東京モーターショー2017のテーマの一つに「EVシフト」が上げられます。
EVシフトが実現すると、自動車が家電のデジタルテレビと同じようにコモディティー化(汎用化)する可能性があると指摘されています。
現行のエンジン車では部品点数が3万点にも及び、長年の蓄積とノウハウがない新規参入メーカーでは既存の自動車メーカーを脅かす自動車を作ることは困難です。ところが、EVではエンジンを使わないので、部品点数が大幅に少なくなり、新規参入メーカーでもコモディティー化したEVを作ることが可能になるのです。
家電製品のテレビではコモディティー化で市場の大変化が起こりました。従来のブラウン管テレビでは、視聴に耐える画像を作るには長年の経験とノウハウが必要で、部品を買ってくるだけでは商品にはなりませんでした。ところが、デジタルテレビでは画像プロセッサーと液晶パネルを組み合せれば簡単に売り物になるデジタルテレビを作ることができるようになって、日本の大手電気メーカーは大打撃を受けたのです。
これと同じことがEVでも起こるかも知れません。自動車を発売していない大手家電メーカーのソニーがAI×ロボティクスを組み合せたEV 「 New Concept Cart(ニューコンセプトカート)SC-1」を試作開発したことを発表したのです。しかも、その発表日は、東京モーターショー2017のプレスデー(25日)前日の10月24日でした。
ソニーがEVに参入するなら、東京モーターショー2017で独自開発のEVを発表するのが普通のやりかたでしょう。ところが、ソニーは東京モーターショー直前に自社のHPでEV「SC-1」を発表し、既存の自動車業界に入らなくてもEVを作れますと宣言したようなものです。
発表されたソニーのEV「SC-1」は、ソニーが強みをもつイメージセンサーを車両前後左右に搭載して、車両の周囲360度全ての方向にフォーカスが合った映像を得ることができ、乗員が夜間でもヘッドライトなしに車両の周囲を視認できることが特徴です。
SC-1は乗員の操作で走行する通常運転モードと、クラウドを介して遠隔からの操作で走行する遠隔操縦モードを備えており、自動運転をめざした開発が進んでいることが想像できます。
今回のソニーの他にも、グーグルやアップルというIT会社がEVに手をつけており、さらには家電メーカーのダイソンまでがEVを開発しているという大手日刊紙の報道まであります。
このような他業種のEV参入に対して、既存の自動車メーカーがEVのコモディティー化を防ぐには、電池・モーター・制御といったEVの基幹要素で自動車メーカーならではの新技術を開発することが、自動車業界の垂直統合型ビジネスモデルを守るために必要になるでしょう。
(山内 博・画像:ソニー)