ミニキャブ・ミーブはただのコンバートEVじゃない!?

三菱自動車、軽商用電気自動車『MINICAB-MiEV』の予約受付を本日から開始」というわけで、年内発売予定という三菱自動車の商用電気自動車の予約がはじまりました。4月1日の発表だからといってエイプリルフールというわけじゃなく、これはホントの話。すでにヤマト運輸との実証実験も行なわれているもので、本気の話。

そして、注目すべきはバッテリーサイズによって2グレードが用意されていること。EV(電気自動車)といえば、その価格の半分程度がバッテリーのコストといわれるほど。商用車ということで、かなりの近距離専用車として位置づけられるフリートユーザーから、バッテリーを少なくして、そのぶん車両価格を抑えて欲しいという要望があったのは容易に想像できるところで、そうした声に応えた仕様といえそうです。

ちなみに価格は公表されていませんが『価格については、経済産業省の「クリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助事業」の補助金制度が、本年度も2010年度と同様に継続されることを前提に試算した場合、お客様の実質的な負担額がそれぞれ10.5kWh仕様で約170万円から、16.0kWh仕様で約205万円からとなるよう設定する予定』ということ。昨年度の補助金でいうと398万円のアイ・ミーブが284万円になったわけですから、少なくともアイ・ミーブよりは廉価な市販EVになるわけ。

そのミニキャブ・ミーブ、仮スペックは現時点では以下の通り。

こちらのスペックにあるように、駆動輪はリア。もともとミニキャブはフロントエンジン・リアドライブを基本としたクルマなので、ベースの駆動系を活かしているのかと思いきや、発表によると「アイ・ミーブのノウハウを最大限に活かしている」といいます。モーターも基本的にはアイ・ミーブと共通とのことですが、最高出力を抑えて、最大トルクを太くするなど荷物を積む商用車に合わせたセッティングとなっているのが確認できます。

しかしアイはほぼリアエンジンといえるミッドシップレイアウトのクルマをベースとしたEVで、ミニキャブとは異なります。

では、ミニキャブ・ミーブの駆動レイアウトはどうなっている? モーターの搭載位置は?

正解は「モーターはリアに置かれている」です。

アイ・ミーブにも通じるミッドシップレイアウトを基本に、同じようにキャビン床下にバッテリーを搭載。インバーターや車載充電器などは、もともとエンジンのあったフロントに搭載されるというのがおおまかなレイアウト。アイ・ミーブではリアにあった充電口が、ミニキャブ・ミーブではフロントドア下になっているのは、もともとの給油口にあわせた面もあるのでしょうが、インバーターなどの位置関係からも妥当といえそうです。

つまりミニキャブ・ミーブは外観こそベースのままですが、パワートレインのレイアウトは一新された別物ということ。エンジンをモーターに置き換えたコンバートEVとは一線を画しているわけで、さすが自動車メーカー製と唸らせられます。

もっとも、それぞれのベース車に合わせたレイアウトとするよりもモーター周りの基本構造を共通にするほうが有利な面もあるでしょうし、なによりプロペラシャフトが通ってしまうレイアウトではセンター部分に積むバッテリースペースが犠牲になってしまいますから、こうしたレイアウトの大幅な変更は必然だったのかもしれません。

(山本 晋也)

この記事の著者

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山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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