【週刊クルマのミライ】軽自動車のグローバル展開はじまる。スズキ・アルトをパキスタンで生産開始

●軽自動車はガラパゴスモデルではない!? 日本仕様と同等のアルトがパキスタンで生産開始

軽自動車といえば典型的なドメスティック商品であり、日本の自動車産業のグローバル化においてはネガティブな要素として指摘されることも珍しくはありません。実際、軽自動車は日本独自の商品でした。

スズキ・カプチーノやダイハツ・コペンといったスペシャルなモデルが少量ながら輸出されたこともありましたし、軽自動車の技術をベースとした安価なコンパクトカーはアセアン地域などでは評価されている部分もありますが、全長3.4メートル、総排気量660ccという軽自動車規格の中に収まったモデルはそのままではグローバルには通用しない、というのが定説といえるでしょう。

しかし、2019年からそうした評価は変わっていくかもしれません。

スズキがパキスタンで発表した「アルト」は、まさしく日本で売られているアルトそのものなのです。現地の道路事情に配慮して最低地上高こそ170mmまで上げられていますが、ボディサイズは全長3395mm・全幅1475mmと軽自動車サイズのまま。エンジンも軽自動車用の「R06A」型を搭載しています。

しかも、このアルトはパキスタンのパックスズキモーター社において生産されている海外製造モデルというのが注目のポイント。スズキとしては、軽自動車規格に収まるクルマを海外で生産するのは初めてといいます。すなわち、軽自動車のグローバル展開が始まったというわけです。

ちなみにパキスタンは左側通行(右ハンドル)ですからインテリアもスピードメーターが140km/hまでとなっているなど、ほぼ日本仕様と変わりません。パキスタン仕様のアルトのトランスミッションは5速MTと5AGS(2ペダルMT)の2種類で、価格は99万9000ルピー(約77万9000円)からという設定です。

日本で軽自動車のシェアが拡大しているのは、そのパフォーマンスに満足できるユーザーが多いからでしょうが、かつてのようにエアコンの効きや高速走行の振動などで我慢を強いられる種類のクルマではなくなっています。海外向けだからといって排気量を上げたり、ボディを拡大せずとも十分な商品力を持っていることを、パキスタン向けのアルトは証明してくれるのでしょうか。

(山本晋也)

この記事の著者

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山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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