働くクルマの中でもなかなかお目にかかる事の出来ないクルマが軌陸車。
軌陸車とは、線路と道路、両方走れるクルマの事で、鉄道の保線作業などに使われる車両のことです。
イベントなどで展示されていたり電車に乗っている時に線路の片隅にいたりする事はあっても、動いている姿にはなかなかお目に掛かれません。
そんな珍しい軌陸車の中でも軽トラックをベースにしたもの、というよりアタッチメントを装着して線路上を走れるようにしたものがレールランナー。
一般的に軌陸車の多くは2tトラックやダンプなどをベースにしたものが多いのですが、油圧で格納してある軌道用の車輪を降ろして走行する仕組みが基本で、その装置の重量からも軽自動車クラスでは実現ができなかったようです。
レールランナーは、軽自動車に軌陸装置を装着せず起動走行用の台車を荷台に積載し、軌道走行時はその台車の上に載せて走行する仕組みで、構造もいたって簡素に出来ています。
軌道への搭載から撤収まで、いとも簡単にできてしまいます。
軌陸車は一般的には道路を走行するより軌道を走行する場合の方が速度が遅いとされていますが、軌陸車の中でも道路を走行するより軌道を走行する場合の方が速い物もあります。
それは軌陸パワーショベル。
道路上ではキャタピラでの走行になるので、街中で見かけるパワーショベルのイメージよりも速い速度で移動しています。しかも、一般的な軌陸車は電車と違い運転席が一方にしかないため、片道はバックで走行するか、いったん軌道から降ろし方向転換する必要がありますが、パワーショベルであれば旋回していとも簡単に運転席の方向を変えることが出来ます。
他にも珍しい物では10t車をベースとした大型軌陸車。
レールなどの重量物を運搬する際に使用されるそうです。
これらの車両は終電後に保線作業をする時などに使われる事が多いため、運転風景を見られることは少ないですが、鉄道のメンテナンスや新設工事等には欠かせないクルマと言えるでしょう。
日夜滞りなく安全に鉄道が走っているのはこういった車両を使った保線作業のおかげであり、他の特殊車両同様、縁の下の力持ち的な存在です。
働くクルマの中でもパトカーや消防車が花形とすれば軌陸車は地味な部類ですが、鉄道しか使わない人でも間接的にお世話になっているクルマといえるかもしれません。
(井元 貴幸)