次期型GT-Rに求められる戦略とは? どうやって戦っていくべきなのか【ニッサンGT-R NISMO試乗・後編】

前編では、元某メーカーのシャシーエンジニアの端くれだった筆者が考える『GT-R NISMOの公道での楽しみ方』をご紹介しました。

今回の後編では、このGT-R NISMOの公道での楽しみ方を引き続きご紹介するのとともに、筆者の『次期型GT-Rに向けた願い』を、お伝えできればと思います。

【GT-R NISMOの楽しみ方③スイートゾーンにはまったときの「走る・曲がる・止まる」】

ワインディングで「自分のスキルの範囲内でコーナリングを楽しんでみよう!」と試みました。

GT-R NISMOの加速力は、まるで「ロケット花火が着火した瞬間」のよう。恐怖を感じる程の加速力で、筆者は、アクセルペダルは50%も踏むことができませんでした。この「恐怖」を感じる前に、「ドンッ」とブレーキを踏めば、思いのほか柔らかく減速Gが立ち上がり、スピードは落ちていきます。

そして、車速を落としつつ、コーナーに向けステアリングを切ってアプローチすれば、クルマは「ビタッ」とコーナー内側のラインに沿って、路面へ張り付くように曲がっていきます。

レーサーでもなく、超熟練のテストドライバーではない筆者であっても、一連のコーナリングの流れが、自身のスキルの範囲内で「スイートゾーン」にぴったりとはまると、なんと気持ちの良いことか。

もちろん「GT-R NISMO」ですから、アクセルやブレーキ、ステアリングの運転操作をラフに扱ってしまえば、クルマは手を付けられなくなってしまいますが、自らを律してドライビングをすれば、その「面白さ」は、公道であっても存分に感じることができます。

【GT-R NISMOの楽しみ方④「心地良い疲労」を全て受け入れる】

GT-R NISMOに乗ると、上記の様に心地よくなる反面、とてつもない「疲れ」を感じます。これはもはや、「筋力トレーニング」に近いものがあります。絶えず路面から受ける上下の振動や、左右方向に振られた際にシートから受ける「バシバシ」といった強めの「突っ込み」が常に乗員を襲います。

そのため、「公道を軽く流す」なんていう運転のように、長時間乗り続けることは少なくとも筆者にとっては体力的に難しく、たまに停車してクルマを眺めてはまたクルマに戻る、といったことをする必要がありました。

2014年のマイナーチェンジで音振対策が織り込まれ、改善されているようですが、それでもキャビンに侵入してくる大き目のロードノイズと特大のギアノイズは、「疲労」をさらに増大する要因のひとつとなっています。

これらを許容し、あたりに負けない「体力」を持ち合わせたオーナーこそが、この「プレミアム・スーパースポーツ」ことGT-R NISMOには似合うのかもしれません。

この記事の著者

Kenichi.Yoshikawa 近影

Kenichi.Yoshikawa

日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイラインやフーガ等のFR高級車の開発に従事。車の「本音と建前」を情報発信し、「自動車業界へ貢献していきたい」と考え、2016年に独立を決意。
現在は、車に関する「面白くて興味深い」記事作成や、「エンジニア視点での本音の車評価」の動画作成もこなしながら、モータージャーナリストへのキャリアを目指している。
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