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■アイドリングストップ時にもエアコンが作動する
●スクロール式とロータリー式が主流
冷房時に冷媒を圧縮してエバポレーターに送るコンプレッサーは、エンジン駆動のため燃費悪化の一因となります。またエンジンの運転頻度が低い、あるいはエンジンが搭載されない電動車では、必然的にエンジンに頼らない電動コンプレッサーが必要です。
電動車とともに普及が進んでいる電動コンプレッサーの仕組みと機能について、解説していきます。
●コンプレッサーの役目
コンプレッサーは、エアコンの冷媒を高温高圧に圧縮し、コンデンサーに送る役目をしています。
ベルトを介してエンジンで駆動し、エアコンスイッチと連動して電磁クラッチでON/OFF制御されます。夏場にエアコンの作動によって燃費が悪化するのは、このコンプレッサーの駆動損失のためです。
機構としては斜板式が主流ですが、ロータリー式やスクロール式などもあります。また最近は、駆動損失を抑えるために冷媒負荷に応じてコンプレッサーの容量を変える可変容量コンプレッサーも出現しています。
課題は、アイドルストップ車やHEVでアイドルストップ機構が働いている間、エンジン駆動のコンプレッサーでは冷房が効かないことです。
●初期のハイブリッド車の欠点
HEVは、夏場の渋滞でクルマが停止すると、アイドルストップ機構によってエンジンも停止します。初期のHEVは、コンプレッサーがエンジン駆動だったのですぐに冷房が効かなくなりました。冷房が効かなくなると、それを検知してコンプレッサーを回すためにエンジンが始動します。
ユーザーにとって、冷房を効かすためにHEVの燃費ゲインが小さくなることは、大きな不満でした。
●電動コンプレッサーの作動原理
電動コンプレッサーには、主としてスクロール式とロータリー式があります。ルームエアコンで主流のロータリー式は、構造が簡単で低コストです。一方のスクロール式は、静粛で効率が高い特徴があり、トヨタのHEVなどの電動車はスクロール式を採用しています。
ロータリー式は、ケーシング内のローターが回転することによって、ケーシングとローターの間の容積(圧縮室)が連続的に変化して、それによって気体を圧縮させる方式です。
スクロール式は、固定スクロールと可動スクロールで仕切られた空間の容積が回転することによって、連続的変化することを利用した方式です。
●電動コンプレッサーの駆動方法
電動コンプレッサーは、コンプレッサー部とモーター部、それを駆動させるインバーター部で構成されます。小型軽量化や静粛性、耐熱性が求められていますが、特にHEVではエンジンが停止時に駆動するので静粛性が重要です。静粛性については、スクロールタイプが有利なので現在主流となっています。
コンプレッサーは、通常DCブラシレスモーターで駆動されます。モーターは、IGBTを使ったインバーターで制御されます。モーターとインバーター、コンプレッサーは一体構造にしてコンパクト化しています。
電動コンプレッサーのメリットは、コンプレッサーが自由に駆動できるので快適性と燃費の両立が高いレベルで実現できることです。
今後システムコストが下がれば、効率の高いエアコンシステムとして電動車だけでなく、エンジン車でも普及する可能性があります。
(Mr.ソラン)