■海外チーム、タイ王国「プリンス・オブ・ソンクラー大学」も大健闘!
今回で21回目となる「学生フォーミュラ日本大会2023」が、2023年8月28日(月)から9月2日(土)までの期間にわたって、静岡県にあるエコパ(小笠山総合運動公園)で開催されました。
ものづくりの総合力を競う、というもので、学生たち自らが構想・設計・製作した車両の性能評価や、デザイン、コスト、さらにはその車両に対するプレゼンテーションまで、さまざまな角度からの審査を行い、その評価で順位を決めるものです。
そもそも学生フォーミュラというのは、1981年にスタートしたFormula SAEがその始まりで、現在ではFormula SAEシリーズとして、世界8ヵ国で10大会が開催されています。シリーズ以外の各地の大会を数えれば18ヵ国で開催されていることになります。日本大会はそのFormula SAEシリーズの一つとして、2012年から加入しています。
今回の日本大会も前回同様、事前のオンラインによる静的審査があり、その後、このエコパ会場での動的審査というハイブリッド開催となりました。
コロナ禍を経て4年ぶりに海外からの参戦を再開した今大会。海外からのエントリーが11チームで、実際に登録まで進んだのは中国1チーム、インドネシア2チーム、タイ1チーム、 台湾1チーム、バングラディシュ1チームの6チーム、会場にマシンを持ち込んだのは4チームでした。
日本大会では過去に2度、海外勢が総合優勝した歴史(第2回大会のUniversity of Texas at Arlington、第13回大会のGraz University of Technology)があります。
●プリンス・オブ・ソンクラー大学、ついにトップ10圏内に
今回、唯一のタイ王国からの参戦となったのが、プリンス・オブ・ソンクラー大学です。この大学の「LookPraBida」チームは、今年のタイでの学生フォーミュラ大会(17th TSAE Auto Challenge Student Formula)で総合優勝したチームでもあり、またこのチームは、これまでも何度か来日して日本大会に参戦をしているチームでもあります。
チームスタッフのシャツには「MAKOTO-SAN」という文字が入っていますが、これは、ホンダやホンダアクセスで脚まわり開発し、「Modulo」ブランドを引っ張ってきた玉村誠さんのことを指しており、このチームが日本参戦した際に、アドバイスしたことがきっかけで、現在もこのチームのサポートをしています。
この玉村さんの車両づくりを受け継ぎ、ついにタイ国内大会で総合優勝したわけですが、日本大会にその優勝車両をそのまま持ち込みました。チームはこのコロナ禍で指導教官であるFA(ファカルティアドバイザー)と、まだ大学に残っている1名を除き、全員が日本での戦いは初めてでした。
事前に行われた静的審査では、「プレゼンテーション」審査38位、「デザイン」審査21位、「コスト」審査34位と、各項目とも成績は伸び悩んでしまいました。特にプレゼンテーションについては、前回の日本大会参戦時のメンバーの完成しつくされた感があっただけに、少々残念な結果となってしまいました。
それでも、F-SAEのレギュレーションで製作され、タイ国内競技会で優勝した車両です。車検から動的審査については、好成績を残していくだろうと思ったのですが、その車検でつまづくこととなってしまいます。
ローカル戦ではなく、F-SAEシリーズとして行われている日本大会です。タイでは問題なかったことが、この日本では問題視されたわけです。担当者からいくつか修正指示が出されてしまいました。
大会スケジュールは、6日間の日程が設けられています。初日にまずEV車検が始まり、2日目からはICV車両の車検があります。車検を通過すると、大会4日目は動的審査と呼ばれる「アクセラレーション(75mの加速タイムを競う)」「スキッドパッド(左旋回と右旋回の周回タイムを競う)」「オートクロス(直線、ターン、スラロームやシケインを組み合わせた1周800mの複合コースの走行タイムを競う)」という走行審査が一日だけ用意されます。
ここまでに車検を通過し、この走行セッションを通過し、「オートクロス」のタイムによって、最終審査となる「エンデュランス(1周約1000mのコースを2人のドライバーで10周ずつ走行する)」の出走順が決定します。
本来順調にいけば車検を通過し、大会3日目にはマシンのセッティングもできたわけですが、修正作業の中に大きな修正が必要な部分があり、その加工に時間を取られてしまいました。それでも無事に車検を通過することができました。
日本大会を走ったことのない2名のドライバーでしたが、大会4日目に開催された「アクセラレーション」で2位、「スキッドパッド」15位、「オートクロス」9位と、順調に動的審査を進めることができました。
そして迎えた大会最終日の9月2日(土)、午前10時半を過ぎ「LookPraBida」の51号車はエンデュランスコースにマシンを運び、順調に出走を開始しました。
1周目には1分11秒のタイムで戻ってきた車両は、その後1分9秒から10秒のタイムで淡々と走行を重ね、10周を走り切り、ドライバー交代でピットに戻ります。ドライバー交代のためにエンジンを停止した後にエンジンの再始動ができないというチームもありますが、51号車は無事にエンジンが掛かって、後半の10周を走りだします。
後半を担当するエースドライバーは、前半よりも速い1分6秒から7秒のペースで走行を重ね、後半の5周目にはベストラップとなる1分6秒447というタイムを刻んで、設定された20周を走り切ることができました。
最終的にはタイムペナルティがあったものの、この「エンデュランス」審査は7位。そして走行後の「効率」審査は14位を獲得しました。
「エンデュランス」審査でハプニングもあったため、その日のうちに暫定結果が出ることがなかったものの、9月5日(火)に出された正式結果によると、プリンス・オブ・ソンクラー大学の「LookPraBida」チームの結果は総合10位、チームにとっては、日本大会過去最高順位となる結果を残すこととなりました。
(青山義明)