■線区毎に異なる仕様の車両を投入
神奈川県の京浜工業地帯を走る通勤路線・鶴見線で、新型通勤車両E131系1000番代の試運転が始まっています。
E131系は2021年3月13日に千葉県の房総・鹿島地区で0番代・80番代がデビュー、同年11月18日には神奈川県の相模線に500番代・580番代を導入し、翌2022年3月12日から栃木県の宇都宮線・日光線にも600番代・680番代を導入しました。
E131系は導入した路線に合わせて仕様がそれぞれ異なっています。では、E131系とは一体どんな電車なのでしょうか。
E131系は電動車1両で走行することができる1M方式を基本として、T車(付随車)と組み合わせた2両(1M1T)・3両(2M1T)・4両編成(2M2T)が設定されています。さらに、使用線区によっては複数の編成を連結することも可能となっています。
車体はステンレス製で片側4ドアを配置。運転室はクラッシャブルゾーンを設けているため広くなっています。
また、ワンマン運転に対応していて、車体側面には監視カメラを設置していて、運転台のモニタで監視することができます。
客室内には17インチの車内案内装置を設置し、多言語で案内。全車両に優先席とフリースペースを設置しているほか、ホームとの段差を縮小してバリアフリー対策を充実。車内防犯カメラの設置や非常通話装置の増設によりセキュリティ面も強化しました。
E131系には線路設備モニタリング装置を搭載した車両があり、床下機器の一部を車内に設置。区分番代をプラス80として区別しています。
E131系最初のバリエーションは、房総・鹿島地区用の0番代・80番代。2021年3月13日から営業運転を開始し、現在は外房線・上総一ノ宮〜安房鴨川間、内房線・木更津〜安房鴨川間、成田線・成田〜香取間、鹿島線・香取〜鹿島神宮間で運用しています。
E131系0番代・80番代は2両編成。最大で3編成を連結した6両編成で運用することが可能で、前面には貫通幌を装備。また、分割・併合を容易にできるよう電気連結器を備えています。
房総地区では比較的長距離を走る運用があるので、客室にはボックスシート(クロスシート)2組とロングシートを配置したセミクロスシートとしています。
また、千葉駅側の先頭車に大型洋式トイレを設置しています。
2021年11月18日に相模線に500番代・580番代を導入しました。こちらは4両編成で、複数の編成を連結する運用がないので貫通幌と電気連結器は省略しています。
客室設備は房総・鹿島地区用の車両と異なりオールロングシートとなっていて、トイレも設置していません。
2022年3月12日には宇都宮線小山〜黒磯間および日光線で運用する600番代・680番代が登場しました。600番代・680番代は3両編成。営業運転では2編成連結した6両編成での運用もあるので、貫通幌と電気連結器を備えています。
客室設備は500番代・580番代と同様のオールロングシート。ただし小山駅・日光駅側に大型洋式トイレを備えています。
寒冷地対策としてドアレールヒーターと霜取り用パンタグラフ、スノープラウを装備。日光線の急勾配での空転対策としてセラミック噴射装置も搭載しています。
今冬デビューする鶴見線用1000番代は、オールロングシートの3両編成で、トイレはありません。まだ姿を現していませんが、線路設備モニタリング装置搭載の1080番代もそのうち登場すると思われます。
E131系1000番代が他のE131系と異なるのは車体幅と断面形状です。E131系の車体は2950mmのワイドボディが標準で、裾を絞っています。しかし鶴見線は、カーブにホームが設置されている駅が多いので、幅を2778mmと狭くして裾絞りのないストレート車体を採用しました。
ちなみに現在、鶴見線で運用している205系の車体幅は2800mmで、E131系1000番代はさらに狭くなっています。 実は2778mmという車体幅は東急電鉄田園都市線2020系・目黒線3020系・大井町線6020系と同じです。
この3形式はE131系と同じ総合車両製作所で製造しています。側板で比べて見ると、E131系の標準車体は上中下3分割で、それぞれの側板の接合部にはせぎりがあるのに対して、鶴見線用E131系の側板は東急の車両と同じ上下2分割で、接合部をフラットに仕上げています。
E131系1000番代の車体はイレギュラーでしたが、同じメーカー製の東急の車体構造を利用することで、コストを抑えて量産することができたようです。
E131系1000番代は8編成24両を導入し、12月24日から順次鶴見線で営業運転を開始する予定です。
(ぬまっち)