アウディR8は、意外にも乗りやすくって誰でも速く走れちゃうアブナいクルマ?【Audi R8 試乗】

マイナーチェンジで動力性能や環境性能を高めたアウディR8に乗ることができました。場所は袖ヶ浦のサーキットです。

アウディR8 5.2_01

この手のスーパーカーって、普段乗ることはありません。それも2000万円クラスのクルマ、サーキットといえども思い切り走らせるなんて度胸と賠償能力は持ち合わせていません。おそるおそる乗り込んでみました。

まずはV10モデルのCoupe 5.2 FSI quattro。大きなドアを開け、まず戸惑うのが「足から入るのが正しいのか、お尻から入るのが正しいのか」でした。

アウディR8 5.2_07

正しい作法はよくわかりませんが、取り敢えず「片足→お尻半分→もう一方の片足+残りのお尻」という感じでしょうか。これほどのクルマ、乗り込むところがサマになってないとカッコ悪いし、借り物だってのがバレバレですね。

それでもなんとか運転席に収まってみると、意外なほどフツウのクルマに近い感じです。

もちろん、目線は低いんですが、「うひょー、これがスーパーカーの視線だゼ!」というほどのビックリ度はありませんでした。

キーを回す(スタータースイッチにしないところもきっとこだわりなんでしょうね)と、メーターが最大値まで行って帰ってきます。そこでおもむろにエンジン始動。

アウディR8 5.2_04

背中からエンジン音が聞こえて来て「お、やっぱ違うな」と思い出させます。

そのエンジン音は常識的範囲で大きめの音、で、やや演出されたかのように迫力がありながら低いけれど軽やかな音、という印象です。言葉で表現するのは難し過ぎです。

軽くアクセルをあおってみると、「ファン、ファン」と反応良く吹け上がります。購入を考えている人には「オーナーになってみたいな」と思わせること請け合いな感じです。

セレクターレバーをAレンジに入れ、走り出す。意外なような当たり前のような、フツウに走り出します。

以前乗ったのはRトロニックのR8。しかも都内の狭い路地なんかを走ったりしたし、その車両が本調子だったかどうかも確認できなかったけれど、とてもぎくしゃくしてた記憶があります。渋滞や信号のゴーストップもありましたが、現在のSトロニックではそういうことはなさそうでホッとしました。

思いっきり床までアクセルを踏み込んでみる、、、勇気はないので、気持ち半分くらい踏んでみました。でも、「うわ、早っ!」。クワトロでフロント235/35ZR19、リヤ295/30ZR19のピレリP-ZEROが路面を捉えているので、シッカリした接地感はイヤというほどあってどこかに飛んで行きそうな感じはしないんですが、経験上「この道幅とか直線とかでこんなに速くちゃアブナいんじゃない?」っていう自制心が働いちゃいます。2000万円クラスだし。

それでも数周走っていると楽しくなってくる自分が怖くなってきます。ステアリングコラムのパドルを操作してもしなくてもシフトダウン時にアクセルを踏んだようにブリッピングしてくれたり、とってもその気にさせてくれます。同級生に例えると、とっても頭いいくせに、なんだかワルいほうへと行きたがって、そちらへ誘ってくる友達(しかも家は金持ち)みたいです。

そんな誘惑に打ち勝ち(ってか勇気もテクニックもないってことですが・・・)、無事にピットへ戻ることができました。

続いてV8モデルのCoupe 4.2 FSI quattro。真後ろから見るとブラックアウトされた部分が少なかったり、ホイールのデザインが違うのでそれを知ってればV10と見分けるのは用意ですが、こちらだって十分な迫力とオーラを放ってます。特に庶民に対しては。。。

アウディR8 4.2_03

乗り込みの作法やエンジンスタートは同じです。ゆっくりとなら走り出しても違いは感じません。

ところが、V10よりもV8はとても乗りやすく感じます。コースに慣れて来たこともあるでしょうけど、なんだかこれだったら自分でも少しセメられるかも?なんて思っちゃいます。

そんなR8の走りはコチラ。

車重が軽いことも大きいと思いますが、自分である程度コントロールできそうです。いや、コントロールするのが楽しく感じます。

路面に押し付けられて「踏んだ分だけ加速する、切った分だけ曲がってくれる」というより「これぐらい加速したいんでしょ、そんなにムリに曲げようとしても限度あるでしょ」とクルマと会話できる気がしました。同級生でいうと、同じ部活で少しヤツのほうがうまい、成績もちょっと上、なんとかアイツに追いついてやりたい、と密かに思う仲良しだけど永遠のライバル(しかも同じ女のコを好きになってしまった)みたいな友達でしょうか。

ところで、R8にはオープンモデルのSpyder 5.2 FSI quattroもあります。

アウディR8 Spyder_03

スイッチひとつでオープン/クローズドになる姿はまるでトランスフォーマー実写版。その様子がコチラです。

ちなみに、ウインカーはこんな感じで流れるように点滅します。

もしR8を選ぶ立場になったとしたら、現実的にはV8モデルを選ぶのかな、と思いましたが、いやいやそれはフツウに安全策でこの中だったら価格的にいちばん手前にあるってこと。買えるならやっぱり最速モデルを選びたくなるし、どうせだったらオープンエアも楽しめるに越したことはない。R8を買える身分になるとは到底思えませんが、もしそうなったとしたらを想像して悩みたくなる、そんな答がひとつにならないクルマって、やっぱり魅力があるクルマなんだな、と思います。

同級生の女のコに例えると、どのコも美人だったり可愛かったり性格が良かったりなんだけれど、やっぱり自分には高嶺の花で手が届かないって感じですかね。

(小林和久)

 

 

この記事の著者

小林和久 近影

小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務めた。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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