■前後シート共に厚みが増して乗り心地の向上にも寄与
新型ホンダ・フィットの魅力は、先代同様に広い後席と荷室にあります。さらに、先代までと同様に後席の座面を引き上げて固定できるチップアップ機構、ほぼフラットに後席背もたれを前倒しできるダイブダウンが備わっています。
後席座面のチップアップ機構は、ベビーカーや観葉植物などの背が高めで嵩張る荷物を積むだけでなく、スキーやスノーボードのブーツの履き替えなど、ウインタースポーツ、マリンスポーツなどのシーンでも重宝するはず。
また、後席の座面は、先代よりもパッドの厚みが24mm増となっていて、見た目を裏切らない座り心地を得ているのですが、そのため後席の前倒し時には、わずかにシート部分が高くなるものの、段差は比較的抑えられています。シート格納という要素では依然としてトップレベルにあるといえるでしょう。
座り心地では、Sばね構造から新たに面支持剛性になったフロントシートの秀逸さが際立っています。
Bセグメントでありながらアコードクラスのシートが採用された上に、座面のパッドは従来よりも30mmプラスとなったことで、底付感の少ない良好な感触が得られます。さらに、快適性と適度なフォールド性も感じられ、シート自体の減衰も効いていて、Bセグメントの中では比較的フラットといえる乗り味を示す前席になっています。
後席の乗り心地は、前席に比べるとやや細かな振動を伝え、また大きな段差を乗り越えた際の上下動も大きく感じられます。一方で、後席の足元空間はクラストップレベルの広さが確保されています。身長171cmの筆者が運転姿勢を決めた後ろの後席には、膝前にこぶし2つ半強の余裕が残ります。
また、後席からの前方の眺めも良好。フロントシートの背もたれの形状を工夫することで、前席ほどではないものの、広い視界が広がっていて、閉塞感とは無縁です。
新型フィットもセンタータンクレイアウトを採用していますが、後席足元は、前側(前席座面下)になるほど高くなっていて、オットマン的な足の置き方になるのも印象的です。マツダ・デミオのユーザーである私からすると、1クラス上の広さ感が後席、荷室には確保されている印象です。
ラゲッジはライバルと比べて、低い位置に設定されていて、さらに先代よりも大開口になり、積載性が向上しています。開口高が低く、より大開口になったことでベビーカーやスーツケースなどの大きな荷物でも積みやすそう。
後席をダイブダウンさせればMTBやクロスバイクなどの積載にも対応。ハイブリッドは、荷室のアンダーボックス容量が先代の3.5倍になる14Lを確保するなど、小物の収納などもしやすくなっています。
(文/塚田勝弘 写真/前田惠介)