ミライを走らせて感じたトヨタの水素へのホンキ度【TOYOTA MIRAI試乗】

トヨタの燃料電池車は、かつて、フューエルセル、水素ボンベなどをレイアウトするのに自由度の効くクルーガーなどをベースに行われてきました。

ところが、市販車水素燃料電池車第1号であるミライはセダンです。エンジンはないとはいえ、様々なデバイス、ユニットを収めるのに、ある意味最も不利な形状です。なぜ、セダンで出してきたのか? 製品企画本部ZF主幹の浅井尚雄さんによると、「もちろん、大変なのはその通りです。けれど、セダンでモノにならないクルマ(燃料電池車)だったら、その先もないのではないか、ということで始めました」といいます。

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あえて困難な道を選び、ぜったいに市販にこぎつけるという水素を普及させる本気度が見えてきます。

走らせた印象では、一般的な電気自動車と大きな差は感じられません。回生の強さは大きめでなく、回生の選択の幅が大きくあるわけでもありません。この辺も、最初の燃料電池車として、違和感なく、まずはこれが普通だということを基準に作ったということです。燃料電池車のスタンダードを自分たちで作ろう、ということでしょう。

走行中も車内はとても静かであるのは言うまでもありません。静かになっている分、タイヤと路面から発生する音が大きく感じてしまい、700万円のクルマにしては惜しい、と感じる人もいるかも知れません。ミライにはブリヂストンの低燃費タイヤの代表格エコピアが採用されていますが、高級車向けブランドのレグノくらいがミライの車格にふさわしく、走行距離もそれほど変わらずに快適性が増すのでは?と思ったわけです。けれど、浅井さんによると、「ミライは、例えば灼熱の地で連続した登り道を走らせるようなテストも行い、最も過酷な条件でも最小限の走行抵抗にしたかった理由もあるんです」とのこと。

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日本国内だけで、顔の見える会社役員や一部の政治家さんにアピールを兼ねて乗ってもらうクルマなら、そこまで考える必要はなかったかも知れません。けれどミライは、世界中のどんなシーンでも普通の人が使えるようにテストを繰り返し市販化となっていることが想像できます。

この記事の著者

小林和久 近影

小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務めた。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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