日本機械学会は25日、スバル360-K111型を今年度の機械遺産に選定したと発表しました。
今回、機械遺産に選定されたスバル360は、1955(昭和30)年に発表された通産省(当時)の国民車構想に呼応して、1958(昭和33)年に販売が開始され、日本独自の”軽自動車”規格(全長3m以下、全幅1.3m以下、搭載エンジンの排気量は360cc以下:当時)の最初のヒット作となりました。
上の写真(スバルビジターセンターが日本機械学会に提供)の車両は、最初に製造された60台(通称デメキン)の1台で、群馬県太田市の富士重工業 矢島工場内スバルビジターセンターにモックアップ(実物大石こう模型)とともに保存されています。なお、スバルビジターセンターの見学は事前予約が必要です。
戦後間もなく、庶民には自家用車が夢の時代に、低価格の実用に耐える乗用車の普及を目指し、旧中島飛行機(現富士重工業(株))の技術者が航空機技術を活かすことで、この「スバル360」が開発されました。
スバル360の設計思想は、大人4人乗車可能、路線バスの通る道はすべて走行可能というもので、これを実現するために、航空機技術を応用した軽量・高強度のモノコックボディ、車内スペースを確保するトーションバー・スプリング(捻り棒ばね)という画期的な技術を採用して、83km/hの最高速度を発揮しました。
当時の販売価格は36.5万円で、1970(昭和45)年に生産終了をむかえるまでの累計生産台数は39万台余にのぼりました。
無駄を切り詰めた丸みを帯びたスタイルから「てんとう虫」というニックネームも生まれ、日本のモータリゼーション黎明期の大ヒット車種となったことが今回の機械遺産選定につながりました。
機械遺産は日本機械学会が2007年から選定しており、これまでにスバル360を含めて83件の機械遺産が選定されています。
(山内 博・画像:日本機械学会)