インドと言えばほんの10年ほど前まで街中に二輪車が溢れかえり、タクシーがその中を掻き分けて突き進むような危なっかしい日常が展開されていた記憶が有ります。
勿論、現在もその名残りは見られるものの、この10年で大きく変化して来ました。
1980年代初頭にインドへ進出したスズキが圧倒的シェアを誇る中、インドの大手財閥「タタ」が2009年にスズキの最廉価車の半額相当の20万円台の超低価格車「ナノ」を投入。その後、各国からインド進出が続き、翌2010年には自動車の普及が急激に進みます。
ところが、インド自動車工業協会(SIAM)のまとめによると、2011年の国内新車販売(乗用車+商用車)が329.4万台(前年比+8%)で過去最高を更新したものの、販売伸び率はそれまでの勢いを失い始め、活況に沸いていたインド自動車市場の失速が目立つ状況になりました。
その要因はインド中央銀行(RBI)の金融引き締めによる自動車ローンの金利上昇や原油価格高騰による燃料価格の上昇、投入コストの増加に伴う自動車価格値上げ、金融不安定による消費者の信頼感悪化、マルチスズキの労働争議勃発による減産などが影響した模様。
現在ではマルチスズキ、現代自動車、タタ・モーターズなどの有力メーカーが生産を縮小し、消費者をショールームに呼び戻すために大幅値引きを余儀なくされているとか。
こうした自動車販売の低迷を受けて各社が力を入れ始めたのが他でもないインドの御家芸「二輪車」。ホンダやヤマハがインドに於ける二輪車販売にテコ入れを開始したようです。
ホンダはインドの二輪車市場でバジャジ・オート を抜いて2位に浮上。スクーターやオートバイの需要増を背景に販売を伸ばしており、新型モデルの投入や販売網拡大の効果で、2013年3月までの1年間の販売台数が261万台と、前年比で+31%増に。
人口12億4000万人のインドでは農村部の公共交通網の整備が遅れていることから、ホンダはオートバイとスクーターの販売台数を2020年までに現在の4倍となる1000万台に拡大、インドでシェアトップを狙うと言います。(2012年のシェアは約19%)
一方のヤマハも負けていません。ヤマハはインドで世界最廉価のバイクの開発に取り組んでおり、4月1日には二輪車の研究開発業務を担う新会社「ヤマハ・モーターR&Dインディア(YMRI)」を立ち上げたばかり。
ヤマハは低価格バイクの開発を通じて拡大する需要の取り込みを目指しており、1000万人規模を対象とした試乗会をインドの各都市で開催するなど、消費者が同社の二輪車に直接触れる機会を増やすことでヤマハブランドの認知度向上を狙う計画。
これまでの高価格帯商品中心の販売に代えて、今後は安価なスクーター等を相次いで投入、製品のラインナップを広げるようです。その一環として昨年9月に同社としてインドで初となるスクーター「レイ」を発売。
インドの2012年の二輪車販売台数は1380万台を記録しており、中国を抜いて世界最大の市場に成長しています。
今年はさらに1,600万台にまで増えると見込まれているそうで、ヤマハは昨年の35万台に対して2013年の目標販売台数を50万台に設定。 インドを世界市場に於ける低価格バイクの開発拠点として位置付け、100ccクラスの低価格バイク(500米ドル)の開発を通じて拡大する需要の取り込みを目指すとしています。
このようにインドが自動車販売で踊り場を迎える中、日本勢は再び二輪車で攻勢に出る構えをとっているという訳です。
■HONDA MOTORCYCLE and SCOOTER INDIA
http://www.honda2wheelersindia.com/
■YAMAHA INDIA Webサイト
http://www.yamaha-motor-india.com/
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