伝統の名前を唯一無二の個性派ボディで復活。アルファロメオ GTV/スパイダー【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判:輸入車編】

80~90年代輸入車のグッドデザインを振り返る本シリーズ。第28回は、伝統の名前を復活させた、超個性派イタリアン・クーペ/スパイダーに太鼓判です。

■個性的コンセプトカーを量産化

GTV・メイン
ウエッジしたキャラクターラインでキャビンをボディを分けるという斬新なデザイン

80年代後半にアルフェッタGTVの生産か終了したものの、経営陣交代劇などで後継車開発が遅れていたアルファロメオが、ようやく1994年に発表したのが、GTV/スパイダーです。

ひとつのボディでクーペとスパイダーを両立するテーマは、ピニンファリーナが1986年に提案し好評を博した、ヴィヴァーチェスパイダー/クーペで示したものを基本とし、これを90年代らしく発展させました。

具体的には、ナナメに駆け上がってキャビンを区切るラインを強調し、ボディの2重構造を明快に表現。加えて、ウエッジを強くすることで強烈な前進感を打ち出しました。

SPIDER・リア
スパイダーのリアはゆるやかに下がるラインがGTVと異なるところ

一方、アンダーボディは面のピークを水平に引きつつ、リアフェンダーには実に豊かな量感を持たせることで、キャビンである上屋部分をしっかり受け止めています。さらに、リアに向けて大きく絞られる美しいショルダーの流れも見所。

フロントは、50年代のジュリエッタスパイダーの盾型グリルとサイドグリルを巧妙にアレンジ。GTVのリアは強いウエッジの流れを受け止める広い面のパネルが特徴的で、低い位置に置かれた横長のランプが見た目の重心を引き下げます。

■思い付きではない個性

GTV・インテリア
エクステリアに比べて凡庸なインパネはマイナーチェンジで大幅に変更された

諸般の事情により開発の時間がほとんどなかったというインテリアは、外観との関連が感じられない凡庸なもので、唯一残念なところ。そのせいか、マイナーチェンジではシルバーのパネルで一体化された別物に変更されました。

スタイリングは164に続き、ピニンファリーナのエンリコ・フミアが手掛けました。方向性は異なりますが、明快なキャラクターラインが端正かつエレガントな表情を出していた164のように、テーマが明快なデザインは不変です。

肝要なのは、特徴的なナナメのラインがクルマを構成する要素としてしっかり機能し、かつ全体の中で消化されているところ。つまり、近年多く見られるような、ボディ表面に描いただけの「思い付き」ではないところなのです。

●主要諸元 アルファロメオ GTV V6ターボ (5MT)
全長4290mm×全幅1780mm×全高1315mm
車両重量 1420kg
ホイールベース 2540mm
エンジン 1996cc V型6気筒SOHCターボ
出力 201ps/6000rpm 27.6kg-m/2500rpm

(すぎもと たかよし)

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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