目次
■プロペラシャフト不要で車体設計の自由度が高まる点がメリット
●今後の普及が見込まれるがモーター&バッテリーのコストが課題
EVやPHEV、HEVなど電動車の普及が進む中、エンジンとモーターあるいはモーターのみで4WDを実現する電動式4WDが増えています。
さまざまな電動式4WDの構成や特徴を、代表するモデルとともに解説していきます。
●電動式4WDのメリットとデメリット
従来の機械式フルタイム4WDに対して、エンジンとモーターの組み合わせ、またはモーターのみで4輪を駆動するのが、電動式4WDです。エンジンの出力とは無関係に4輪の駆動力を制御でき、より自由度の高い車両性能が得られます。プロペラシャフトなどが不要となり、車体設計の自由度が高くなり、さらに減速回生による燃費性能の向上も図れます。
一方でモーターや電池など電動化部品によって、コストが高くなることが課題ですが、電動車の技術進化とともに、電動式4WDの普及も進み始めました。
電動式4WDは、エンジンとモーターの組み合わせや使い方の違いによって、以下の3方式に分けることができます。
●エンジン/モーター協調型
機械式4WDのようにエンジンとモーターの駆動力を、センターデフを介して前後輪に分配する方式です。機械式と同様、駆動のダイレクト感を実現できます。欧州ではBMWやAudi、VWのハイブリッドSUVで採用され、日本ではスバル・XVのハイブリッドが協調型に相当します。
これらは、変速機内にモーターを組み込んだパラレルHEVで、EV走行時にはトランスファーを介してモーターによるフルタイム4WDになります。
●エンジン/モーター独立型
エンジンとモーターを独立にして、4WDのうちエンジンが前輪または後輪を駆動し、残りの駆動輪をモーターで駆動させる方式です。プロペラシャフトがなく、レイアウト上の自由度が上がります。
独立型としては、前輪をモーター、後輪をエンジンで駆動するPHEVのBMW「i8」があります。日本では、トヨタ・プリウス「E-Four」やホンダ・レジェンド「SPORT HYBRID SH-AWD」が相当します。
プリウスは、前輪はエンジンとモーターを組み合わせて駆動しますが、後輪はモーターのみで駆動します。レジェンドも同様ですが、後輪は左右独立式のモーターで駆動し、旋回時はトルクベクタリングします。
●オール電動型
前輪と後輪にそれぞれモーターを配置し、4輪を駆動します。エンジン車と比べて、力強い走りと低燃費を両立できます。
三菱・アウトランダーPHEVは、モーター駆動を主とするオール電動型4WDです。前後輪にそれぞれ駆動用のモーターを搭載しています。エンジンも搭載していますが、これは基本的には電池充電のための発電用です。
●簡易電動型
日産・マーチやマツダ・デミオが採用している「e-4WD」は、簡易型電動式4WDです。
FFベースで後輪をモーターで駆動する4WDですが、モーター駆動用の電池はなく、エンジンによる発電でモーターを駆動させます。したがって低速域のみ駆動する4WDシステムで、発進時や登坂時の補助的な役割を果たします。
電動式4WDの最大のメリットは、機械式に比べてシステム全体をシンプルにコンパクトにできること、さらに軽量で車体のレイアウトの自由度も高く、メカニカルロスも低減できます。
電動車が増えていけば、必然的に普及する電動式4WDですが、やはり駆動用モーターと電池のコストがネックでしょう。
(Mr.ソラン)