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■スポーツカーは保険が高くなるのか?
自動車保険は補償内容が同じでも、クルマによって保険料が変わります。スポーツカーに代表されるスペシャリティカーは保険料が高いイメージがありますが、実際はどのように区分されているのでしょうか。元自動車ディーラー営業マンが、自動車保険の車両料率クラスの謎を解説していきます。
●4つの区分を理解する
正式には「型式別料率クラス」といいますが、クルマの車種によって保険会社に与えるリスクが変わってくるので、それを細分化して数値化したもののことを指します。種別は「対人」「対物」「傷害」「車両」の4つに分けられており、それぞれに1~9の数字が割り振られます。数値が低いほど保険料が低い、つまり保険会社に与えるリスクが少なく、数値が高いほど保険料が上がっていきます。
●同一車種でも型式により違いがある
例えば、もはや国民車ともいえるトヨタ・プリウス(ZVW30)の場合、対人5・対物5・傷害5・車両5と、オール5の中間値となります。同じプリウスでも最新型(ZVW50)だと、対人4・対物5・傷害4・車両5と変化します。
この料率算定は、保険会社が過去に受けた保険請求の内容を精査し、全体的な傾向に対して、そのクルマがどの分野で多く保険請求をされているのか、また極端に請求件数が少ないのかを勘案し、算定されます。同じプリウスでも、新型の方が対人賠償と搭乗者傷害保険で支払った保険金額や件数が少なかったために、新型車の方が料率クラスが下がっているということになります。
●なぜスポーツカーは高いのか
スポーツカーやクーペモデルが一概に保険料が高いとは言い切れない部分がありますが、スポーツグレードやスポーツモデルにすることにより、料率クラスは高くなる傾向にあります。
例として、レクサスの2ドアクーペRCでは対人5・対物2・傷害4・車両5の料率クラスなのに対して、よりレーシーなRCFとなると対人5・対物3・傷害4・車両6に変化します。特に料率が高く計算される項目は車両の部分です。
スペシャリティカーであればあるほど、小さな傷やへこみなどを見つけた際に綺麗に修理するケースが多く、大切な愛車を大事にきれいに維持しようとする気持ちが保険会社への保険金請求を多くします。そのため、保険会社としても多くの掛け金をもらわないと立ち行かなくなってしまうため、料率クラスを上げざるを得なくなります。
そして自動車保険の保険料の内訳として、半額以上を占めるのが車両保険に対する保険料です。元々割合の大きい車両保険に対して、スペシャリティカーは車両保険付保金額が大きく、料率も高くなるため、全体としての保険料も高くなってしまうのです。
●料率の高いクルマは、こんなクルマ達
対人・対物・傷害の各項目に関しては、よほど日本全国で同一車種の人身事故が多発しない限り「9」という数字にはなりません。せいぜい高くて6~7までとなり、昨今広がっている自動ブレーキシステムや安全システムの普及、クルマの衝突安全性能の向上により、先の3項目に関しては料率が下がりつつあります。平均して4~5といったところでしょう。
対して、車両の料率は車種ごとに大きな開きがあります。最大料率9となっている現行の国産車はレクサス・LS(USF40)、LX(URJ201W)、トヨタ・ランドクルーザー(URJ202W)となり、輸入車だとアウディ・R8、フェラーリ・430スクーデリア、ポルシェ・911、メルセデスベンツ・SLK AMG、ランボルギーニ・ガヤルドなど、限られた車種です。
すべてがスポーツカーというわけではなく、スペシャリティカーといったほうが良いでしょう。フェラーリ・エンツォ、ランボルギーニ・アヴェンタドール、ロールスロイス・ファントム、ベントレーなどは料率8となっており、最大料率9というのは本当に稀なケースです。
●まとめ
単にスポーツカーの保険料が高い訳ではなく、そのクルマが事故を起こす確率が高く、車両保険設定額も高いという場合に、保険料率が高くなり、支払保険料が高くなっていくという仕組みです。料率が高い=事故が多いクルマという扱いになるので、保険料が気になるときには不人気車を選ぶと安くなります。
買い替え時に気になるクルマが複数あるときには、料率クラスの比較をしてみてもいいかもしれません。
(文:佐々木 亘)