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■アクティブサスからシートベルトまで!幅広く最先端技術に取り組むZF
世界的なサプライヤーであるZFが、同社の最先端技術をデモンストレーションするイベント「ZF Vision Zero Days」を開催しました。その舞台となった富士スピードウェイを訪れたのは、日本の自動車メーカー9社・約250名です。5日間にわたって開催されたこのイベントの最終日にはメディア向けの取材会も設けられました。そこで体験することができたユニークな最新テクノロジーをピックアップしてご紹介しましょう。
●AMTのシフト操作をスムーズ化する電動アクスル
まず目に飛び込んできたのは、ダチア・ダスターです。
ダチアは、ルノーの傘下にある自動車メーカーで、ダスターは全長約4.3mのコンパクトSUV。試乗車のパワートレーンは1.5Lディーゼルエンジンに6速MTというコンビネーションですが、そこに組み合わされていたのが、ZFのAMTと電動リヤアクスルです。
AMTは「オートメイテッド・マニュアル・トランスミッション」の略で、いわゆる2ペダルMTのこと。基本的な構造はMTでシフトノブも備えているのですが、クラッチ操作を自動化することによってクラッチペダルが不要となっており、AT免許でも運転することができます。
欧州車には採用例が多く、日本車でも2015年に登場したスズキ・アルトターボRSに搭載されていました。コスト的に有利で、MTのようなダイレクト感があるのが魅力です。その反面、シフトチェンジ時にどうしてもギクシャクしがちという弱点もあります。クラッチ操作をクルマが行ってくれる際に、どうしてもトルク抜けが発生してしまうのです。
それを解消してくれるのが、リヤに搭載された電動アクスルです。モーターがシフトアップのタイミングに合わせてアシストしてくれることで、途切れの少ない加速を実現しています。実際に試乗してみましたが、AMTなのにまるでトルコンATのような滑らかな変速に驚かされました。
さらにユニークなのは、フロント側のエンジンとリヤ側の電動アクスルを合わせて4WD状態で走ることができるだけでなく、リヤのモーターのみで走行することも可能となっていることです。フランスの首都パリでは、2024年からディーゼル車の乗り入れを禁止し、さらに2030年からはガソリン車の乗り入れ禁止も検討されているとのこと。そんな状況も、この電動アクスルの開発の背景にあるようです。
じつはこの電動アクスル、すでに市販車に搭載されて世の中に出回っています。その市販車とは、メルセデス・ベンツの市販電気自動車「EQC」です。EQCには前後にZFの電動アクスルが搭載されており、電動4WDとなっています。
●ドライバーに情報をフィードバックできるシートベルト
また、シートベルトも進化を遂げていました。一見すると何の変哲もないシートベルトなのですが、リトラクター(ベルトの巻き取り装置)に秘密がありました。モーターが組み合わされており、シートベルトを自在に締めたり緩めたりすることができるようになっているのです。
そうすることで、シートベルトの緩みをとったり、スポーツ走行時にはきつめにシートベルトを締め込んだり、シートベルトを小刻みに振動させて乗員に警告を促したりと、様々な機能を実現することができました。
このアクティブ・コントロール・リアクターは、将来の自動運転も見据えています。例えば自動運転中にドライバーに運転交代を促す場合には、ベルトを振動させてその合図とすることができます。
また、クラッシュする危険性があると車両が判断した際には、アクティブ・バックル・リフターと合わせて、シートベルトを事前にギュッと引き込むことで乗員を保護してくれるので、安全性の向上にも貢献してくれます。
●アクティブサスとリヤステアが異次元のコーナリングを実現
そして、今回のイベントの目玉(?)だったのが、「イノカー」です。
イノカーはイノベーションカーの略で、ZFの最新技術がてんこ盛りになったデモ車両です。搭載されている技術をリストアップすると、以下の通りとなります。
・SMOTIONアクティブサスペンション
・MSTARSアクスルコンセプト
・ステアバイワイヤ・ステアリングシステム
・インテグレーテッドブレーキコントロール(IBC)
・インテグレーテッド電動パーキングブレーキ(EPBi)
・セカンダリーブレーキモジュール(SBM)
・アクティブキネマティクスコントロール(AKC)
・トリカム(3眼カメラ)
ちなみに、リヤステアは2013年からすでに量産が開始されています。それ以外の技術は、開発中のものです。
アクティブサスペンションは、伸び側と縮み側の両方に設けられたバルブをモーターで制御するもの。それぞれのダンパーにモーターが付いているため、4本を個別に動かすことができます。ガタガタ道を走行してみたのですが、その効果はテキメンで、「ガタ!ガタ!」だった乗り心地がアクティブサスペンションを作動させると「トトトトッ」に変身しました。
このアクティブサスペンションは3眼カメラと連動させて、前方に工事現場があることを認識した場合にはそこに差し掛かる前に車高を上げておく、といった制御も検討しているそうです。
リヤステアの効果も絶大でした。
デモ車両では約8度ほど切れるようになっていたのですが、フロント側のステアリングと合わせて逆位相でリヤを切ると、フォルクスワーゲン・トゥーランがまるで軽自動車かのようにクルッと小回りしてくれるようになりました。都市部で大きな車両を乗る際には、頼りになりそうな機能です。
また、リヤステアのメリットは取り回しやすさだけではありません。パイロンスラロームではリヤを同位相で切るように作動させることで、切り返しが格段にスムーズになり、身体が左右に振られる量が激減しました。このリヤステア機構はポルシェやフェラーリといったスーパースポーツでも採用されているようですが、それも納得のパフォーマンスです。
このほかにも、自動運転、周波数感応式ダンパー、小型トラック用の電動ユニットなど、様々な最先端技術が一堂に集まっていました。クルマの未来をちょっと垣間見ることができた、取材者にとっては貴重な1日となりました。
(長野達郎)