【自動車用語辞典:空調「冷房」】冷媒が気化するときに熱を奪う気化熱を利用して車内を冷やす装置

■エバポレーターで気化した冷媒が周辺空気を冷却する

●温室効果ガス削減のため代替フロンの使用が進む

クルマの冷房は、「蒸気圧縮式冷凍サイクル」方式を採用しています。基本原理は、液体と気体を繰り返す冷媒が気化するときに周囲から熱を奪う気化熱を利用しています。

冷房システムの仕組みと原理について、解説していきます。

●冷房システムの基本構成

カーエアコンの冷房システムは、コンプレッサー(圧縮機)、コンデンサー(凝縮器)、エキスパンジョンバルブ(膨張弁)、エバポレーター(蒸発器)の主要部品で構成されます。

冷房システム全体の流れは、以下の通りです。

・コンプレッサーでガス状の冷媒を圧縮して高温高圧のガス状冷媒をコンデンサーへ送ります。

・走行風で冷却されるコンデンサーは、高温高圧の冷媒から熱を奪い、凝縮して高温高圧の液状冷媒にします。

・高温高圧の液状冷媒は、エキスパンジョンバルブ(膨張弁)の小さな孔から低温低圧の霧状になりエバポレーターに送られます。

・霧状冷媒は、エバポレーターで気化して周辺空気から熱を奪います。この気化熱が、ブロアファンから送られる車室内循環用の空気を冷却します。

液化と気化を繰り返す冷媒は、かつてはフロン(R12)を使っていました。しかし、1990年代に入ってフロンがオゾン層を破壊する温室効果ガスであるため使用されなくなり、代替フロンR134aが使われるようになりました。

エアコンの基本構成
エアコンの基本構成

以下で、各構成要素の部品について解説します。

●コンプレッサー

コンプレッサーは、エバポレーターから送られてくるガス状の冷媒を高温高圧に圧縮し、コンデンサーに送る役目をしています。
ベルトを介してエンジンのクランクシャフトで回転し、エアコンスイッチに連動して電磁クラッチでON/OFF制御します。夏場にエアコンによって燃費が悪化するのは、このコンプレッサーの駆動損失のためです。

最近は、この駆動損失による燃費悪化を抑えるため、可変容量コンプレッサーや電動車で使われる電動コンプレッサーを採用しているクルマもあります。

●コンデンサー

コンデンサーは、圧縮された冷媒ガスを冷却し、凝縮液化する熱交換器です。コンプレッサーで圧縮された高温高圧の冷媒から熱を奪い、凝縮液化します。冷媒の通るチューブと放熱用フィンで構成され、プレートフィンタイプとコルゲートフィンタイプがあります。ラジエーターの前面などに配置されて走行風や冷却ファンで冷却します。

●エキスパンジョンバルブ

エキスパンジョンバルブは、コンデンサーから送られてきた高温高圧の液状冷媒を小さな孔から噴射して急速に膨張させることで低温低圧の霧状冷媒にします。

●エバポレーター

エバポレーターは、エキスパンジョンバルブによって低温低圧の霧状冷媒を、気化させて周辺の空気を冷却する熱交換器です。ブロアファンで車室内に送られる空気は、この気化熱によって冷却されます。

構造は、コンデンサーと同様に冷媒の通るチューブと放熱用フィンで構成されています。

●水が出るのは不具合ではない

エバポレーターを通過する空気は冷却されると、水分が除湿されて凝縮水になります。エアコン(冷房)をつけるとクルマの下に水がポタポタと落ちるのは、エバポレーターで発生する凝縮水が原因で、不具合ではありません。


真夏の冷房使用時には条件にも依りますが、燃費は10~20%程度は悪化します。実用燃費という点では、エンジンの改良よりもエアコンの改良の方が効果的かもしれません。

設定温度や外部導入/内気循環の適切な切り替えなどで、燃費悪化は意外と抑えられます。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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