カタログ燃費の秘密は「車重1080kg」にあり!?

プラグインハイブリッドを除く、ハイブリッドカーとして燃費性能トップになったことが話題を集めているホンダ・フィットハイブリッド。その36.4km/LというJC08モード燃費は、ホンダの技術力が込められています。

fit_hybrid

ただしフィットハイブリッドにおいて、36.4km/Lという燃費性能を実現したのはハイブリッドのベーシックグレードのみで、上級グレードになると燃費性能は31.4~33.6km/Lと異なる数値になっています。 

その理由は、もしかすると、ベーシックグレードが1080kg、上級グレードが1130~1140kgと重くなっていることにあるかもしれません。とはいえ、車重は軽いほど燃費性能に有利という単純な話とは言い切れません。そもそもグレードの仕様違いで50kgもカタログスペックが異なるというのは、このクラスでは珍しいといえます。実際、燃料タンク容量がベーシックグレードだけ32リッター(そのほかのグレードは40リッター)になるなど徹底した軽量化がなされているのです。 

断定するわけではありませんが、「1080kg」は、単純な車重にとどまらない、それを実現するのに意味ある数字といえるかもしれないのです。

おそらく、それはJC08モード燃費の計測方法にヒントがあるかもしれません。

計測機械の上で、各種の負荷などの条件を整えて、排出ガスを測定するのがJC08モードの測り方で、空気抵抗やタイヤの転がり抵抗などは実際の車両で測定して、そこから導かれる数値を入れるようになっていて、燃費もそこから割り出されます。その際、重量による負荷については以下のように、区分分けされています。

●等価慣性重量の標準値 : 試験車両重量 (一部抜粋)
 1020kg : 966~1080kg
 1130kg : 1081~1190kg
 1250kg : 1191~1305kg
 1360kg : 1306~1420kg
 1470kg : 1421~1530kg

なお、試験車両重量とは、カタログに掲載されている車両重量に110kgを足したものです。

ですから、車両重量が1080kgのクルマは排出ガス計測時に計測機械に設定する等価慣性重量は1130kgとなり「軽いクルマ」となりますが、車両重量1130kgはひとつ上の区分となり、等価慣性重量は1250kgと「重いクルマ」になります。一般に、前者のほうが条件が有利といえるのです。

また、車両重量は燃料が満タン状態での重さですから、わずかに燃料タンク容量を減らすことで、試験車両重量の区分をワンランク下げるというのは、レギュレーションに対応する手段としては珍しくないことといえます。逆に、メーカーオプションの装着など仕様違いにより、試験車両重量の区分が変わってしまい、結果として燃費性能が異なるケースもあります。

これらによる実際の燃費への影響とは関係なく、燃費計測のクラス分けとして負荷が変わってくるわけです。

ちなみに、フィットでは1.3リッターガソリン・アトキンソンサイクルエンジンの13Gにおいても、ベーシックグレードのみ車両重量は970kgとなっています。このグレードも燃料タンク容量は32リッターです。

フィット13GのJC08モード燃費性能は、ベーシックグレードの13Gが26.0km/Lなのに対して、上位グレードでは24.0~24.4km/Lとなっています。

  fit13G

とくに燃費をセールスポイントにしているモデルほど、等価慣性重量を意識した車両重量なのかどうか、カタログなどをチェックしていくのも面白いかもしれません。

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(山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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