MAZDA3が「ウィメンズ・ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞。「女性だけの賞」を唯一の日本人選考委員に聞く

11月18日、マツダの「MAZDA3」が2019年「ウィメンズ・ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」の最高賞である「Supreme Winner」および「Family Car Category賞」を受賞したことが発表されました。日本ではあまり知られていないこの賞。今秋、日本人唯一の選考委員として選ばれたモビリティ・ジャーナリストの楠田悦子氏に、その内容などについて話を聞いてみました。

WWCOTY・ファストバック
最高賞を受賞したMAZDA3ファストバック。より幅広い層へ商品や技術、サービスを届けることで顧客と特別な関係を築いているとされた

■専門は社会の中での移動手段

2010年に設立された「ウィメンズ・ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」(WWCOTY)は、現在34カ国・41人の女性審査委員によって選出される極めてユニークな制度です。今回審査委員に加わった楠田氏は、正式には次回の審査から投票を行うこととなりますが、委員に選考された経緯を含め本賞について話を聞きました。

── では最初に。楠田さんは、自動車新聞社刊のモビリティビジネス誌「LIGARE」の初代編集長を経て、独立後は社会の中の移動手段やサービスの高度化などについて活躍をされています。もともとモビリティに興味を持ったきっかけは何だったのですか?

「大学在学中にスイスに留学したのですが、その生活の中で「暮らし」と「移動手段」というテーマを見つけたんですね。その後(株)自動車新聞社に就職して業界全体の取材を進める中で、地域交通などを扱う冊子「LIGARE」を立ち上げました」

WWCOTY・楠田氏
モビリティ・ジャーナリストの楠田悦子氏。クルマ単体ではなく、広く社会の中での移動手段を検証している

── 現在はいわゆる「MaaS(Mobility as a service=サービスとしての移動)」などを中心にプロジェクトのコーディネーターや講演をされていますが、どういう経緯でWWCOTYの選考委員に選ばれたのでしょう?

「それが今年の8月、選考委員の代表を務めるニュージーランドのSANDY MYHRE氏から突然メールが来まして。どうやらドイツの委員から「日本にモビリティについて活動をしているこんな女性がいる」と推薦があったようなんです。私はクルマそのものにそれほど詳しくないのでビックリしましたけど、周囲の方々に相談しつつ、1ヶ月くらい考えてから承諾しました」

── たしかに、楠田さんはいわゆる「自動車ジャーナリスト」ではないですから、どうしてクルマの選考を?という感じですね

「そうなんです(笑)。ただ、WWCOTYの選考委員はクルマに関係しながらもモータースポーツや交通団体、旅行関係などかなり幅広い分野の専門家が揃っている。いま自動車趣味はコア化が進んで、その結果媒体の縮小なども起きていますよね。そうした中では、より広い視点や分野からクルマを見ることが求められているのかもしれません」

■女性だけで選ぶ意味とは?

── 楠田さんご自身はWWCOTYの意義をどうとらえていますか?

「WWCOTY自体が掲げているように、女性の自動車購入者の増加や、あるいは購入決定権の割合の増加というマーケットを考えると、女性の意見を大きく反映した賞には意味があると思います。個人的には、自分の生活や暮らしを実現させたり反映させる、女性ならではの視点も重要と考えますね。実際WWCOTYでは、安全性、価値、外観、子供への配慮、色、環境などが基準の柱で、従来の技術や性能主義とは一線を画してるんです」

── 楠田さんはいまのクルマ、とりわけ日本車をどう見ていますか?

「正直あまりピンと来ないというか、みんなノッペリしていて違いが分からないというか(笑)。もっと感性や感覚にダイレクトに響くクルマがあるといいナと。ビンテージカーは極端な例ですけど、モノとしての魅力がもっと欲しい。今回「MAZDA3」が受賞しましたけど、ロードスターなどは私も気になりますよ。あの赤(ソウルレッド)は感性の深い部分に響きます」

WWCOTY・セダン
MAZDA3セダン。ハッチバックに比べ、落ち着きのある佇まいを見せる

── 楠田さんが日本代表として加わることで、この賞にどういう影響を与えることができるでしょうか?

「公共の移動を考える人たちの中でクルマに詳しい人は少ない。また。メーカーでさえこれを真剣に考えているのはまだトヨタくらいなんです。その点、社会を含めた総合的な視点は優位に働くかもしれませんね。それとちょっと話はそれますが、本賞のエントリーに軽自動車が入っていないのが寂しいです。小さなボディに高機能を詰め込んだ軽は世界でも通用する筈ですから、そんな視点も持ってみたいですね」

── たしかに、エンジンを少し大きくすれば軽は世界に出て行ける可能性がありますね。では来年の投票を楽しみにしています。本日はありがとうございました。

[語る人]
楠田 悦子 氏
モビリティ・ジャーナリスト
暮らしと社会のため、移動手段、サービスの高度化・多様化と環境について横断的・多層的に国内外を比較して検証。今年の東京モーターショーではUDトラックスブースにて女性ドライバーに関するトークショーのモデレーター、東京都併催の自動運転に関するシンポジウムなどに参加。

WWCOTY・楠田氏サムネイル

(インタビュー・すぎもと たかよし)

■ウィメンズ・ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー2019 カテゴリー別 WINNER
Supreme(最高賞):Mazda3
URBAN:Kia XCeed
FAMILY:Mazda3
GREEN:Kia Soul EV
LUXURY:BMW 8 Series
PERFORMANCE:Porsche 911
SUV/CROSSOVER:Range RoverEvoque

この記事の著者

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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