未来のモビリティについてちょっとお勉強。ビッグサイトでは連日シンポジウムが開催中!【東京モーターショー2019】

■自動運転システムは恋愛に似ている?

東京モーターショーはクルマのお祭りですが、東京ビッグサイトの会議棟では、とてもためになるシンポジウムが毎日開かれています。その初日となる10月25日、東京都が主催した「自動運転シンポジウム」に参加してみました。

最初に演壇に立ったのは、clicccarでもおなじみの国際モータージャーナリスト清水和夫さん。清水さんは、東京モーターショーの歴史を振り返ったうえで、今回のモーターショーでは軽自動車にまでレベル2の自動運転が搭載されたことを紹介。「これによって自動運転が一気に普及するかもしれない」と述べました。

清水和夫さん
演壇に立つ国際モータージャーナリスト清水和夫さん

また今回のモーターショーに先駆けて、運転席のないクルマが世界で初めてナンバーを取得したことを受け、法整備という面でも日本は非常に進んでいるとも話されました。

清水和夫さん
清水和夫さん

終盤には、スカイラインのプロパイロット2.0の試乗会で同業の吉田由美さんが述べた言葉「(自動運転の)システムは恋愛に似ている」という言葉に着目。「男性的な理詰めの発想ではなく、システムと自分との間に共感できる部分があるかどうかという女性ならではの視点は、今後自動運転を開発していくうえでとても大切」と語りました。

清水和夫さん
清水和夫さん

その後、檀上には4人が登壇。東京都戦略政策情報推進本部の前林一則さんは、「自動運転は都市が抱える課題を解決する可能性を秘めている」として都が行っている自動運転へのさまざまな取り組みを紹介しました。

前林一則さん
東京都 戦略政策情報推進本部 戦略事業部 先端事業推進担当課長の前林一則さん

海外のMaaS(サービスとしての移動)事情に詳しいモータージャーナリストの楠田悦子さんは、「MaaSといった先進サービスは、業界のためにあるのではなく、私たちの幸せのためにある。そのためには物流や介護、医療といった分野がもっと結びつくべきだ」と述べました。

楠田悦子さん
モータージャーナリストの楠田悦子さん

自動運転バスなどを使ってMaaSを実践されている例としては、小田急電鉄の西村潤也さんが登壇。将来、沿線人口は減少するが、交通弱者は増加するため交通事業者にとってはチャンスと語り、取り組んでいるMaaSのサービスなどを紹介しました。

西村潤也さん
小田急電鉄株式会社 経営戦略部 課長 次世代モビリティチーム 統括リーダーの西村潤也さん

続いて自動運転システムの開発元であるZMPの西村明浩さんが登壇。都心で行った自動運転タクシーによる実証実験や、開発された物流支援ロボットを紹介し、「実際にやってみないと分からない。やってみて考えるというプロセスが重要」と話されました。

西村明浩さん
ZMP 取締役 ロボハイ事業部長の西村明浩さん

最後に行われたパネルディスカッションには、教育評論家の尾木ママこと尾木直樹さんも参加。自らが免許返納された経験を踏まえて「ずっと運転好きだったが返納した寂しさはない」と述べました。さらに免許返納者が受けられるホテルや店舗でのさまざまな特典を紹介したうえで、「自動運転は交通弱者のためにあるべき」と語りました。

パネルディスカッション
最後に全員で行われたパネルディスカッション
尾木直樹さん
教育評論家の尾木直樹さん(右)

難しい議論が行われるのかと思って臨んだシンポジウムでしたが、登壇された方の話はとても分かりやすく、役に立つものでした。東京モーターショーでは11月3日まで連日シンポジウムが開催されます。なかには当日参加が可能なものもあるので、クルマの未来が気になる人はぜひ参加してみてください。

(文と写真:角田伸幸)

【関連リンク】

東京モーターショーシンポジウム2019
https://www.tokyo-motorshow.com/event/symposiums.html

この記事の著者

角田伸幸 近影

角田伸幸

1963年、群馬県のプロレタリアートの家庭に生まれる(笑)。富士重工の新米工員だった父親がスバル360の開発に立ち会っためぐり合わせか、その息子も昭和期によくいた「走っている車の名前が全部言える子供」として育つ。
上京して社会人になるも車以上に情熱を注げる対象が見つけられず、自動車メディアを転々。「ベストカー」「XaCAR」で副編集長を務めたのち、ポリフォニー・デジタルにてPlayStation用ソフトウェア「グランツーリスモ」シリーズのテキストライティングに携わる。すでに老境に至るも新しモノ好きで、CASEやパワートレインの行方に興味津々。日本ディープラーニング協会ジェネラリスト検定取得。大好物は豚ホルモン(ガツとカシラ)。
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