■トヨタ・ライズ/ダイハツ・ロッキー、「自動ブレーキ」以外は誰にもオススメできる
最近「クルマを買おうとしても高くて手が届かない」という声をよく聞く。なるほど直近20年間の初任給をみると横ばい。一方、クルマの価格といえば確実に高くなっている。そんな状況を見てトヨタ/ダイハツは「クルマ好きに人気のあるSUVをリーズナブルな価格で作れたらお客さんに喜んで貰えるのでは?」と考えたそうだ。
今回紹介するトヨタ・ライズ/ダイハツ・ロッキー(多少外観が違うだけで中身は同じ兄弟車)はそんなバックボーンで作られた。なるほどお買い得感あります。例えばライズの『X”S”』というグレードを見ると、LEDヘッドライトやスマートキー、サイド&カーテンエアバッグなどフル装備で174万5千円。同じ装備内容の軽自動車と変わらない。
実車をチェックすると、ボディサイズや室内の広さ感など、軽自動車とは明らかに違う。軽自動車だとシートに座りドア閉めたら、左右方向でタイト。軽自動車の車幅、1480mm以内に決められているから仕方ない。だから後席だって2人定員と決められている。ライズの横幅は1690mmあり、クラウンのタクシーと同じ。
乗るとどうか? 搭載されているエンジンのスペックを調べると、1000ccの3気筒ターボで最高出力/トルクはそれぞれ98馬力/140Nmという数値。大ざっぱに言えばターボ無し1500ccエンジンをイメージして頂ければよかろう。それでいて車重970kgと軽いため、予想をはるかに上回る力強い走りをしてくれます。
2000回転も回っていれば交通の流れに軽く乗っていけるほど。それでいて実用燃費が良い。通勤に使うような適度に信号ある道を燃費全く気にしないで乗って15km/L程度。流れの良い郊外路だと20km/L近く走ってくれる。軽自動車のターボ車と同等くらいだと思う。このくらいの燃費なら無理してハイブリッド車を買わなくてもいい。
乗り心地は価格相応と言える。道路のデコボコを忠実に拾うため、16インチタイヤでも17インチタイヤでもゴツゴツするし、高額車だと評価の対象になるステアリングフィール(ハンドル切った時の質感)だってイマイチ。でも毎日乗っていれば慣れるレベルです。20年前の日本車と比べたらそんなに悪くないと思う。
今や必要な装備になったナビは、9万7900円のオプションで9インチの液晶が付く。スマートフォンとリンクさせることにより携帯端末のナビを使えばOK。もちろんメッセンジャーやポッドキャスト、ハンズフリー電話などスマートフォンのアプリなども使えるから嬉しい。オーディオだって選び放題。便利になったものです。
ライズ/ロッキーで唯一の「イマイチですね」が自動ブレーキ。対歩行者の事故の70%が夜間なのに、ダイハツのシステムは未だ夜間未対応。昼間の歩行者に対する停止性能もホンダや日産/三菱の軽自動車より劣るほど。停止車両を認識しての自動ブレーキも40km/h以上になったら停止出来ない(今や50km/h以上が普通)。
ダイハツの開発担当に聞くと「ライバルと同等レベルの自動ブレーキを開発中です。もう少し時間が掛かります」。洪水や崖崩れに遭遇する可能性を示すハザードマップの「危険地域」に建っている安くて大いに魅力的な不動産物件のようなもの。自動ブレーキがライバルと同じ性能になったら誰にでもすすめられるクルマになります。
(国沢光宏)