でも、モータースポーツやドリフトの振興という面からいえば、旧車ばかりが勝つというのはあまり好ましくはありません。現代のクルマが活躍してこそ、クルマも売れるし、若者に夢を与えることになりますからね。旧車しか勝てない競技には未来なんてないし。
しかし2014年、川畑選手はTeam TOYO TIRES DRIFT TRUST RACINGに電撃移籍します。そして車両は新規に製作したGT-Rだと発表されました。この時点で、少なくない関係者が川畑選手の低迷を予想しました。
その理由は、まず現行車種にはドリフト仕様車としてのデータがないこと。ただ速く走ることとちがって、ドリフトには独特のマシンメイクや車両特性が求められるのです。そしてもともと4WDであるGT-RをFR駆動にすることの難しさ。さらに現代のクルマは電子制御が多いので、思いもよらない電子系トラブルの恐れなどがあるからです。D1GPで現行車で戦うことはそれほど困難をともなうものなのです。
じっさい、2014年の開幕戦では、川畑選手はスピンやドリフトのもどりがないように走るのが精いっぱい。相手との勝負なんてとてもできない状態で、チームも戦闘力の低さに愕然としたそうです。ちなみに見ていた私にいたっては、むしろ「ふつうにドリフトできたこと」に感心したくらいでした。
第2戦もエンジンがかからなくなるトラブルで途中リタイヤ。第3戦もパワーステアリングのトラブルで途中リタイヤ。前途多難に思われましたが、シーズン後半にはしだいに成績を上げてきました。そして最終戦のお台場では準優勝。しかも相手の末永(正)選手のミスに誘発されての接触が原因による負けで、内容的には勝っていたといっていいでしょう。
GT-Rがここまで急速に戦闘力を上げてきたのは、3つの主要な要因が考えられます。