■静かでスムーズな走りが新世代ガソリンエンジン車の美点
新世代ガソリンエンジン車を謳い、鳴り物入りで登場したマツダの「SKYACTIV-X 2.0」。
従来のガソリンエンジン車「SKYACTIV-G」はもちろん、ディーゼルの「SKYACTIV-D」と比べても車両価格は上回り、どう選んでいいのか悩ましいものがあります。
マツダの最新SUVであるCX-30にも追加された「SKYACTIV-X」搭載車に、少しだけ長めの距離に乗る機会がありました。
プレス向け試乗会では撮影時間をのぞくと1時間程度という試乗時間ということもあり、じっくり吟味するのが難しいケースもあり、少しでも長い距離を走ってみたいという思いがありました。
主要燃費向上策として、諸元表にハイブリッドシステム、アイドリングストップ、直噴、可変バルブタイミング機構などを並べる「SKYACTIV-X」。24Vシステムの「M Hybrid」を搭載するマイルドハイブリッドでもあります。
さらに2.0L直列4気筒DOHC16バルブエンジンには、エアサプライ(スーパーチャージャー)による空気を供給するパーツも搭載されています。
■驚くほどパワフルではないが必要十分以上
モーターは発電機の代わりでもあるため、エンジン始動はとても静か。街中から走り出すと、トヨタのストロングハイブリッドなどとは異なり、モーターの存在感はあまり抱かせず、エンジンが主役なのが分かります。
ハイブリッドシステムは、あくまで燃費対策として搭載されているのがうかがえます。アイドリング付近の燃焼音も含めて、低速域の音・振動はかなり抑え込まれていて、ディーゼルのようなテイストではなく、車内は全開加速時でもない限り基本的には静かです。
高速道路にステージを移すと、エンジン回転域によっては少しノック音が伝わってくるものの、ディーゼルのような音・振動ではなく、静かなのは同じです。なお、100km/h時のエンジン回転数は2100rpmを少し超えるくらい(6速ギヤ)。
また、センターディスプレイに「SPCCI(Spark Controlled Compression Ignition:火花点火制御圧縮着火)」の燃焼状態が分かります。つまり、SPCCIの圧縮着火であるか、併用される通常の火花点火の状況下なのかが確認できます。頻繁に切り替わっているのが視認できます。
実際の走り味は、街中や郊外路などで流れに乗っている分にはとても静かで、ほぼ全域トルクフルで走らせやすい印象。6ATはロックアップ領域の拡大が図られていて、レスポンスそのものも悪くはないのですが、多段化が進む中では段数の不足を感じさせるシーンも変速マナーにおいて若干感じられます。
高回転域でのパンチ力、伸び感はそこそこで、それよりもトルクフルな走りに終始する印象です。箱根の山のような勾配路では、「SPORT」モードにすることで、レスポンスが高まり、走らせやすくなります。
気になる燃費は、約286km(高速道路6割、一般道2割、山岳路2割)を走り、14.14km/L(20.22L給油)でした。CX-30の「SKYACTIV-X」のWLTCモード燃費は16.8km/Lですから妥当といえる数値だと思います。
悪くはないものの、プレミアムガソリンを指定するため、とにかくランニングコストを抑えたい人はやはりディーゼルがオススメ。
また、CX-30はクーペ風のエクステリアデザインでありながら後席の頭上空間には意外と余裕があり、CX-3と比べると足元の広さ、ラゲッジスペースにも余裕があります。また、CX-30の美点である乗り心地の良さも「SKYACTIV-X」搭載車でも存分に味わえるのが魅力です。
(文/写真 塚田勝弘)