目次
■興味津々・エクストレイルのそこかしこ
リアル試乗・エクストレイルの第14回めは、その他の興味深い部分や整備性について見ていきます。
●その他
・パノラミックガラスルーフ(電動チルト&スライド、電動格納式シェード付)
これまで写真や文章でチラ見せチラ読ませしてきたのでご承知でしょうが、試乗車にはガラスサンルーフがついていました。正式名称「パノラミックガラスルーフ(電動チルト&スライド、電動格納式シェード付)」。
前後に分割されていて、前半分のみ一般のサンルーフ同様、前後スライド&チルトアップします。
まるまる1枚ガラスで仕立てた代わりにスライドもチルトもしないやつがありますが、室内は明るくなっても開かなきゃ魅力半減。真ん中に分割線があっても開くほうがいいというものです。
ましてやエクストレイルのサンルーフは、前後長はおろか幅とてかつてのサンルーフの比ではなく、「パノラマ」の名称に偽りはありません。
前回紹介したCX-60のガラスルーフは外側にせり出すアウタースライド式だったのに対し、こちらは後半ガラスの下にすべり込むインナースライド式。その違いか、CX-60では165mmにとどまっていたスライド量が、エクストレイルでは390mmとなっており、ここでも「パノラマ」の名が活きています。
スイッチは天井に2つあり、右のシェードスイッチの手前引きでシェードが後ろに半分開き、再度操作で全開、前方押しやりで半分まで閉じ、ふたたび前押しすると全閉。ガラスパネル開閉は左のガラススイッチで行い、手前引きでオープンして途中一旦停止(「コンフォートモード」)、再度操作でスライド全開。閉じ操作は前方押しで一挙全閉。
同じスイッチを押しこむ(上に)とチルトアップし、スイッチ前方スライドでチルトダウン。
「コンフォートモード」は、ガラスを全開して風切り音が大きくなる場合に使います。とはいえ、筆者が高速道路の100km/hで試したところ、コンフォートモードでも全開でも差はありませんでした。風向きによって効果の有無があるのだと思います。
パノラマガラスルーフの寸法とスライド量、チルト量は写真に入れたとおり。
残念なのは、いちばん高いG/G e-4ORCEだけの工場オプションなのと、値段が18万1500円と安くはないことです。もうちょい安いといい。
もうひとつの残念は、相変わらずエンジンOFF後には動かないことで、OFF後の閉め忘れ対策のパワーウインドウタイマーをこちらにもつなげてくれりゃあいいものを、エンジンOFFにするとこちらは電気が途絶えます。トヨタ車のサンルーフは昔からタイマーがついているよ。利便性向上のためにぜひタイマーを。
疑似的にオープン気分が味わえる、換気に便利というだけではなく、晴れの日はもちろん、雨の日でもシェードを開ければ車内は明るく、夜は夜で、星や街の光を頭上に受けながらナイトドライブを楽しむことができる・・・そんな魅力がこのパノラミックルーフには詰まっており、筆者がエクストレイルを買うとしたら絶対に選びます。
・アンビエントライトと各種スイッチ照明
最上級G/G e-4ORCEに限り、フロントセンタートレイ内周(というよりもUの字)、電制シフトノブ周囲、前ドアトリムの3か所がライン発光します。明るさはメーターのカスタム画面で調整可能。
トレイは上部からの照明がないので置いたものを照らすようにはなっていないのが不便でしたが、X/X e-4ORCEは上部から光が灯るようになっています。
「トータルコーディネート室内照明」と銘打ち、1991年のY31セドリック/グロリアで室内21か所もの照明を商品力のひとつに掲げた日産の作品にしては他社でも見かけるような仕上がり。淡黄色の電球によるほのかな間接照明で、高級ホテル客室のような雰囲気を醸し出していたY31のような情緒はありません。
ライン発光のほか、足元やピラーまわりを間接照明すればいいと思いますが、エクストレイルには合わないか。
室内各所のスイッチ類は照明が施されており、夜間の操作には何の支障もありません。
・後輪ホイールハウスのカバー材
初めて見かけた、後輪ホイールハウス内側の「おっ!」。
ホイールハウス内部の裏舞台を覆うトリム材はプラスチックが通例ですが、エクストレイルの場合は、後輪だけですがフェルト状の部材になっていました。
おそらくは静粛性向上のためと思われますが、そこまでやるかと思った次第。
雨水や泥、雪が付着したらどうなるかの確認はできませんでしたが、そんなことは先刻承知で、おそらく表面は撥水加工ぐらい施されているでしょう。
なお、前輪はプラスチック製によるオーソドックスな造りでした。
●整備性
・エンジンルーム
整備性だのエンジンルームだのといっても、現代のクルマのこと、カバーで覆われているのと、カバーを開いたところでユーザーができるのはせいぜいウォッシャー液の補充くらいで、何かの作業をDIYレベルでできるようなものではないし、自前でやろうとするひともいまは少ないでしょう。
・工具入れ
・・・といっても、最近のクルマの例に則り、エクストレイルもスペアタイヤばかりか、パンタグラフのジャッキすらありません。ジャッキ(とハンドル兼ホイールナットレンチ、ハンドルレバーも)は販社オプション。
まるで突き放されたようですがそうでもなく、必要派が買った際のジャッキ一式収容場所は、荷室左の内壁に用意されています。試乗車には積載されていなかったので、ふたを開いても中は夜逃げの後みたいに空っぽになっています。
・タイヤ応急修理キット
ではパンクのときはどうするか。タイヤ応急修理キットの登場です。一般に「パンク修理キット」とも呼ばれるもので、ボードを上げると、「ストレージ編」で紹介したラゲッジアンダースペース向こうの工具一式の中に収められています。
ところで筆者は、スペアタイヤは必須だと思っており、パンク修理キットへの置き換えに疑問を抱いている者です。
タイヤパンク確率が低くなり、結局はスペアタイヤを使わないまま廃車になるので省資源に背く、無駄な重量増&燃費増加になるという話がありますが、パンクに遭ったときのキットでの応急処置は、コンプレッサーを12Vソケットに差し込む、修理剤ボトルをコンプレッサーにセットしてホースをパンクタイヤのバルブに接続し、電源を入れて10分ほどを目途に昇圧させる。これで終わりならいいのですが、数分間または数キロ確認走行し、またクルマから降りて圧が保たれているかどうかで初めて作業完了となる。対して、スペアタイヤの場合は、スペアタイヤの空気圧が保たれてさえいれば、うまいひとなら5~7分で作業完了、ひとまずの難逃れの確実性は、修理剤の比ではありません。要するに、修理キットのほうが作業工程と時間がかかる割に確実性が低いと思うのです。
また、修理キットの使用期限は数年で、使わなくても交換が必要になります。この点はスペアタイヤと同じどころか、クルマを10年使う間に2度3度交換する可能性があるわけで、これはこれで無駄になります。先々も売れることが約束されているようなものだから、キットメーカーもきっとウハウハでしょう。軽いのは認めるものの、やみくもにスペアタイヤを悪者視できるほど修理キットが優れているとは思えません。
だいたい、パンクの率が下がったから問題ないといいますが、それが仮に1%だとして、そんなことをいっていいのは売る側か、クルマをひとりで100台持っている金持ちだけです。
本田宗一郎風にいうなら、100台のうちの1台がパンクしたら確かに1%ですが、ドライバーは絶対にひとり1台しか運転できないわけで、出先でパンクに遭った1台のクルマ&ドライバーにとっては100%のパンク率&災難です。100台持ちのひとはうちに帰って他の99台を使えばよろしい。でも帰るまではどうする?
スペアタイヤのパンク修理剤への置き換えとパンク率低下は関係ないよ。
・アクティブノイズコントロール
ここは整備性の項ですが、トランクのボードをめくったついでに(といっちゃあ何ですが)アクティブノイズコントロールの話をしましょうか。
ラゲッジアンダースペースのボードを上げたさらにアンダーはごらんのようになっています。以前ならスペアタイヤがあった場所ですが、スペアタイヤレスで得たマージンスペースを、バッテリーと黒い箱を置く場所に使っています。
この黒い箱はウーファーで、前席アシストグリップ後方と後席中央上3か所のマイクで拾った、車内のこもり音とは逆位相の打ち消し音をフロントドアスピーカーとこのウーファーから出し、見かけ上・・・じゃなくて聞きかけ上のこもり音を消す原理。
第2回で書いたとおり、アクティブノイズコントロール技術は日産自動車が1991年のU13ブルーバードで、自動車用として世界初で実用化したもの。もともとはコンサートホールの空調吹き出しの音消しに使われた前例があり、他にはたしか冷蔵庫にも起用例があったんじゃなかったっけ。
U12では最上級「ハードトップ2000ARX-Z」のみへの標準装備でしたが、30年以上経った4代めエクストレイルでは全機種に与えられています。
・給油口
給油口はキャップレスで、燃料ノズルをぶっ挿して給油するタイプ。ノズルの先っちょで、けっこうな力で押し込まないと差し込まれません。ガソリンを扱うのでそれくらいであって当然なのですが、納車して最初のセルフスタンドで戸惑うことのないように触れた次第。
給油スタートも終了もただ抜き差しするだけなのが、セルフスタンド常用の筆者としては使いやすいものでした。
なお、給油口はリヤサイド右に設置されています。
・フロントワイパー
ワイパーは、少なくとも車内からはほとんど完全に近いほど見えず、視界はすっきりしています。いっぽう、外から見ればまる出しで、撥ねて掬った(すくった)ひとの身体がワイパーやワイパーピボット(回転中心)を直撃したときに痛がらなきゃいいがなと思いますが、ハナっからまる出しになっているぶん、ブレードゴム交換の際はそのままワイパーを起こすことができます。したがって、起こすとフードに引っ掛かるために必要なメンテナンスポジションは、このクルマには用意されていません。
CX-60やステップワゴンで紹介したのと同様、ウォッシャーノズルはワイパーブレード側に設置されており、片側4点から噴射されます。
払拭範囲は写真のとおりですので参考にしてください。
・リヤワイパー
支点ごとガラスに据え付けられるタイプなので、半円型に拭ってくれるのがありがたい。
ガラスのタテヨコ比によるのでしょうが、支点がバックドア型にあり、アームがくの字になり、払拭形状が中途半端に切ったバームクーヘンみたいになるやつは何となく視界が悪いような気がして好みません。
今回はここまで。
さて、しおりさんとのユーティリティ編用写真および夜間撮影の帰り道、信号待ちをしながら隣の右折車線をぼんやり眺めていたら、某ドイツ製の、前後に三ツ矢サイダーのマークみたいなエンブレムを掲げた大きなSUVがぴたっと止まりました。
「これで乗っているのがさんまだったらおもしれえな。」と思ってふと見上げたら、左ハンドルの運転席に乗っていたのは、本当に明石家さんまだったのにはぶったまげました。
筆者が芸能人を見かけたのは、だいぶ前の2006年頃、早稲田通り沿いで高木ブーを見かけて以来。
しおりさんと、「おー、さんまだった、さんまだった。」と、車中で大はしゃぎしながら帰りましたとさ。
話は次回も続きます。さんまの話じゃなく、エクストレイルの話・・・
「カスタマイズ編」でまた。
(文:山口尚志 モデル:星沢しおり 写真:山口尚志/モーターファン・アーカイブ)
【試乗車主要諸元】
■日産エクストレイル G e-4ORCE アクセサリー装着車〔6AA-SNT33型・2022(令和4)年7月型・4WD・ステルスグレー&スーパーブラック2トーン/ブラック内装〕
★メーカーオプション(税込み)
・アダプティブLEDヘッドライトシステム(オートレベライザー付):3万3000円
・クリアビューパッケージ(リヤLEDフォグランプ):2万7500円
・BOSE Premium Sound System(9スピーカー):13万2000円
・ステルスグレー/スーパーブラック 特別塗装色:7万7000円
・ルーフレール+パノラミックガラスルーフ(電動チルト&スライド、電動格納式シェード付):18万1500円
★販社オプション(税込み)
・グリルイルミネーション(インテリジェント アラウンドビューモニター付車用):6万3840円
・日産オリジナルドライブレコーダー(フロント+リヤ):8万6302円
・ウインドウ撥水 12ヶ月(フロントガラス+フロントドアガラス撥水処理):1万1935円
・ラゲッジトレイ:1万7800円
・デュアルカーペット:3万9800円
・滑り防止マット:1980円
・アドベンチャーズパッケージ(リモコンオートバックドア・インテリジェント アラウンドビューモニター付車用):16万3118円(セット内容:フロントアンダーカバー、リヤアンダーカバー、フロントバンパーフィニッシャー(ブラック))
・フードディフレクター:2万9800円
●全長×全幅×全高:4660×1840×1720mm ●ホイールベース:2705mm ●トレッド 前/後:1585/1590mm ●最低地上高:185mm ●車両重量:1880kg ●乗車定員:5名 ●最小回転半径:5.4m ●タイヤサイズ:235/60R18 ●エンジン:KR15DDT型(水冷直列3気筒DOHC) ●総排気量:1497cc ●圧縮比:8.0-14.0 ●最高出力:144ps/2400-4000rpm ●最大トルク:25.5kgm/2400~4000rpm ●燃料供給装置:ニッサンDi ●燃料タンク容量:55L(無鉛レギュラー) ●モーター型式(フロント):BM46 ●種類:交流同期電動機 ●最高出力:204ps/4501-7422rpm ●最大トルク:33.7kgm/0-3505rpm ●動力用電池(個数/容量):リチウムイオン電池(-/-) ●モーター型式(リヤ):MM48 ●種類:交流同期電動機 ●最高出力:136ps/4897-9504rpm ●最大トルク:19.9kgm/0-4897rpm ●動力用電池(個数/容量):リチウムイオン電池(-/-) ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):18.3/16.1/19.9/18.4km/L ●JC08燃料消費率:-km/L ●サスペンション 前/後:ストラット式/マルチリンク式 ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク ●車両本体価格:478万8700円(消費税込み・除くメーカーオプション)