あなたの知らないボルボの世界。え? ボルボが開発中の安全装備はブランケット!?

ここ数年、急激に日本国内での販売台数を伸ばしているボルボ。特に首都圏でのボルボ車遭遇率は圧倒的に増えています。しかしこれは日本国内に限ったことでは無く世界的な傾向で、ボルボの世界販売台数は5年連続過去最高を記録し、2018年は過去最高の64万2253台。まさに赤丸急上昇中です。

 

日本国内では「日本カー・オブ・ザ・イヤー」史上初めて、輸入車の同一ブランドが2年連続「日本カー・オブ・ザ・イヤー」のイヤーカーに輝くという快挙を達成。これには一部の方々には賛否両論あるようですが、これもまた日本に限ったことでは無く世界各国の名だたる賞を総ナメにしている状態。

ちなみに私も「日本カー・オブ・ザ・イヤー」の選考委員を務めさせていただいていますが、昨年の「日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞したボルボの最新で最小SUV「XC40」に票を投じました。日本をひいきしたい気持ちはどこかにあっても、クルマがいいのですから仕方がありません。何しろデザインよし、走ってよし、安全性も充実しているというまさに非の打ち所の無い才色兼備なのですから。ひと昔前まではボルボといえば安全意識の高い人やファミリーカーのイメージが強い傾向にありましたが、最近では特にオシャレ感度の高い人に注目されているようです。

このボルボの快進撃を支えるのは?という質問に「デザイン」「モダン」「新鮮」「安全性」と答えてくれたのはボルボ・カーズ デザイン部門上級副社長のロビン・ペイジ氏。その中でも昨今のボルボのデザイン力は目を見張るものがありますが、デザイン部門のナンバー2であるペイジ氏に昨今のボルボデザインの魅力を伺ってみました。

ペイジ氏は1971年生まれ。イギリス出身で、12歳の時にはすでにカーデザイナーを目指すことを心に決めたとか。それは自宅のお隣さんが地元のコベントリー大学でデザインを教えていたということがきっかけとのことですが、まさにカーデザイナーになるために生まれてきたと言っても過言ではないのかもしれません。

その経歴は華やかで、ジャガーから始まり、ロールスロイス、ベントレー、ブガッティなど英国のスーパーラグジュアリーブランドのインテリアを担当し、あの英国エリザベス女王のリムジンのインテリアを手掛けたというのですから、まさに世界のラグジュアリーカーを知り尽くすお方。なるほど! それでこれまでのスカンジナビアデザインにどこか英国風の香りと気品が漂うような気がしたのは…。

 

ボルボのデザインは大きく分けて3つの要素からデザインされています。1つ目は「プレミアム ファクター」を意識したプロポーションとディテールの組み合わせをデザイン。

2つ目に安全性。シートベルトとエアバックにセンサーを加えて事故を事前に予知することをデザイン。

そして3つ目が、スカンジナビアのアクティビティを楽しむライフスタイルや文化を取り入れたデザイン。

そしてボルボのデザイン言語は、フロントグリルやロゴはもちろんですが、それ以上に個性的なライト「トールハンマー」でボルボ車だとわかります。またリアのライトもどこから見てもボルボだとわかるデザインに。エクステリアもホイールベースを広げて造形をモダンに。

インテリアには4つ。フロント部分の「アーキテクチャー」は2~3のラインをもとにテーマを捉えます。「マテリアル」には身の回りにある自然の物を使います。たとえばXC40では白い流木のモチーフです。次に「テクノロジー」。これは見た目に先進感を与える縦長の大きなタッチスクリーンのインターフェイス。そしてスイッチの数を減らす一方でクリスタルのシフトノブなどを使うなど「ジュエリー」感たっぷり。

またペイジ氏によると、「XC90は大型SUVでフォーマル。存在感があります。テクノロジーとジュエリーの輝きの融合です。また中国向けであるS90は、ウッドが立体感を出してラウンジコンソール、スクリーン、フットレストやキーボードなどでラグジュアリー感を演出しています。

XC60は、90より小さいだけではなく、ダイナミクスなどもきっちり行われ、ドリフトウッドは流木からインスピレーションを受けました。人のライフスタイルをサポートするクルマです。

そしてXC40。これはスケールダウンではなく、グラフィカルなデザインにするためにボリュームを削っています。インテリアはより人が使いやすくするために収納やスピードメーター、インストルメンタルパネルなどにこだわり、ティッシュ入れや携帯充電チャージャーなどを装備しています。またスカンジナビアンテイストとしては素材に97%リサイクルのフェルトを使用し、サスティナビリティにも貢献しています」と。

しかし私が最も驚いたのは、ボルボが去年発表したコンセプトカー「360C」。完全自動運転のレベル5のクルマで、ドライバーがいなくても走行が可能とのこと。そして用途やクライアントに合わせた仕様が可能ですが、中でも「スリーピングモード」だとゲストは眠ったまま目的地に行けるらしい。その時にかけるブランケットが、万が一の時には体の周りを固定するという斬新なアイデア。とはいえ、まだ開発中とのことですが。

ボルボは自動運転のレベルに限らず、ボルボの優先順位はとにかく「安全性」が一番。人のためにデザインし、人のニーズに合ったものをと考える「おもいやり」が、ボルボのデザイン言語のようです。

(吉田 由美)