ファンのかたはご存じだと思いますが、国内最高峰のドリフト競技D1グランプリは、半分くらい機械が審査してるんです。機械が「計測」してるだけじゃないんですよ。機械が「採点」してるんです。
ドリフトはほぼ100%審査で優劣がつけられる競技です。この手のスポーツは昔から難しいんですよね。人間だと審査にブレがあったり、あるいは贔屓があるのではないかと疑われたり、そもそも審査員としての力量が十分なのかという問題もある。そのなかで、特に公正さを担保するために、機械が審査するというシステムは有効なわけです。
D1GPでは、もう何年も前に独自にDOSS(ドス)というシステムを開発し、GPSや角速度センサーを使って、振り出しのするどさ、速度、ドリフト中の角度の安定性(振られていないかどうか)、ドリフト中の角度の大きさ、振り返しのするどさなどを割り出し、独自のアルゴリズムによって機械が自動的に採点することができるようにしました。
じつは私はこのDOSSの導入には、当初は反対でした。理由は、見た目にカッコいい走りとDOSSで高得点がとれる走りがズレるのではないか? DOSSのアルゴリズムが非公開なので点数操作をしてもわからないじゃないか? といったものでした。
じっさいに導入されて数年が経過した現在どうかというと、意外と慣れてしまって、見た目がカッコいい走りに高得点がつかなくても「ああ、なにかの要素がDOSSには評価されないんだな」と割り切って納得できています。参加者もそんな傾向があるように思います。逆に、DOSSで高得点が出た走りというのは、やっぱりたいていはカッコいいので、それはそれで納得がいくケースが多いです。また、点数操作の疑いもいまのところはかけられていないようです。ただ、たまに機械の不具合で計測ができないことがあって、その場合は再走行になります。そうするとその選手はほかの選手よりもタイヤをよけいに消耗させることになるので不利になり、気の毒です。
でも、あらためて考えてみると、やっぱり『カッコよさ』と『高得点が出る走り』のズレに多少ストレスを感じる場面はありますね。7月21、22日に開催されたD1GP第4戦でも、見た目にはあまり気にならない区間の角度の不足や、姿勢の不安定さの減点がDOSSの採点に大きく反映されていて、「えー、そこでそんなに減点しなくてもよくない?」と感じる場面もありました。
とはいえ、現在はエントラントから審査の公正さについて疑問が出なくなりました(昔はよく出てました)。これは大きな成果だと思います。DOSSもまだ改良の余地はあるし、IoT技術の進化などによって、この手の機械審査システムはもっと優れたものになるでしょう。いずれはAIが導入されて、AIが審査したりするようになるのかなぁ、なんて思ったりもします。