ハイブリッドも多種充実したこれからが楽しい!

〈Mondaytalk星島浩/自伝的爺ぃの独り言50〉 日本車のHVシステムも多種多様。アコードHVの2モーター方式発売を機に、先行したフーガ&シーマの日産1モーター方式を復習しておく。トヨタも黙っちゃいないだろうネ。三菱、スバルも参入したことだし—-システム自体はともかく、なんといっても両者は四駆に存在感あり、だ。

 

 ところで、ホンダが3種の刷新HV技術を発表したのは昨年11月。

 ホンダに限っても3種ある。小型車用1モーター刷新版は今秋? フルモデルチェンジする次期フィットかしら。大型車用3モーター版はエンジン搭載位置によるものの、前側か後ろ側か、左右輪それぞれにモーターを働かせて、駆動力を最適配分するHV四駆となる。来年デビューする新型NSXが楽しみだ—-3種の技術については昨年来、既に各マスコミが報道済み。ネット検索でも読めるので詳しい紹介は省かせていただく。

 

 中型車用2モーター方式は、プラグインHV機種を北米アコードに加えて今年1月に先行発売ずみ。 北米アコードには標準ガソリン車もあるが、6月下旬に発売した国内向け新型は2モーター方式の標準的HV専用車。プラグインHVは、とりあえず官公庁にリース販売から始める、と。

 

 試乗印象記は現役ジャーナリスト各氏にお任せ。機会があれば私も交ぜてもらう。

   

    ところで中型車アコード=2モーター方式の中身—-。

    曰く「電気CVT」とは、巧みな表現もあるものと感心したら、要するに駆動をモーターで行なうため、変速機なし。従来の金属ベルト式CVTが要らなくなった。と同時に、この方式だと構造上MTも成立しない。

                                 20130701_am_ac1306035H

ハイブリッドのみの設定となった新型アコード。

 

 もう一つのモーターは発電用だ。直接システムバッテリー=リチウムイオン電池と繋がっていて、減速エネルギー回生はもちろん、エンジンによるほか、プラグイン充電も行なう。2つのモーターは前部パワー&ドライブプラントに組み込まれている。システムバッテリーやコントロールユニットは車両後部に載せ、冷却デバイスもある。電池容量は標準型よりPHEV型が大きめ。家庭電気用もPHEVが望ましく、80%充電状態で通常27時間使える。

 

 エンジンとドライブプラントは、ほぼ一直線配置して左右寸法を短縮。エンジンと駆動モーター間にクラッチを配し、EV走行時はもちろん、減速時にもクラッチを切って回生効率を高める。むろんエンジンはリチウムイオン電池充電のほか、エアコンなど補機類駆動にも働くので、EV走行時といえども完全停止とは限らず。一般的な鉛電池とジェネレーターを備える。

 

 一風変わっているのは「電気で走る/エンジンで走る」ものの「電気とエンジンで走る」パラレルモードがないこと。クラッチを繋いだら、HVシステムを介さず、直接、駆動モーターにパワーを伝えて高効率運転するのだと。

 

 これまでは「電気で走る/エンジンで走る/両方で走る」シリーズ&パラレル走行—-言うまでもなく、横置き型HVではプリウスを嚆矢とするトヨタが大先輩で、コンパクトサイズのアクアにも展開。横幅を短く収めた点で大いに評価された。ただし賢いアイデアとは言え、動力分割機構を特徴とするため、エンジン・モーター双方の最高出力を同時に発揮させることはできない。

 

 要するに、プリウス系・横置き、クラウン系・縦置きの違いこそあれ現行THSは無段変速機を兼ねる遊星歯車機構に独特の動力分割機能を担わせ、エンジン動力を駆動用と発電用に使い分けつつ、モーターで走る/エンジンで走る/両方でも走る。賢いメカとして、世界中から高く評価されてきた。

 

 動力分割機構の弱点を突いて出たのが、2年半前のフーガHVだ。

 

        20130701_fuga 

トヨタ方式ではなく意表をつく新システムを生み出したフーガ・ハイブリッド。

 

 日産はリーフで純EVのリーダー的立場にある一方、ハイブリッド分野で立ち後れた。横置きエンジンのティアナとアルティマにトヨタ技術を導入したものの、本格生産には進まずじまい。結果、プリウスと超大差。クラウン系にも10年以上後れ、やっと重い腰を上げたのが2010年秋発売のフーガHV—-なぜフーガなの? それも追加機種扱いでは「本気度」を疑ったが、出来は予想を上回った。

 

 力強い走りと実用燃費に、いたく感心。フーガHVの販売実績は知らないが、同じシステムを新型シーマに専用搭載している。

 

 エンジン、モーターの動力を分け合うのではなく、両者を完全分離。それぞれの特性を存分に発揮させるほうが、動力性能にも実用燃費にも望ましいのではないか?—-併せてトルコン付きではなく、クラッチを介して7速トランスミッションで変速させた。つまりエンジン・クラッチ・モーター・クラッチ・トランスミッションの順に配置=1モーター・デュアルクラッチ制御方式とした。

 

 むろんモーターは駆動と発電兼用。エンジンでも発電するし、減速時は回生エネルギーで発電して、システムバッテリーに送り込む。

 

 話は簡単だが、実現は容易じゃない。前段クラッチによるエンジン停止や再始動は難しくないが、多様な速度域で運転開始を同期させるには、スピーディかつキメ細かな接続操作=クラッチに働かせる放電制御が求められる。

 加えて、トルコンなしとなれば、モーター走行であれ、エンジン&モーター走行中であれ、変速都度の後段クラッチばかりか、エンジン走行中なら同期回転目的でも前段クラッチの微妙な断接制御が必要で、その度にモーター回転を精密制御しなければならない。

 

 その際、ニッケル水素電池がスピーディかつ微妙な充放電に適応しないと判り、リチウムイオン電池採用を決めたと聞く。ホンダも初代インサイト以来、使ってきたニッケル水素バッテリーを今回リチウムイオン電池に代えた。

 

         20130701

 

 

 4気筒エンジンのクラウンHVと比べて、V6搭載のフーガHV&シーマを割安に感じたのは、トルコンなし、7速ATの遊星歯車機構をほぼ流用した利益だろう。電気で走る/エンジンで走る/双方の最高パワーをも同時に発揮させて走る—-なるほどスポーツカー顔負けの動力性能に驚いたし、電池に余裕があれば、100㎞/h巡航時にも前段クラッチを切り、電気で走っていた。

 

 それでも4気筒のクラウンHVが大いに売れ、三菱へのOEM供給分を併せてもフーガ&シーマはファービハインド。次期スカG? にでも期待するほかなさそう。まさか大型インフィニティ=スカGじゃないでしょ?

 

 大問題は—-よりコンパクトに納まるリチウムイオン電池は良しとし、日産フーガ&シーマ方式だと、数多くの横置きエンジン車に適応しないことだ。

 他方、スバルHVシステムは縦置きながら、技術的にはホンダの1モーター方式に近く、小型の鉛バッテリーを2個積んでエンジン再始動性に万全を期したと聞くが、まだ実用的試乗機会に恵まれず。システムには、これもホンダの従来型HV用に近いニッケル水素電池を採用している。若者にファンが多いインプレッサにディーゼルHV四駆が出てきたら大騒ぎになるだろうネ。

 

   こう眺めると、日本のHV方式に限っても多種多様。私たちユーザー側は出てきた商品を選んで買えばいい立場だが、メーカー側は、さぞ大変だろう。エラそうなこと言ってるホンダも、HVは13年かかって100万台。今トヨタは1年で100万台。累計550万台。追いつくのは容易じゃない。

 

 日産は横置きエンジンHV開発が急務だろうが、トヨタにも動力分割機構改善か、新システム構築が急がれる----楽しみが増えてきたんだョ。★