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■小さくてもパワフルなエンジン&本格的なブレーキ
グロムで走り出してまず驚くのは、小さなエンジンが生み出すトルクの豊かさ。3000回転からぐいぐいと盛り上がるトルクは、8000回転を超えるまで粘り強く続きます。小排気量車だからといってぶんぶん回す必要はありません。ワイドなパワーバンドのおかげで、シフト操作すらほとんど意識せずに走れます。そのため、スペック的には控えめな4速ミッションにもまったく不満は感じませんでした。
ローギアの加速はとくに強烈です。不用意にスロットルを開けると軽く首がのけぞるほどなので、ラフなアクセルワークは禁物。無理に回さず早めのシフトアップを心がけ、高めのギアを選んでおいしい中速域をほどよく使う走り方がおすすめです。
それでもローギアは「ちょっと高めかな?」とも感じました。いったん走り出してしまえば、全域で鋭いピックアップと加速感が楽しめる反面、停止状態からの発進加速だけはふわっとソフト。よほど頑張らないとフロントアップもできないくらいなので、発進加速にガツンとインパクトがほしいライダーは、少し物足りなさを感じるかもしれません。でもそのぶん、意図せずフロントアップしてしまうアクシデントのリスクが低く、クラッチ操作に不慣れなビギナーでも安心して走れます。
■よくきくブレーキとゆとりの足まわり
グロムのブレーキは強い制動力をもち、しかもコントローラブル。路面に吸い付くようなグリップ力を持つタイヤと相まって十分なストッピングパワーを発揮します。フロントだけでフルブレーキングを試みると、ふわっとリアが浮きはじめるほど。いっぽうリアブレーキは、よく効くぶんロックしやすいので、セオリーどおりナメるようにじわっと優しく使うのがよさそうですね。サスペンションは、ストロークこそ短いもののキャパシティにゆとりがあり、上質でしっとりと落ち着いた乗り心地を実現しています。
■峠で光る軽やかなコーナリング
1200mmの短いホイールベースと104kgの軽量ボディが生み出すコーナリングは軽快そのもの。ひらひらとラインを変えながら変幻自在のアプローチでコーナーをクリアしてゆくライディングは、グロムの醍醐味ともいえます。俊敏な運動性と安定性が高次元でみごとにバランスした走りです。
ただ、やはり小径ホイール/ショートホイールベースゆえのフロントタイヤの過敏さは消しきれていません。ペースをあげてコーナーに進入すると、フロントがききすぎてラインが乱れる場合も。でもフロントに頼りすぎず、リアタイヤに乗るつもりでコーナリングすれば、不安定さが顔を出すことはありません。それでもバンプなどの路面変化は苦手なので、大きなギャップを拾わないよう賢くラインを選びましょう。
■ピッチングモーションを手なずけるのが楽しむコツ
キビキビしたグロムの走りは、力強いエンジンとよく効くブレーキというふたつのパワーに支えられていますが、小さなバイクでは、それが過度のピッチングモーションを引き起こしやすいのも事実です。でも、ていねいなスロットルワークとブレーキングでピッチングをうまくいなし、前後タイヤの荷重配分を制御できれば、グロムの性能を100パーセント引き出し、思うぞんぶん軽快な走りを楽しめます。グロムで峠を走り込めば、ビギナーはライディングの基本をしっかり学べ、ベテランは繊細な操縦性の面白さをたっぷり味わえそうですね。
グロムは、走りのスピリットに満ちた峠の小さな戦闘機。腕をみがきに、週末は近所の山へ、ちょっとフライトにでかけてみませんか?
【ホンダグロム主要諸元】
全長×全幅×全高:1755mm×730mm×1000mm
シート高:760mm
エンジン種類:空冷4ストロークOHC単気筒
総排気量:124cc
最高出力/最大トルク:7.2kW/1.1kgf
燃料タンク容量:5.7ℓ
タイヤ(前・後):120/70-12・130/70-12
ブレーキ:油圧式ディスク
車両価格:35万7500円
(写真:高橋克也 文:村上菜つみ)
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【関連リンク】
村上菜つみさんがホンダ・グロムで出かけたツーリング記事は、月刊誌「モトチャンプ」2020年1月号に掲載されています。
https://www.sun-a.com/magazine/detail.php?pid=11176
GROM Official Site
https://www.honda.co.jp/GROM/