■きれいな水を供給するだけでなく、地域に経済効果ももたらす
ヤマハ発動機は、「水が変われば、暮らしが変わる」という想いのもと、ヤマハクリーンウォーターシステムを新興国などに設置しています。同システムは、「緩速ろ過」という自然界の水浄化の仕組みが応用されたコンパクトな浄水装置。
大きな電力や特別な薬品などが不要で、住民だけで管理、運営が可能なことから、水道設備のない新興国や途上国の小さな集落などで有効とされています。2024年1月現在、東南アジアやアフリカに50基が設置されていて、日常生活にきれいな水をもたらしています。
今回のニュースレターの舞台は、インドネシアの小さな村(プルワカルタ県チカドゥ村)。その一角に約10年前、ヤマハクリーンウォーターシステムが設置されました。
前村長のアセプ・スクマさんは、「この装置が村に来るまで、住民たちはろ過もせず、地下水をそのまま飲んでいました。そのため、下痢などの健康被害が頻繁に起こっていました」と、設置以前の様子を振り返ります。
この10年で改善されたのは、衛生面だけではないそうです。スクマさんらは、同システムの管理、運営を行うチカドゥ村水委員会を組織し、設備のメンテナンスを行うとともに、近隣集落にきれいな水を販売するビジネスも展開しています。
「1ガロンのボトルを毎日100本販売して、約4000円の売上です。これを設備の修繕費に充てるとともに、販売先へ水を運ぶ運転手の現金収入にもつながっています」と、経済効果ももたらしていることを明かしています。
2023年末に、ヤマハ発動機の海外市場開拓事業部の若手メンバーがこの村を訪れ、安心な水の重要性を子どもたちに伝えるため、学校を訪問して紙芝居と寸劇による啓発活動などを行いました。なお、「電気を使わず、言語にも頼らない現地環境に即したプログラム」として、2020年に環境省グッドライフアワードで実行委員会特別賞も受賞している啓蒙活動です。
現地を訪れたメンバーには、かつてヤマハ発動機ジュビロ(現・静岡ブルーレヴズ)で活躍した元ラグビー選手の廣川翔也さんと和田源太さんも含まれています。
子どもたちと一緒にラグビーやバドミントン、サッカーなどで汗を流し、「スポーツと水は親和性が高いです。身体を動かした後にゴクゴク流し込むおいしい水を通じて、水の安全性や健康について理解を深めてほしいです」と廣川さん。
和田さんも「ラグビーに触れるは初めてのはずなのに、子どもたちは予想以上に楽しんでくれてこちらが元気になりました」と同活動の手応えを得たそうです。
今回、訪問した集落でも、約10年間、同システムが公共の大切な資産として運用、管理されていることを確認できたことになります。
また、今回の学校訪問で何度も子どもたちに「Changing Water Changes Life」という言葉を伝えたそう。不衛生な水を飲み、健康被害が出ることに慣れてしまうことが最も問題であるため、幼い時からきれいな水は安心であると伝える重要性を改めて実感したそうです。
クリーンウォーターシステムによるきれいな水が将来の子どもたちの明るい未来に繋がることを願い、今後も啓発活動が世界中で行われます。
(塚田勝弘)