられるような状況にはとてもなりません。

しかし、決勝レース中、空が白んできた日曜朝、GAZOO RACINGのピットで取材をしていると、朝の陣中見舞いでしょうか、豊田社長が現れました。

そして、気軽に話かけてきてくれたのです。

「朝から大変だね〜。記者のみんなもメカニックみたいだね。私は寝ましたよ。でもあまり寝られないんだよ。年だからね〜。体力がない(ワハハハ)」と、そんな世間話をしてくれました。

トヨタ自動車の代表取締役豊田章男ではなくひとりのクルマ好き、レース好きのモリゾウ選手の素顔と接することができました。

マシンにトラブルが続く現場の様子を、そして必死に対応する現場の面々の姿を、自分の目で見に来たのでしょう。

そして、早朝からピットでうろうろしているレースが好きそうな取材陣をちょとからかってやろうと思ったのだと思います。

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こちらも調子に乗って、モリゾウ選手に聞いてみました。

GAZOO RACINGのニュル24時間レース活動において、これまで重要な役割を担ってきたトヨタ86の存在が今年はないことが非常に気になっていたのです。多くの86オーナーの皆さんの、今年のニュルに86が出ないことが残念だという声を聞いていたのです。

「86は、ここ(ニュル)でなければ生まれなかったクルマです。そしてここでの走りをベースとしたGRMNを発売し、それをある程度盛り込んだマイナーチェンジを迎えようとしています。
あるひとつのところまでは、やりきったというふうに、私は見ています。これから次の86に対してのいろいろなヒントを、ここから盛り込んでいくのではないかと思います。未来を向いていると思っていただいていいと思いますよ」

とモリゾウ選手。

モリゾウさんのコメントは、決して86オーナーに対するリップサービスや宣伝文句ではありません。

真摯に来年の参戦車両を検討し、それを市販車にいかに直結させるのか考え、そして現場に指示する方向性を考えているのだろうと感じました。

ニュルブルクリンクで自分という人を鍛え上げ、自らがステアリングを握ることで86も鍛え、ついに86GRMNを世に送り出した人物たからこそ言える言葉です。

一番楽しそうに応えてくれたのは、86のマイナーチェンジ版の乗り味をお聞きしたときです。

「ええ、乗りました乗りました。ほんと、良いクルマに仕上がってますよ。エンジンもいい感じです。ほんと86・BRZは素晴らしい」

と。