【ルノー・ルーテシア トロフィーR.S.アクラポビッチ試乗】これぞ「ホットハッチ」! 最近のルノーはビックリするほどスポーティになっている

●パワーもハンドリングも文句なしの痛快さ! ワクワクさせてくれる「ルーテシア トロフィーR.S.」

ルノーのラインアップのなかでもっともコンパクトなトゥインゴに次ぐモデルとして欧州を中心に大きな支持を受けているのが「クリオ」と呼ばれるモデル。

「クリオ」は欧州地域で使われるネーミングで、日本では「ルーテシア」と呼ばれます。現行モデルは4代目で、900ccの3気筒モデルからラインアップが用意されるコンパクトモデルです。

そうしたルーテシアのなかで特別なモデルとして用意されているのがR.S.(ルノースポール)です。R.S.には1.6リットルのターボエンジンを搭載。6速の2ペダルMT(オートモード付き)が組み合わされます。エンジンの出力は2タイプあり、シャシーカップが200馬力/240Nm、トロフィーが220馬力/260Nmとなります。

 

試乗車はその特別なR.S.のなかでもさらに特別な「ルーテシア トロフィーR.S.アクラポビッチ」です。「アクラポビッチ」とは、欧州でメジャーなマフラーメーカー。ルーテシア トロフィーR.S.専用に設計、標準に比べて3kgの軽量化と最高回転領域で約2馬力の出力アップを実現しています。最高出力と最大トルクはトロフィーと同一で220馬力/260Nmという数値ですが、最高回転付近(最高出力回転数は6050回転で、レブリミットは6800回転)では前出のように2馬力アップを実現しています。

エンジンを始動すると野太いエクゾーストノートが車内に響きます。エンジン始動時にはアイドリング+αまでエンジン回転が空ぶかしされます。この時メーターはレブリミットまで上昇するという演出です。この音の時点がまずノーマルのトロフィーとの違いと言えるでしょう。トロフィーも“いい音”ですが、アクラポビッチはさらに“いい音”です。

そのまま加速していくとレブリミット前でシフトアップしますが、そのときがまた快感です。「バフッ」という音を響かせ、上の段にシフトします。これはクラッチが切れるわずかな瞬間にエンジン回転の上昇が抑えきれず、たまらずに回転するときの音。まさにスポーツカーらしい音なのです。

そしてシフトのつながりそのものはスムーズなのです。かといって完全にシームレスではなく、必要なショックは残している。これぞ味付け、そこがわかっているね〜、と感心させられます。

加速感はかなり力強いものです。アクセルを踏んでけばグイグイどこまでも加速している印象です。トラクションの掛かり方もよく、雨の試乗でも十分に加速していく様子を感じられました。

さらに気持ちのいいのがハンドリングです。ルーテシアよりも上のモデルとなるメガーヌには4コントロールと呼ばれる4WSが装備されますが、ルーテシアは純粋な2WSです。しかし、電子制御サスペンションやクイックステアリングの採用によってシャープで正確はドライビングが可能です。さらにHCC(ハイドロリック コンプレッション コントロール)と呼ばれるショックアブソーバーを採用したとによって、バンプ時のタイヤの動きも上手にコントロール。フルブレーキングからのステア操作時も、クルマの動きが不安定になることはありません。

これぞホットハッチ、かつては日本にもこんなクルマがたくさんありました。あのころのワクワクをふたたび味わいたい、あのころのワクワクを何だったのか知りたい、とくにかくワクワクしたい……その気持ちを満たしてくれること請け合いのクルマがルノー・ルーテシア トロフィーR.S.アクラポビッチと言えるでしょう。

(文/諸星陽一・写真/宇並哲也)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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