【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判:番外編】新型クラウン登場。いま、歴代クラウンのデザインを振り返る!(13代目)

80〜90年代の日本車デザインを振り返る本シリーズ。今年6月、15代目のクラウンが登場したのを機に、番外編として歴代クラウンのデザインを振り返ります。

すべてにおいて原点に立ち返った先代「ゼロ・クラウン」のヒットを受け、基本を継承しつつ、ハイブリッドなど日本が先行する新技術を投下するにあたり、あらためて日本らしさを再検証したのが、2008年登場の13代目クラウンです。

高い空力性能を感じさせるウエッジ・シェイプは、先代を踏襲しつつさらに強化したもの。ただし、密度感の高かった先代に比べ「クリーンな表情」を狙ったボディは、全身柔らかな面で構成されるのが特徴です。

そのボディは、新しいデザインフィロソフィ「VIBRANT CLARITY(活き活き、明快)」が全面的に反映されたもの。ソフトイメージのボディの中に、「これは?」と思わせる形状が散りばめられているのがそれと分かります。

たとえば、先代に似ているようで掴みどころのない形状の前後ランプ。フロントフェイスやフード、リアピラーに施された抑揚や幾何学的なライン。そして、ひときわ強調されたフロントホイールアーチなど。

当時のカタログに日本の美しい風景写真が数多く載っているのは、「日本人の感性との調和」をコンセプトに掲げたためですが、こうした微妙なラインや抑揚は、もしかしたら日本独自の繊細さを表現したものなのかもしれません。

横基調のインパネと縦基調のセンタークラスターの組み合わせを特徴とするインテリアも、基本は先代を踏襲。ただし、インパネやドアの内張りなど細部に曲線が施されており、ボディとの共通点を感じます。

「VIBRANT CLARITY」は、その説明を聞くとあたかも学術的な着想で、極めて人工的に思えるもの。したがって、クルマへの応用は、まるで実車を使った実験のようです。

デザインにはコンセプトや意図が必要ですが、それは「理屈」とは少し違うのではないかと思えます。13代目クラウンはクリーンで繊細ですが、しかし、同時に妙に説明的な部分が見られるのが惜しいところです。

●主要諸元 クラウン 3.0ロイヤルサルーンG(6AT)
形式 DBA-GRS202
全長4870mm×全幅1795mm×全高1470mm
車両重量 1630kg
ホイールベース 2850mm
エンジン 2994cc V型6気筒DOHC
出力 256ps/6200rpm 32.0kg-m/3600rpm(ネット値)

(すぎもと たかよし)

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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