人気車が10年で様変わり! N-BOXやタントなど「軽スーパーハイトワゴン」が人気の理由

■全長1700mm超の背高モデルは使い勝手満点

今や、国内の新車販売台数の約4割を占めると言われている軽自動車。中でも近年高い人気を誇っているのが、全高1700mmを超える軽スーパーハイトワゴンです。

高い居住性や使い勝手を持つのが人気の秘密ですが、10年前にはさほど多くなかった軽スーパーハイトワゴンというジャンルのクルマは、一体どういった魅力があるのでしょうか?

軽スーパーハイトワゴン
ダイハツ・タント。2020年6月には、装備の充実とリーズナブルな価格を両立した新グレード「Xスペシャル」も追加

●10年前と人気のラインアップが激変!?

「十年一昔」とよく言いますが、業界団体の全軽自協(全国軽自動車協会連合会)の統計によると、ここ10年で軽自動車の人気モデルも、そのスタイルがずいぶんと変わってきています。

たとえば、2009年度(2009年4月〜2010年3月)における軽自動車の新車販売台数ランキングの上位5位は以下の通りです。

1位:スズキ・ワゴンR 19万3430台(前年比92.8%)
2位:ダイハツ・ムーヴ 16万2423台(前年比84.0%)
3位:ダイハツ・タント 16万1576台(前年比101.2%)
4位:スズキ・アルト  9万9245台(前年比136.0%)
5位:ダイハツ・ミラ  9万5603台(前年比121.8%)

一方、2019年度(2019年4月〜2010年3月)のランキング上位5位は以下のようになります。

1位:ホンダ・N-BOX   24万7707台(前年比103.3%)
2位:ダイハツ・タント  17万2679台(前年比121.1%)
3位:スズキ・スペーシア 15万9799台(前年比100.9%)
4位:日産・デイズ    15万4881台(前年比110.6%)
5位:ダイハツ・ムーヴ  11万8675台(前年比89.7%)

2009年度では、1位にワゴンR、2位にムーヴといった全高1500mmから全高1700mm未満の、いわゆる軽トールワゴン系がトップ2を占めています。当時から軽自動車でも背が高いモデルが人気だったことが分かります。

それらよりも背が高い軽スーパーハイトワゴンは3位のタントのみで、以下はセダン系のアルトやミラが続いています。

軽スーパーハイトワゴン
2009年度の新車販売台数1位に輝いた4代目ワゴンR

ところが、2019年度になると、1位N-BOXから3位のスペーシアまで、軽スーパーハイトワゴンが上位独占。4位のデイズや5位のムーヴといった軽トールワゴン系と人気が逆転しています。

しかも、N-BOXは、5年連続で年間販売台数の1位。

タントは、2014年度(2014年4月〜2015年3月)に年間トップになって以来、N-BOXに首位の座を明け渡したままですが、ここ数年は常に上位をキープ。2019年11月の月間販売台数では、N-BOXを抜いて1位を獲得したこともあるほど、根強い人気を誇っています。

軽スーパーハイトワゴン
ホンダ・N-BOXは、乗用車全体の新車販売台数でも3年連続1位。日本で一番売れているクルマだ

●軽スーパーハイトワゴンの元祖はタント?

2019年度の上位を占めている軽スーパーハイトワゴンたちは、いずれも広い室内を持つことが人気の理由ですが、他にも共通点があります。それはスライドドアを採用していることです。そして、その元祖とも言えるクルマがタントなのです。

タントは、2003年の初代モデルから全高1700mmを超える初の軽スーパーハイトワゴンとして登場しました。また、ホイールベース2440mmは当時の軽自動車としては最大。ワゴンRなど、人気の軽トールワゴン系に対抗すべく、高い居住性を持ったモデルとして発売されました。

軽スーパーハイトワゴン
2003年に発売された初代タント

タントがスライドドアを採用したのは2007年発売の2代目から。助手席側のセンターピラーをなくしたミラクルオープンドアの採用で、前後ドアを両方とも開くと開口部がとてもワイドになることで大きな人気を獲得します。

軽スーパーハイトワゴン
2代目タントでミラクルオープンドアを初採用

ホンダやスズキも、それに追従し、その後スライドドア付きの軽スーパーハイトワゴンを発売。現在のように人気モデルの多くに採用されることになったのです。

●スライドドアのメリットとは?

軽自動車を使うことが多い子育て世代にとって、スライドドア車はとても便利だということが、現在の高い人気やトレンドに大きく影響しているのでしょう。

たとえば、後席に装着したチャイルドシートに子供を乗り降りさせる場合。後席にスライドドアがあるモデルの方が、スペースが十分に確保されるため、シートベルトの付け外しなどもやりやすくなります。

また、子供を抱えながら荷物も持って乗り降りする場合も、後席に電動スライドドアがあり、リモコンキーのスイッチ操作で自動で開けば、手が塞がっていても開閉が可能です。さらに、小さい子供を室内で着替えさせる時も便利。室内が広い軽スーパーハイトワゴンにスライドドアがあれば、ドアを開いたままボディ横から着替えさせることができます。

ほかにも、開閉時にドアパネルが外側に開かないスライドドアなら、駐車場のスペースが狭く、隣のクルマとの間隔があまりない場合でもドアをぶつけにくいなど、数多くのメリットがあります。

軽スーパーハイトワゴン
スライドドア付き軽自動車は、その便利さが子育て世代に大きな支持を受けている

軽自動車には、ほかにもスズキの「ハスラー」や、最近発売されたばかりのダイハツの「タフト」といった軽クロスオーバーSUVも最近のトレンドとして注目です。

軽スーパーハイトワゴン
軽クロスオーバーSUVのニューカマー、ダイハツ・タフト

前述の通り、軽自動車は現在の国内市場で多くのシェアを占める人気のジャンル。いろんなスタイルのクルマが出てきている理由は、ユーザーが増えたことにより、車種にもより多様性が求められてきているためでしょう。

今後も、より使う側の視点に立った、魅力的なモデルが出てくることに期待したいものです。

(文:平塚直樹/写真:本田技研工業、ダイハツ工業、スズキ)

この記事の著者

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平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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