トヨタとアウディでわかった!WECマシンのハイブリッドはハイテク過ぎる。【WEC2012 富士6時間レース】

10月14日に開催された世界耐久選手権 第7戦 富士6時間耐久レース。トヨタTS030ハイブリッドが総合優勝を果たしたのは既にお知らせのとおりです。

そして2位と3位はアウディR18 e-tronクアトロ。総合順位の上位3台をハイブリッドが独占したのです。

1997年に世界で初めてハイブリッド車を市販したトヨタは今年、世界と日本の両方でハイブリッドレーシングカーをデビューさせています。スーパーGTで目覚しい活躍を見せるプリウスGTと、WECで活躍し今回の富士で優勝したTS030ハイブリッドです。
 

プリウスGTもTS030もエンジンやモーターの仕様は違いますが、大きな意味合いでいうと基礎理論は同じハイブリッドシステムを使い、リヤタイヤでエネルギー回生とモーターアシストを行います。

ではTS030ハイブリッドはどこがハイテクなのか。TS030ハイブリッドは、実はニッケル水素電池もリチウムイオン電池も積んでいないのです。
ではハイブリッドシステムでモーターに使う電気は一体どこに貯めているのか? 超ハイテク技術であるキャパシタを積んでいます。キャパシタとはコンデンサーの一種で充電及び放電特性に優れ、急加速などで大電流が必要な場合でも瞬時に電気を送ることが可能となります。しかし、コストはリチウムイオン電池の数十倍とも言われ、いくら優れているとはいえ市販車においそれと使うことが出来ない代物。

一方アウディR18e-toronクアトロはベースとなるエンジンがディーゼルなのでエンジン単体が重く、重量配分を考えるとモーターなどをフロントに置 く必要があります。つまりフロントタイヤでエネルギ回生とモーターアシストを行います。勘のいい方ならもうお分かりですね。リアタイヤはエンジンで、フロ ントタイヤはモーターで回す四輪駆動になっているのです。つまりクアトロは四輪駆動の意味。ちなみに四輪駆動は低速からの加速が優位になってしまうことか ら、R18e-toronクアトロは120km/h以下でのモーターアシストは禁止されています。

アウディも回生エネルギーで得た電気を電池に蓄えることはしません。かといってトヨタの様なキャパシタを使っているわけでもなく、それ以上に理解しづらい電気フライホイールというシステムを使っています。

もともとはF1のKERSシステムとしてF1チームのウィリアムズが開発したシステム。充電式電池の重量を嫌ってよりコンパクトで軽量なものを開発したということなのですが、常人の筆者には全く理解できないほどのハイテク。とりあえずウィリアムズのサイトの解説ムービーにリンクをしておきますので興味のある方はご覧下さい。

Williams Hybrid Power Ltd (WHP)
http://www.williamshybridpower.com/f1/

 

とにかく両車とも、ピットやグリッドなどの人目につく場所でエンジン部分を見せることはほとんどありませんでした。それだけトップシークレットな内容なのでしょう。

 

トヨタとアウディのハイブリッド2車は、ガソリンエンジンだけのマシンと比べて明らかに速すぎることだけは間違いありません。両車の周回数は6時間で233周、総合4位のLOLA b12はトヨタのスーパーGTと同じ型式のエンジンを積んで227周。メーカーワークスがハイテクの限りを尽くしたハイブリッドのWECマシン、はとんでもなく速いのです。そしてトヨタのキャパシタやアウディのディーゼルなど、プロトタイプスポーツカーとしてエコ技術も含めたホンキの実験を行いながら戦い、やがてその技術は市販車にフィードバックされていくのです。
(北森涼介)

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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