2020年にマツダは創立100周年を迎える。様々な名車が生まれてきたが、その歴史は“波乱万丈”の連続であり、何度も経営危機を迎えたのも事実だ。そんな時に、逆転満塁ホームラン級の大ヒット作が生まれてきた。ピンチの時こそチャンス……と言うわけである。
とは言え、企業として今後も継続していくには安定した経営基盤が必要である。そのため、マツダは全てをゼロから見直し、理想のクルマ作りを行なった。それがスカイアクティブテクノロジーであり、6世代商品群と呼ばれるモデルたちである。
では、次世代に向けてマツダはどのように進化していくのか? 昨今、自動車業界のトレンドは“電動化”である。ディーゼルゲート問題や自動車メーカーの燃費不正行為の問題から、これまでディーゼル推しだった欧州メーカー勢がこぞってEVへの移行をアピールしている。フランスとイギリスは2040年以降ガソリン/ディーゼル車の販売を終結させる方針を固めたと発表するなど、「自動車が大きく変わる」と言う報道も良く目にする。
ただ、今から20年ちょっとで「オール電化」になるとは到底思えない。もちろん「内燃機関+電動化技術」の割合が増えてくるのは間違いないが、内燃機関自動車は将来においても世界的に大多数を占める(2035年に全体の84.4%程度)と予想されており、今後も進化させる必要があるのだ。だから、マツダは内燃機関の理想の追求にこだわるのだ。
更に地球環境を考える時に「CO2削減」は重要な要素となるが、これまでは車両単体の「TANK-TO-WHEEL」だったのに対し、最近は燃料採掘から車両走行までの「WELL-TO-WHEEL」で語られるようになっている。
ちなみに「WELL-TO-WHEEL」でEVとSKYACTIV車で実用走行時のCO2を比較してみると、EVは128kg/km(平均発電方法で算出)に対して、SKYACTIV車は142kg/km。つまり、SKYACTIV車の実用燃費を約10%改善できればEVに追いつけるのだ。
更にEVの個別発電方法で見てみると、石炭発電は200g/km、石油は156g/km、LNGは100g/kmで、すでに石炭、石油に比べればSKYACTIV車が勝っている状況で、実用燃費を約30%を改善すればLNG発電にも追いつく。つまり、マツダは「全ての火力発電がなくなるまでEVは不要」と考え、「内燃機関と大都市は共存可能」であると言うのだ。
それを実現させるには「理想の燃焼」が不可欠である。すでにマツダは世界一の高圧縮比14.0を実現したガソリンエンジン「スカイアクティブG」と世界一の低圧縮比14.0を実現したディーゼルエンジン「スカイアクティブD」を市場投入しているが、これはマツダの考える理想の燃焼に向けたロードマップの途中に過ぎないのだ。
その一つがガソリンと空気の混合気をディーゼルのようにピストンの圧縮によって自己着火させる圧縮着火(Conpression Ignition)エンジンである。これまで世界の自動車メーカーで開発が進められてきているが、まだ実用化レベルには辿りついていない。マツダはロータリーエンジンに続き、そんな“夢のエンジン”の実用化に成功したと発表。その名は「スカイアクティブX」と呼ばれる。
(山本シンヤ)