電動スクーターの実力を検証してみた

クリッカーライターの北森選手も参戦した全日本EV グランプリ第4戦EV-Bクラスは、一番身近なEVである電動スクーターが主役。

そのEV-Bクラスで勝利を収めたスズキ e-Let’sの実力をサーキット走行から検証してみました。

EV-Bクラスは 市販のEVスクーターを無改造で25分間走行し、順位を競います。

今回エントリーしたのはヤマハEC-03とスズキ E-Let”sの2車種でヤマハとスズキの一騎打ちとなりました。

 レース関連の記事でお馴染みのクリッカーライターの北森 亮介選手が駆るのはヤマハEC-03。

EVスクーターは無改造と言う事もあり、ライダーの省エネ走行だけでなく、マシンのスペックが勝敗を分けます。

ヤマハEC-03は最高出力1.4kw、最大トルク9.6N・mの交流モーターにリチウムイオンバッテリーを搭載し、6時間のフル充電での航続可能距離は30km/h定地走行で43km、アルミ製リヤアーム一体型超薄型パワーユニットとアルミ製フレームで軽量化されバッテリー搭載時の車両重量は56キロというスペック。

対するのスズキe-Let’sは最高出力1.7kw、最大トルク15N・mの交流モーターにリチウムイオンバッテリー、4時間のフル充電での航続化の距離は30km/h定地走行で30km、車両重量は72キロとなっており、EC-03より16キロ程重いものの、最高出力では0.3kw、最大トルクで5.4N・m程上回ります。

50ccスクーターに乗ったことある方ながご存知かと思いますが、最高出力0.3kw(0.4ps)、最大トルク5.4N・m(0.52kgf・m)の差は上り坂等では非常に大きなアドバンテージとなります。

袖ヶ浦フォレストレースウェイは1周2.436キロ、メインストレートは400m、最大斜度4.2%、コーナー数は14と、EVスクーターから見ればまるでニュルブルクリンクで走るような状況ですが、代表的な国産EVスクーターの実力を比較するにはうってつけの場所と言えます。

スタートダッシュは、やはり軽量なEC-03がリードしますが、勾配に差し掛かるとパワーのあるe-Let’sが追い上げます。

北森選手もバッテリー残量を気にしながらもEC-03で果敢に攻めストレートでは前傾姿勢を取り、空気抵抗を減らす作戦に出ますが、最高速度の高いe-Let’sには及ばなかったようです。

 

ちなみに今回北森選手の乗ったヤマハEC-03の価格は25万2000円(消費税込)

スズキ e-Let’sは31万2900円(消費税込)スペアバッテリー同梱のe-Let’s Wは39万6900円(消費税込)

となっており、EC-03は最大3万円、e-Let’sが最大4万円、e-Let’s Wが最大6万円の国からの補助金が受けられます。

また、地方自治体でも独自に補助金制度がある地域もあるので、合わせて申請する事も可能です。

価格面では有利なヤマハEC-03ですが、走りの性能やバッテリーの充電時間だけでなく、スクーターに重要視される積載性もフロントにロールシャッター付のバスケットを備えるe-Let’sのほうが実用性も高いと言えそうです。

EVスクーターとしての性能は、レースでも勝利するほどの実力を持つe-Let’sですが、ガソリンスクーターである、Let’s4と比較した場合はどうでしょう? 

最高出力はガソリンスクーターのLet’s4シリーズの方が2.6kw(2.2ps)ほど上回りますが、最大トルクはEVスクーターであるe-Let’sの方が11.1N・m(1.1kgf・m)上回ります。

ゴーストップの多い市街地での使用が多いスクーターにとってトルクの大きいe-Let’sの方が扱いやすいと言えます。

ではランニングコストはどうなのでしょう?
e-Let’sのカタログによれば1充電のコストは約30円 、一回の充電での航続可能距離は30km/h定地走行で30キロ。

Let’s4シリーズは 30km/h定地走行の燃費は73km/L、この燃費を元にe-Let’sの航続可能距離である30キロを走行した時の燃料消費量は約0.41L(30÷73=0.41095・・・)筆者が給油しているスタンドのレギュラーガソリンの価格は1L139円、つまりLet’s4バスケットで30キロ走行した場合約57円の燃料代が掛かります。

さらに車体が重ければタイヤの減りもその分早いですし、4ストロークエンジンを搭載するLet’s4シリーズはエンジンオイルの交換も必要になって来ます。

車体価格は補助金を利用してもLet’s4バスケットより11万6450円ほど高額なe-Let’sですが、地球環境とランニングコストを考慮したら、”買い”なのかもしれません。

EVスクーター同士でもガソリンスクーターと比較してもEVスクーターレースを制したe-Let’sはイチオシスクーターと言えそうです。

※電気代は、17.87円/kWhとして計算しています。

 (井元 貴幸)