新型アルトの大きなトピックスは、60kgの軽量化と45mm低くなったボディです。いずれもスズキのエンジニアは燃費を追求するために追求したはずですが、これはそのまま走りにも有効。走りのポテンシャルは確実に高まっていることでしょう。
とくに60kgの軽量化は約9%という大幅な数値。NAしか設定のないアルトでも、その活発な走りは十分に感じることができました。普通に走る分には、高速道路を含めてターボなんて不要! と言いたくなるほど。逆にいえば、ターボエンジンが搭載されるターボRSのパフォーマンスに期待大です。
新型アルトのメイングレードにはCVTのみが設定されています。しかしベーシックグレードと商用バンには、5速MTも用意されています。今回、5速MTの商用バンが用意されていたので、もちろん試乗してみました。
エンジンはVVTナシの、ごく普通のNA。しかし結構パワフルで、3速ギヤでもしっかりと加速していきます。だが気になっていたのはシフトレバーの剛性感ですが、これが悪くなかった。ゲートの感触も掌に伝わり、素性としては十分。シフトノブの位置は比較的手前で、しかも高めにあります。これをベースにスポーティにチューニングしてやれば、楽しいシフトワークができそうな感じです。
ドイツ車流の短くて低い位置にあるスイフトスポーツのシフトレバーよりも、むしろスポーティで扱いやすくなるかも??
バランス良く無理のないペダルレイアウトも、ヒールアンドトゥが楽にできる。少し高めのヒップポイントを20mmくらい下げてやれば、シフトノブの高さも含めて、かなり面白いことになりそう。
そしてもうひとつ、新型アルトにはAGSと呼ばれるトランスミッションが新登場しました。これもベーシックグレードと商用バンにだけ設定されているもので、MTをベースにクラッチ操作とシフト操作を自動で行う、いわゆるAMTです。
ヨーロッパではスモールカーの2ペダルトランスミッションとして、AMTのシェアが拡大しています。軽量で高効率、そしてコストも安いので、まさにスモールカー向きのATなわけです。そしてMTをベースにしていることから、スポーツモデルにも向いているのです。かつてはBMWのSMGやフェラーリのF1マチックなど、AMTがスーパースポーツのトランスミッションとして採用されていました。
そして、これは想像ですが、アルトターボRSにも、そのAGSが採用されるだろうと思います。スズキはAGSを、すでにインドやヨーロッパで販売してきましたが、日本国内には初登場となります。その実力は、かなり優れたモノでした。
AMTで一般的に気になるのが、発進の時のクラッチミートと、シフトアップ時のタイムラグです。とくに1速から2速へのシフトアップでは、エンジンの回転数が落ちるまでクラッチミートを待たなければならず、タイムラグが大きくなり、減速感が出てしまう場合ももあります。
結果からいえば、スズキのAGSはかなり優れたものでした。その動作は常にスムーズで、妙な減速感が出ることもなく、かといってタイムラグが大きいというわけでもありません。得意なシフトダウンは十分に素早く、NAであっても軽快に走らせることができます。