あおり運転と判断されない車間距離の目安はACCが教えてくれる【週刊クルマのミライ】

■多くのドライバーは車間距離を詰めすぎの傾向アリ。100km/hでの理想的な車間はおよそ100m

高速道路での「あおり運転」を減らすことは、現在の交通社会において大きなテーマとなっています。政府では、あおり運転の罰則を厳しくすることも検討されているようです。クルマの前に出て、無理やり停止させるという危険行為はもちろんですが、車間距離を詰める運転についても「あおり行為」として厳しい目が注がれる時代になってきています。

では、適切な車間距離とはどのくらいなのでしょうか。基本的には、先行車がなんらかの理由で止まったときに安全に停止できる距離を確保することが適切な車間距離といえます。高速道路でのおおよその目安としては速度(km/h)と同じくらいの距離(m)が適切な車間距離といわれています。80km/hであれば80m、100km/hであれば100mということです。もちろん、これは最低限の車間距離ですから、周囲の状況によってはもう少し余裕を見てもいいでしょう。

とはいえ、実際の高速道路では、理想的な車間距離を維持できず、先行車両に近付いているクルマを見かけることも少なくありません。あおっているつもりはなくとも、傍目には「あおり運転」に見えることもあります。そうした無意識に車間距離を詰めているドライバーは、速度によって適切な距離が変わることに慣れておらず、市街地の速度(40~60km/h)での感覚で車間距離が身につき過ぎているのかもしれません。たしかに、速度の応じて適切な車間距離を維持するというのは難しい部分もあります。とくに渋滞が解消されたときなどは渋滞での車間距離の感覚が抜けづらい傾向にあるでしょう。

そうした自覚のあるドライバーにおすすめしたいのは、車両側で先行車との距離を一定に保つACC(アダプティブ・クルーズコントロール)機能です。ACCを使えば、機械が速度に応じて最適な車間距離を維持してくれます。マイカーにACCが装備されていないドライバーは、レンタカーなどでACCを使う機会があるときに、食わず嫌いで利用しないのではなく、ACCによる”適切な車間距離”を体験してみることをお勧めします。おそらく、多くのドライバーが自分の感覚より機械任せでは車間距離が空き過ぎていると感じるのではないでしょうか。これは裏返せば、普段は車間が近すぎるということです。人間の感覚だけでは、どうしてもズレてきてしまいます。ACCのように客観的に見ることのできる装置は、ズレた感覚を調整するのに役立つというわけです。

ところで、高速道路の追い越し車線では、後方から速いクルマが迫ってきたら道を譲ることはルールとして決まっています。しかし、その際には安全に走行車線に戻らなければいけません。つまり、走行車線を走っているクルマが多く、車間距離に余裕がない状態では追い越し車線から走行車線に車線変更することができないことになります。たとえば、走行車線が90km/hで流れているとすると、安全に車線変更するには180m以上の車間距離を空けて走っているクルマの間に入る必要があるのです。

ですから、追い越し車線で追いつきそうになったドライバーは「遅いクルマは車線を譲るのがルールだ」と思うだけでなく、安全に車線変更できそうな場所までは後方で待つことを当然だと考えるべきでしょう。周囲のクルマにブレーキを踏ませてまで、速いクルマが優先されるのはスムースに流れる高速道路とはいえないからです。もちろんルールとして優先されるからといって車間距離を詰めて「あおり運転」する権利がないことも肝に銘じておきたいところです。

画像はイメージ。ホンダN-WGNのACCなどの操作系です。

(山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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