デミオEVがクラストップ100Wh/kmの優れた電費を実現した理由

マツダが、ついにリース販売をはじめたデミオEV。100台程度の目標台数と聞けば、市販には時間のかかる試験的な印象を受けるかもしれませんが、スペック上の完成度はかなり高いものとなっています。

たとえば、電費(電力量消費率)は、100Wh/kmと先行して市販されているEVを大きく上回っています。

具体的にカタログスペックを並べると、三菱i-MiEVが110Wh/km、日産リーフが124Wh/km。1kmを走行するのに必要な消費電力量を示すスペックなので、数字が小さいほど電費が優秀というわけで、二桁目前の数値は、かなりインパクトありといえそうです。

もっとも、アメリカではフィットEVがもっとも電費に優れるクルマとなっているように、進歩の激しいEVという世界では後から登場したモデルが大幅に進化しているというのは不思議なことではありません。

では、デミオEVはどのような工夫をしているのでしょうか。

発表によると、基本となるのはガソリンエンジンのデミオが実現している省燃費性能を活かしつつ、さらに電動化を最適に組みわせていること、だといいます。 

エンジンの替わりに、バッテリー・ インバーター・モーターというパワートレインとなるEVですが、バッテリー(直流)とモーター(交流)を変換するインバーターの性能も高められているようです。

 

さらに「減速エネルギー回生システム」についても、初ものながらしっかりと煮詰められているよう。日産リーフのような協調回生ブレーキシステムではなく、既存のブレーキシステムを利用したシンプルなものだといいますが、アクセルオフやブレーキペダルの踏み込みといった操作に合わせてモーターによる回生量を制御することで、エネルギーの無駄使いを減らし、電費の改善につなげたということです。

このような工夫の結果として、前述したように電費は100Wh/km。これにより20kWhという総電力量のバッテリーながら日産リーフと同等の200kmという航続可能距離を実現しています。

EVの航続可能距離を伸ばすにはバッテリー搭載量を増やせばいいように思えますが、バッテリーは重量物なので単純に倍のバッテリーを積んだからといって航続可能距離が2倍になるわけではありません。車両サイズと搭載バッテリーとのバランスが重要になります。

アメリカでフィットEVが、日本でデミオEVが、優れた電費性能を実現したというのは、テクノロジーの進化もさることながら、現状の技術ではこうしたコンパクトクラスの車両サイズがEVとしてのウェルバランスに近いということを示しているのかもしれません。

(山本晋也)

この記事の著者

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山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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