上海ショーのコンセプトカーの目玉のひとつとなるのが、このメルセデス・ベンツのコンセプトAクラスでしょう。これまでのAクラスからしたらまったく異なるモデルで、アジア専用モデル? と思ってしまいますが、どうもそうではないのかもしれません。
これらの上級でコンパクトなモデルは、BMW1シリーズやアウディのA1などが登場していますが、その引き金はやはり復活したMINIの登場にあったでしょう。それまではコンパクト=実用と考えられていたのですが、そうではないスペシャルティの価値が認められたのです。そうした傾向をいち早く察知した同じ家元のBMWが1シリーズを投入。独自の世界を作っていきました。
え? 「独自」? いやごく普通でしょう、そうですね。プレミアムなコンパクトは欧州にとっては独自なのですが、BMWというラインにとってはこれまでのBMWらしさを強化するにあたって、何ら不思議ではないモデルとなることが実は重要なことだったのです。
対するメルセデスはどうか? 当初のAクラス投入時は、プレミアムカー・メーカーからフルラインナップの大自動車メーカーを目指していたメルセデスにとっては、このカテゴリーはVWやフィアットのコンパクトを凌駕するようなコンセプトでなければならなかったのです。 その結果、現在ではCクラスだけでは太刀打ちできない、プレミアム・コンパクトというカテゴリーがぽっかりと空いた状態になってしまったのです。ここにはアウディだってどんどん入ってきます。
そこでコンセプトを変え新たに登場したのがAクラスでしょう。ロングノーズのダイナミズムを重視したフォルムですが、4気筒の2リッタークラスエンジンを新設計し、横置きで搭載されるFFです。
しかし、それはこれだけでは終わりません。このコンセプトチェンジが意味するものは、これまでのAクラスの発展をも意味しているはずです。というのもAクラスの全高が当初から高かったのは、フロアを2階建てとすることで、新しいパワートレインにも対応することを狙ったものでした。そうですEVなんかのバッテリーを床下に配置するにもうってつけなのです。
つまりメルセデスとして、本格的にEVをはじめとするニューモビリティ量産モデルのプログラムが進行していることを示しているのではないでしょうか? このコンセプトAクラスの登場によって、EVなどのモデルはまったく異なるラインとなり、内燃機関モデルとは異なるパッケージで登場する、ということを示唆しているように思えてならないですね。
(MATSUNAGA, Hironobu)