清水和夫氏と自動運転について白熱討論「自動運転と無人運転の違い」とは?【東京モーターショー2013】

11月24日、東京モーターショー一般公開2日目、会場近くで自動車評論家の清水和夫さんを中心に、自動運転に関する討論会『清水和夫が教える「間違いだらけの自動運転」』が行われました。

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自動運転技術は、各国、各メーカー、様々な企業が、最新モデルに搭載したり、次世代の技術としてなど、アピールし合っているように見えます。

日本ではスバルのアイサイトなどが「ぶつからないクルマ」として知られていますが、それが自動運転と言うと少し短絡し過ぎにも思えます。もちろん、なにがどうあっても「ぶつからない」でない事は明らかです。

討論会を聞いているうちに、そういった自動運転技術が目指すところが明確でないのがひとつの問題だとわかりました。

それ以前に、自動車とはなにか、という部分から清水和夫さんさんは改めて定義すべきだと言います。

つまり、自分が思う通りに自由にその場所へ移動できる手段が自動車というわけです。そういう意味で、完全な自動運転、無人運転は自動車の延長上ではないと考えたほうが現時点では良いと言います。

もちろん、討論会ですので別の意見も飛び交います。完全な自動運転を自動車の目標にしてもいいのではないか、高齢社会や効率的物流などを考えてもより自動車の運転自動化が進んだほうが良い、などです。

清水さんもそのことはもちろん理解した上で、その実現はさらに先であり、そのころが例えば30年後くらいだとすればもしかすると自動車は空を飛んでいたり、水上を走っていたりするかもしれない、そうでない現在のドライバーが自分の意志で道路上を動かす姿としての自動車が目指すのは(実現が数年以内にあるものとして)運転を支援するモノであり、運転の主体はドライバーであることを前提として話を進めるべきだろう、ということです。

それを聞いてスッキリしました。クルマや運転が好きな人は、自動車やインフラに運んでもらうクルマに乗っかっているのはオモシロくないかもしれない、けれど渋滞中や単調なロングドライブなどでのミスは防いでほしい、という一見すると矛盾のような要望の差し当たっての解決にもなります。完全な無人運転を目指すとすれば簡単にも思いつく技術的だったり法的だったりコンプライアンス的だったりする困難も、いったん別物と考えれば可能性と実現性が広がる気がします。

そうした目標を明確にした上で、現在必要なのはHMI(Human Machine Interface)だといいます。

つまり、自動化する部分にしても運転支援する上でも、クルマがどういう状況にあるかはドライバーに伝えなければならない。例えば車線を逸脱しそうになったとき、それをブザーで知らせるのか、ステアリングで修正しながら反力で伝えるのか、などがまだまだ研究課題だということです。また、メーターやカーナビなどから得られる情報を何が必要で、どうやって伝えるかなども重要です。

究極にドアトゥドアまで寝ている間に運んでくれるのなら一切起こさないでほしいかも知れませんが、人間が運転主体である自動車なら、常にクルマを通じて運転状況や道路環境はドライバーに伝えて欲しいモノであるハズです。自己主張より空気を読むのを美徳としてきた日本人には不得意な部分なのかも知れませんね。

クルマに求めるモノがパワーや快適性などある程度までは「あったほうがいい」とわかりやすかった時代から、現在求められているのは安全、環境性能は引き続きですが、その先にあるものは人間が楽に気持ちよく移動できるということでしょうか。

それを追求することは、よく言われる若者のクルマ離れや、最近のオモシロいクルマが減った、などという方向を抑えることにもつながるでしょう。

クルマが勝手に運んでくれるよりも、自分の運転の苦手な部分をサポートしてくれるほうがきっとドライブやクルマを好きになっていく気がします。

クルマとの対話、路面や環境のインフォメーション、つまり運転はコミュニケーションであるべきだと思いました。これが、クルマに対して思い入れのある人達とのコミュニケーションで気付くことができた、非常に有意義な討論会でした。

清水和夫公式動画サイト>>>http://startyourengines.net/

清水和夫公式サイト>>>http://shimizukazuo.com/

(小林和久)

この記事の著者

編集長 小林和久 近影

編集長 小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務める。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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