大雨で冠水した道路を走る方法とは?

〈MondayTalk星島浩/自伝的爺ぃの独り言42〉  昨2012年は随分、豪雨被害があった。梅雨時季は九州で豪雨が続いたし、秋というより冬に近づいて北陸や東北、北海道でも被害が伝えられた。各地で山が崩れ、堤防が決壊。1mも冠水した店内を片付ける様子や、水深10cm以上あろう市内を徐行する自動車など連日TVが報じていた。折しも梅雨季が近づく。

 

 TVを観て思い出したのが、都内は江東ゼロメートル地帯だ。

 私は24歳で江東区大島に移住。居室は3階なので心配しなかったが、なるほどゼロメートル地帯。多いときは年、数回も店舗、住宅が水に浸かり、錦糸町、亀戸付近の千葉街道が1mも冠水した。

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 名が示す、どだい運河を含む川の水位が道路より高く、四六時中、各所に設けたポンプが道路や居住地への浸水を防いでいるものの、大雨が続くと排水が間に合わず、しだいに冠水面が広がってくる。

 

 危険が近づくと警報が鳴る。玄関口に土のうを積むなど対策を講じるほか、2階建てなら大事な物を1階に置かないと決めた家が多く、若い衆がお年寄りの住まいを回って、畳を押し入れの上段に移すシーンも見かけた。町会役員宅の軒下には小舟が吊ってある。

 警報が鳴ると自動車やバイクを少しでも高い場所に移動させなきゃならない。昼間はもちろん夜でも放っておいたら大変だ。実際、千葉街道に放置された乗用車が、夜半の大雨でベルトラインまで水没。ちょいちょい新聞ダネになっていた。

 

 困るのは移動中だ。私は中古ルノー4CVで都心まで通勤。降雨は分かるが、ラジオの警報を聞き逃すと大変。帰路、隅田川を渡り、江東区に入ると道路冠水が始まっている。そこから家まで5分か10分なのだが、走れるかどうか? ダメなら引き返さねばならない。

 

 目安は都バス。水深40㎝未満なら運行すると決められていた。今のノンステップバスだとどうかしら? バスが見あたらない場合は歩道の電話ボックスで見当を付ける。当時は公衆電話で連絡する人が多く、足首まで浸かる程度なら大丈夫と判断した。

 

 よし、と決まれば走って帰る。通行は道路中央維持。およそ交通量は少ないし、対向車が大きくて地上高の高いトラックやバスだと気遣って中央を譲ってくれる。路肩に近づくのは厳禁。今はロックしてあるようだが、冠水が進むと、あちこちマンホールの蓋が一斉に跳ね上がってしまう—-パスカルの原理だなんて、笑ってる場合じゃない。

 

 マフラー排気口に水が入らない深さなら普通に徐行して大丈夫たが、水深20㎝となると厳重注意。アクセルペダルから足を放した途端、エンストして再始動できず。減速や停止はクラッチ・コントロール。間違ってもブレーキを踏んではいけない。どっちみち、効きっこない。

 

 3速MTは①速保持。4速MTだと②速も可。いずれにせよ、エンジン回転を高めに保つ。ATは現場を経験していないが、Lレンジ固定だろう。減速・停止はNレンジかしら。この場合も、アクセルを緩めるとエンストしてしまうはず。ガスを食うから燃料タンク残量にも要注意だ。

 

 中古ルノーは水深20㎝に近づくと、容赦なく室内に水が入ってくる。靴を脱ぐわけにもいかず。そのまま走行を続けるほかない。

 

 水はエンジンルーム内にも浸入する。平素から留意すべきは、ディストリビューターに水が掛かって電気火花を失うこと。ビニール布を用いてディストリビューターを防水カバーし、点火プラグの根元や電線に水が掛からないよう手当しておいた。今のクルマなら大丈夫か。

 

 ついでながら、ディストリビューター防水手当は、後の欧州ドライブでも役立った。冬期、凍結防止で撒く塩が、水分を招いて、点火能力を落とすと聞いていたもの。当時の日本車は対策不十分だった。

 

 冠水道路を走った後は整備と清掃が重要。

 まずはサービス工場かガソリンスタンドへ。走り出したらブレーキを頻繁に踏んで乾かす。ディスクブレーキは楽だろうが、ドラム式だと水分が飛ぶまでに時間がかかる。メインテナンスフリーじゃない往事はグリースアップが欠かせず。ついでに車体裏側を綺麗にし、ドレーンプラグ付近を清掃しておく。むろんカーペット干しも—-。

 

 幸い江東ゼロメートル地帯はポンプ能力増強で50年前のような冠水被害がなくなった。むしろ都心近くで、ときに増水が伝えられる。

 現在はクルマが良くなっているので、今回の記述は単なる懐旧談かもしれない。杞憂であることを願いつつ、筆を擱く。

 

 でも、浸水に限らず。マフラー出口付近を雪が覆うのも危ない。毎冬、北海道で、雪に埋まったクルマの中での死亡事故が報じられる。

 

 雪が深くなり、立ち往生したら、携帯電話で助けを求めつつ、車内で待つほかないが、やがて吹きだまりになる。暖房は働くものの、しだいにCO排出量が増え、一酸化炭素中毒を発症して亡くなるケースが少なくない。こまめに排気口付近を除雪する必要があるのだが、難しいのかなァ。

 

五月晴れが終わると梅雨季。朝晩、霧が視界を悪くするのもイヤだねェ。★