リチウムはスペックで劣っても性能が同じになる秘密とは?【新型トヨタプリウスαのすべてを読んで/メカニズム編】

従来のクルマ造りでは、最新のエンジンを走りの性能を向上させるために搭載して、仕様を造り分けてきました。最新技術は「走りや燃費」のために!というのが定石だったのですね。

一方今度のプリウスαでも、ハイブリッドのキモであるバッテリーの種類を、仕様に応じて使い分けてきました。
ただ従来と異なり、高額な最新技術を「空間」を創出するためだけに活用したところに、新しさを感じました。そこでプリウスαの売りである「空間」を中心に見ていきたいと思います。

まずボディ構造ですが、プリウスαは、プリウスよりホイールベースを80mm伸ばしました。そして全高を上げ、シートを起こし気味にして縦方向の寸法を稼ぎ、キャビンと荷室の拡大を実現しているのです。そのためプリウスに比べると、頭上空間にはゆとりがあるし、見晴らしも良くなっていますよね。
ここは、数多くのミニバンを送り出してきたトヨタのパッケージング・ノウハウが大いに活きるところです。

次に、ハイブリッドシステムです。まず両仕様で共通する課題は、大人2人分に相当する重量増対策です。もともとエンジンもモーターもプリウスと同じパワーユニットを使っているので、そのままだと十分な走行性能を確保できません。そこで回転を上げてパワーを発揮させて、重量増を補う制御を採用しました。つまり燃費性能を38km/lから31km/lに落とす分、走行性能に振り向けた訳です。

またクルマの重量増に加えて、人も荷物もドッサリと乗ってきますから、駆動モーターの負荷増大は避けられません。そこで、駆動モーター専用の水冷システムを新設して、モーター発進等に支障をきたさないように対策を施したそうです。

そしてプリウスαでは、仕様によってバッテリーの種類を大きく変えてきました。
「5人ワゴン仕様」は、プリウス同様にニッケル水素バッテリーを搭載しています。

一方「7人ミニバン仕様」では、次世代型のリチウムイオンバッテリーを採用してきました。3列目シートと着座スペースを確保するために、小型化をはかりセンターコンソールに移設してきたのです。高額な最新バッテリーを、走りや燃費の性能向上に使わず、あえて空間確保に注ぎ込むところに、新しい技術的な潮流を感じた次第です。

ちなみに搭載したスペックを単純比較すると、最新のリチウムイオンの方がニッケル水素より若干劣っています。実はリチウムイオンは、電気の出し入れが優れているため、スペックが劣ってもニッケル水素と同性能を発揮できるのだそうです。
(・0・)なるほど~

プリウスのハイブリッドシステムは、制御やバッテリーの種類の組合せによって、様々な特性を持たせることができるという奥深さを感じました。プリウスファミリーには、これからも様々なプラスアルファが期待できそうですね。

(拓波幸としひろ)