GR86と新型BRZの謎と秘密がトークショーで明らかになった!【FUJI 86 STYLE with BRZ 2021】

■トークショーで語られた新型の秘密の数々

2021年6月6日(日)、富士スピードウェイでTOYOTA86とSUBARU BRZの祭典「FUJI 86 STYLE with BRZ 2021」が開催されました。

GR86と新型BRZ
GR86と新型BRZ

今回の「FUJI 86 STYLE with BRZ 2021」の目玉は、4月5日に発表され発売が心待ちされる新型のGR86と新型BRZの展示です。そこにはGRパーツやSTIパーツを取り付けたカスタマイズカーなども展示されるなど、GR86と新型BRZの世界観が広がります。

トークショーに登壇する開発者
トークショーに登壇する開発者

その会場の特設ステージで行われたトークショー「いっしょにいいクルマつくろう!トークセッション@FUJI 86STYLE with BRZ 2021」では、開発のスタッフが登壇し開発秘話を披露しましましたが、マジですか?というほどぶっちゃっけ過ぎていて興味深い内容が飛び交います。

TOYOTA GAZOO RACING チーフエンジニア 末沢秦謙 氏
TOYOTA GAZOO RACING チーフエンジニア 末沢秦謙 氏

新型で一番気になる部分といえば、2.4リッターとなったエンジン。

この排気量となった背景をTOYOTA GAZOO RACING・GRプロジェクト推進部 チーフエンジニアの末沢秦謙さんは「もっとパワーを、という声に応えた」として、「リニアに立ち上がるショートストロークの水平対向エンジンの良さを出したかった」と話します。

また、株式会社SUBARU・BRZ 開発責任者 商品企画本部プロジェクトゼネラルマネージャーの井上正彦さんは「モアパワーはスポーツカーの永遠の課題なのでターボ化も検討した」としながらも「重くなる(価格が)高くなる…というターボ化のネガな部分も考慮しながら、ボディサイズなどを考えるとNAの2.4リッターはバランスよく仕上がった」と語ります。

●2.4リッターでも2リッターと変わらないエンジンブロックの質量

株式会社SUBARU BRZ 開発責任者 商品企画本部プロジェクトゼネラルマネージャー 井上正彦 氏
株式会社SUBARU BRZ 開発責任者 井上正彦 氏

「2リッターから2.4リッターになってもエンジンの質量は変わらないということで、NAという判断となっています」という驚きの真実が末沢さんから飛び出します。

株式会社SUBARU 技術本部車両研究実験総括部 主査 塩川貴彦 氏
株式会社SUBARU 技術本部車両研究実験総括部 主査 塩川貴彦 氏

また「エンジンのボアを86から94に上げただけなのでは?」という問いに対し、株式会社SUBARU 技術本部車両研究実験総括部 主査の塩川貴彦さんは、「名前だけで言えばFA20からFA24と数字だけ変わっているように見えますが、中身は2.4リッターに最適化された新設計です」と応えます。

TOYOTA GAZOO RACING GRプロジェクト推進部GRZ 主幹 藤原裕也 氏
TOYOTA GAZOO RACING GRプロジェクト推進部GRZ 主幹 藤原裕也 氏

エンジンについてはTOYOTA GAZOO RACING GRプロジェクト推進部GRZ 主幹の藤原裕也さんも、「アクセルを踏んだ時に背中から押してくれるような、高回転までリニアに吹き上がるような加速を目指して開発しました」と語ります。

●低重心を極めたボディ

トークショーは、エンジンブロックの重さが従来とほぼ変わらないという話題から、ボディ重量のなどの話題へと移り変わります。安全装備などの基準が強化され新型になればなるほど、車両重量は増加する傾向にあるからです。

トヨタGR86
トヨタGR86

この話題にTOYOTA GAZOO RACINGの末沢秦謙さんは、「車両重量もそうですが、重心を下げるということと、なるべく中心に持っていく、この2点を重視しました」と語ります。

新型 SUBARU BRZ
新型 SUBARU BRZ

具体的にはルーフのアルミ化、前フェンダーをアルミ化することで重心から遠い部分を軽量化し重心位置を低く、そして中心に集めるようにし、また慣性モーメントを下げ、よりキビキビ感を出してきた、とのことです。

ルーフはアルミ化したことにより板厚が鉄板時の0.6mmから1.2mmとなっていますが、重量は2kgも軽量となっているとのことです。また、板厚が増したことによりルーフで受ける雨音などが一気に静かになった、という副産物も生んでいるようです。

また軽量化についてもSUBARUの井上正彦さんは、「スポーツカーは軽くしなくてはいけない、でも価格を高くはできない」という命題を持つといいます。具体的な事例としてSUBARUの塩川貴彦さんは、「ステアリングコラム、フロントシート、マフラーなども軽量化しています」と語ります。

●いよいよBRZにもアイサイト! GR86にもアイサイト名義で搭載

現行のTOYOTA86やSUBARU BRZには搭載されていなかった、高度運転支援システム「アイサイト」が、GR86と新型BRZにもAT限定ながら搭載されることとなりました。SUBARUの井上正彦さんは「スポーツカーでも安全でなくてはならない」と語ります。

両社の開発責任者
両社の開発責任者

このアイサイト、GR86に搭載される場合も「アイサイト」の名称となるとのこと。これについてTOYOTA GAZOO RACINGの末沢秦謙さんも「アイサイトは本当によく止まります」と好評価。GR86と新型BRZはトヨタとSUBARUの共同開発としてトヨタセイフティーセンスとアイサイトを両方検討した結果、今回はアイサイトが採用されたということです。

また組み合わせとしてはAT限定となりますが、その理由としてはSUBARUでもまだマニュアルシフト車とアイサイトの組み合わせは開発段階であるとのことです。

そのATミッションですが、パドルなどのマニュアル操作無しでも最適な回転数となるようなチューニングがなされ、気持ちの良い加減速が味わえるとのことです。

●開発に携わったレーシングドライバーも出演

トークショーの後半は、開発に携わったレーシングドライバーが登場します。

レーシングドライバー佐々木雅弘選手と井口卓人選手
レーシングドライバー佐々木雅弘選手と井口卓人選手

GR86に携わった佐々木雅弘選手と、新型BRZに携わった井口卓人選手。お二人はこのトークショーが始まる前に富士スピードウェイのコースでデモランを行いました。

その時の印象を交えながら佐々木選手は、「FRの喜びはFFや4WDでは出しにくいカウンターステアなどの、意のままに操れるというところ。従来型はテールスライドなどでパワーが食われる部分がありましたが、GR86は2.4リッターになってそういう部分がよくなっている」と語ります。

また井口選手は「デモランで佐々木選手と思いっきり走ってやろうと思っていたら、BRZがATで、大丈夫かな?と思いながら走り出しましたが、全然そんなことはなくてしっかり走ることが出来ました」と語ります。確かにデモランの映像では、ATミッションとは思えないテールスライドを効かせた走りを披露していました。

佐々木雅弘選手
佐々木雅弘選手

「でも、初めて乗ったときは、これ86じゃないでしょ?と厳しめに意見を言わせていただきました」と語る佐々木選手。

9割がた出来上がった状態で初めて開発車両に乗った際、2.4リッターでパワーも上がっていいクルマにはなってはいましたが、意のままに操る部分が欠けていたという印象だったそうです。「現行の86が非常によくできているので、新型はアクセルを踏んだ瞬間に86を感じて、またGRというブランドがあるので2段階も3段階も上の味付けとして皆さんに味わってもらいたいな、という思いで開発しました」とも語ります。

井口卓人選手
井口卓人選手

一方、井口選手は「2.4リッターの力を路面にしっかりと伝えるような走りを意識していました」とし、「SUBARUはアイサイトだったりの安全性も重視しながら、レヴォーグやWRXなどもあって、そこの軸を外さないようなクルマにしたいということを意見として出させていただきました」と語ります。

お二人の話からも解るように、実はGR86と新型BRZは乗り味やキャラクターは大きく違うようです。

佐々木雅弘選手と井口卓人選手
佐々木雅弘選手と井口卓人選手

トークショーの中でもTOYOTA GAZOO RACINGの末沢秦謙さんが「マスタードライバー(豊田章男社長)の一声で、GR86のキャラクターを変更しました」と語ります。

トークショーの後に行われたインタビューで佐々木選手は、「極端に言えばGR86はオーバーステア、新型BRZはアンダーステアというくらい違います」とそれぞれのキャラクターを説明します。

新型を買おうという方は是非2台を乗り比べて欲しい、とTOYOTA GAZOO RACINGの末沢秦謙さんもSUBARUの井上正彦さんも強く念を押すところが印象的でした。

秋ごろといわれるGR86と新型BRZの発売。このようなお話を伺うと、いよいよ楽しみになってきます。皆さんはどちらの乗り味を選ばれるのでしょうか?

(写真・文:松永 和浩

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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