目次
■清水和夫がトヨタ新型&歴代「クラウン」を語る。新型ファミリーはどうなる?
●頑固一徹学校で語られた、清水和夫流クラウンの在り方とは?
新型「クラウン」は現在まで、クロスオーバーが発売され、スポーツが発表され、今はセダンとエステートの発表が待たれている状態です…小出ししていますよね~。
国際モータージャーナリスト・清水和夫さんも順次試乗し、今後の2車種に期待を寄せているおひとり。
今回は、毎週金曜日午後8時からYouTubeチャンネル『StartYourEnginesX』で生配信されている「頑固一徹学校」で、そのクラウン・ファミリーについてジックリ語った回を紹介します。
「オレとクラウンはほぼ同年代」という清水さん。初代から新型まで、自身のジャーナリスト人生との関りや想いなど、では、ドーゾ!
●クラウン4部作はどうなる? セダンはMIRAIの生まれ変わりになる?
新型クラウンは、クロスオーバーとスポーツの2作目までアンヴェールされたかたちで、セダンとエステートがこの後に続きます。エステートが一番最後なのかな? 2023年秋ごろと2024年になれば、4部作全部が出そろいます。
クロスオーバーは量販で市販され、私もすでにテストをしています。クラウンスポーツのSUVはちょっとホイールベースを短くして車高を上げたバージョン。
気になるのは、まずエステート。このプラットフォームはカムリ系の横置きエンジン、FF系のプラットフォームを使うんですけど、全長が少し長くなって、室内はちょっと霊柩車みたいな感じに見えてしまいますけど(笑)。
エステートはイコール、ステーションワゴン。クラウンは昔、ワゴンがありましたよね。これはFRだったので、メルセデス・ベンツのW124とかEクラスのステーションワゴンと同じような意味合いがありました。ヨーロッパの場合、アウディにしろBMWにしろメルセデス・ベンツにしろ、ワゴンがけっこう人気あるんですけど、アメリカではワゴンの背が高くなってSUVになった。
今回の新型クラウンは、ヨーロッパタイプのエステートと、アメリカで人気が出そうなSUVのスポーツ、それとマルチに使えるクロスオーバー。これらが3部作でラインアップされますね。
4部作目のセダン、これは2023年の秋ごろに出てくると言われていますけど、今公開されているスペックでは「FR」って書かれているんです。
しかし、クラウンはFRを止めてFF(※E-Four Advanced/電気式4輪駆動方式)にした。FRっていうとどんなプラットフォームがあるのか?というと、いまやレクサスのLSと、フロントにスタックとインバーターを載せてリヤのモーターで駆動するMIRAI(FCEV)。レクサスISもありますけど、これは前のGSの時代のプラットフォーム。今トヨタがFRで乗用車を作るとなると、MIRAIが一番有力。ただ、スタックの代わりにフロントにエンジンを搭載したセダンが出てくるのではないかなと思います。
このクラウンセダンはエンジン車で出るのか燃料電池(FCEV)で出るのか?っていう話があります。私はエンジン車で出るのかな?と思っていたら、トヨタのブランドラインアップの中に『FCEV』って書いてありますから、クラウンのセダンは燃料電池、MIRAIの生まれ変わりになるそうなんです。これが、ひとつのポイントではないかなと思います。
もうひとつは、ハイブリッドのFRもあります。だから、クラウンセダンにはエンジンを持ったハイブリッドのFRと、燃料電池を使ったFCEV。2つある両方ともがFR。
全長は5mくらい、ということで、このクルマがどうなるか?
●クラウン・デパートの中から何を選ぶか? 選択肢はたくさんあるぞ!
MIRAIを買うか、クラウンのFCEVを買うか、もしくは、MIRAIやクラウンのFCEVを選ばずに、ハイブリッドのFRのクラウンを選ぶのか、あるいはクラウンのクロスオーバーを選ぶのか、クラウンスポーツのSUVを選ぶのか。厳密に言えば、4部作じゃなくて、セダンには2つのパワートレーンがありますから、いろんな選択肢があるんです。
クラウンはハイブリッドも1モーターのハイブリッドもありますから、クラウンだけで考えると、ハイブリッド、プラグイン、1モーター、燃料電池と、パワートレーンだけで4種類あって、車型だけでも4種類ある。
まぁなんだろ、トヨタのミッドカンパニーと呼ばれている中核的なグループの中には、『クラウンのデパート』が出来上がる、みたいな感じ。これはそれぞれに個性があるので、実際デザイン含めて、乗ってみないと分からないですね。
今のところですよ、クラウンスポーツ、SUVのプラグイン。コレ、私ちょっと欲しいな♪と思っています。
今、愛車のレンジローバーが走行距離18万km超えたので、コイツが壊れたときに何を買うのか?っていうのが今、頭の中に巡っているんです。今のところメルセデス・ベンツGLCの2Lディーゼル、あるいはまたレンジローバーの直列6気筒ディーゼルを買うか、ディフェンダー90の3Lディーゼルか、あるいはクラウンスポーツのPHEVを買うか。今、ノミネートが4つくらいあるので、現愛車レンジローバーが壊れたときのことを考えると、結構ワクワクします♪
●クラウンの歴史を初代から振り返ってみる
クラウンというと、最初は1955年。私が生まれたのは1954年、スカイラインも1957年。なので、スカイラインとクラウンは私とほぼ同年代。なので、誕生してから69年くらい経っているんです。私の場合、1972年のハコスカGC10からクルマ人生が始まりました。
さて、歴代クラウンのネタを「トヨタモビリティ神奈川」のWebサイトからもらいます。
初代はトヨペットクラウンで1955年~1962年まで。この「トヨペット」という言葉は、アメリカで使いにくかったんです。トイペット、おもちゃのペットっていう意味があるので、トヨタは高級車を作るときに「レクサス」っていう名前を高級ブランドとして立ち上げました。
この初代のクラウンは、ちょっとだるまさんみたいな感じなんですけど、これは『日本人の手で純国産車を作る』という、豊田喜一郎さんが掲げた夢であったわけです。観音開きのクラウンということで、タクシーやハイヤーの定番でもありました。
2代目が登場したのは、1962年。フラットなデッキスタイルとヘッドライトも4灯式になるのと、一気にモダンなスタイルに変化したという風に言われています。クラウンのトレードマークである王冠のエンブレムは、この2代目から採用されました。
3代目は1967年~1971年。このときに白いクラウンということで、自家用車=クラウンというイメージが世の中に定着して、サラリーマンのおじさんたちは「いつかはクラウン」。クラウンは大体部長さんが乗るクルマ、課長さんがマークII、係長になってマイカーブームでカローラに乗る、みたいな印象が、私の若い時代にありました。だから、クラウンを持っているっていうだけで、企業の部長さんなんだ!っていうことが分かったわけです。
1971年~1974年に出た4代目クラウン、これは私も1番記憶に残っていて、今までカクカクしたデザインから、少しクジラっぽいフォルムになりました。このときから、トヨペットの文字が外れてクラウンに変わりました。
5代目が1974年~1979年。この辺から少し高級車っぽい大きいサイズになったのかな。最上級グレードのロイヤルクラウンというのも、この5代目から登場しましたね。
●6代目に乗ろうとしたら徳大寺有恒さんに「ゴルフに乗れ」と言われ…
6代目はですね…そうだ、この6代目はね、我々の大先輩の津々見友彦さんがずっと乗っていたクルマです。
当時、1980年頃に私がチームスバルに入って、80年代後半にジャーナリストの仕事をモーターファン誌で始めた時に、なんかクラウンっていいな!と思って、徳大寺有恒先生に「クラウン乗ろうかと思ってる」って言ったら、「キミ、クラウンは乗っちゃダメだ」と。「ジャーナリストを志すのであれば、ゴルフに乗れ!」って言われてですね、嫌々ゴルフIIを買ったんです。
右ハンドル3速トルコンオートマ、パワステ無し。まったく走らないゴルフにどこがいいのか?って思ってたんですね。徳大寺先生に話したら、「クラウンは日本の道に合うけど、世界には通用しないよ」と。「世界に通用するのはゴルフだから、キミはゴルフに乗って勉強しなさい」と。
初めてフォルクスワーゲン・ジャパンからドイツの試乗会に誘われてアウトバーンをゴルフで走ったときは、なるほどな!と思いましたね。日本ではなかなか評価が得られなかったゴルフですけど、そういう意味ではクルマっていうのは、その国によってベストエフォート(Best Effort/最善努力)で作られているんだなっていうのが、その時に学んだことです。
●「いつかはクラウン」の7代目はバブル真っ只中!
7代目は1983年~1987年、まさにバブル経済絶好調。この頃に「いつかはクラウン」というキャッチコピーが生まれたという風に書かれています。このころに日本をリードする高級車と、世界が認めるトップレベルの高級車を目指し、っていうことになったわけです。
1990年頃にセルシオが生まれます。アメリカではレクサスというブランドが生まれ、トヨタで初めてかな、V8エンジンが積まれるんですけど。
あともうひとつ、派生車種としてマジェスタというクルマが出てきました。この『マジェスタ』っていうのはマジェスティですから、権威とか威厳っていうような名前であんまりリベラルな名前ではないんですけど、この時にフレーム構造からモノコックに変えた、大きな変革があったのかなと思います。
そうこうしているうちに、クラウンは10代目が出てきて、11代目が出てくる。11代目が1999年~2003年ですから、京都議定書、プリウスも出た後なので、21世紀を意識したクラウンですね。
12代目はゼロクラウンで、かなりスポーティな走りになったモデルでもありました。
13代目、2008年~2012年、おぉ~ここからハイブリッドが登場か。クラウンのハイブリッド化ってのは遅かったんですね。
14代目、2012年~2018年、例の盾みたいな感じの、フロントグリルがガバッと口が開いたような感じの『クラウンリボーン』というキャッチコピーですね。まぁこの辺は広告代理店がいろんなアイデアでキャッチコピーを作ったんでしょうけど。
この14代目に『ピンクのクラウン(ピンクラ)』が登城! 今でも銀座・日比谷界隈にピンククラウンの個人タクシーがいて、一度乗ったことがありました。
15代目が2018年~22年。ここは足も含めてドイツのニュルブルクリンクで鍛えたって書かれていますけど、ひとつの時代がここで終わりました。
というのは、今回の新型クラウンは全てFRというプラットフォームを止めて、セダン以外は全部FFのエンジン横置きハイブリッドのクラウンに生まれ変わったんです。ただ、FRをまだ懐かしむ人もいるということで、ハイブリッドのFRと燃料電池のクラウンがセダンとして用意されています。
●日本のもうひとつの国民車、それがクラウン。だからもっと攻めろ!
クラウンを語るだけで約69年くらいの時代の流れを見ることができます。いずれにしても、クラウンによって私たちの日本社会にひとつの特色があると分かります。まぁ日本の国民車というと軽自動車なんだけど、軽自動車じゃなくて、やっぱり日本発のクラウン。クラウンはカローラと違って海外にあまり出していない。せいぜい中国に出ていったくらいなので、純和風の日本発の高級車じゃないかなと思います。
今のところ、クラウンのクロスオーバーとクラウンスポーツのSUVに乗りました。パワートレーンはハイブリッドと2.5Lターボの1モーター。ここまでクルマの大きさを含めて考えるのであれば、もっとモーターのデカいのを付けて、500psとは言わないけど、もっとハイパフォーマンスなクラウンを作ってもいいのかなっていう気がします。
結局、メルセデス・ベンツにしてもBMW、レンジローバー、ディフェンダーにしろ、最近でもV8エンジンが搭載されますから、電動化とか燃費とは言っておきながら、そういうヨーロッパの上のほうのメーカーはバカッ速いクルマを持っているんです。そういったクルマを高い値段で売ってしっかり利益を得る、というのがヨーロッパビジネスなので、日本のクラウンも、あんまり真面目なのはいいんですけど、もっとハイパワーなパワートレーンを突っ込んで、ヤンチャなオヤジたちの気持ちを掴むっていうのも大事なんじゃないかなと思います。
クラウンのスポーツ、ハイブリッドSUVに乗ると、なぜか1モーターが無い。THSしかないので、アレに1モーターがあってモーターの出力がデカかったら、ちょっとヤバいな!と思いましたけどね。
私は、もっとクラウンは攻めていいんじゃないかな、と思います。
せっかく車型で4つ、パワートレーンも5種類くらいありますから、あと燃料電池もMIRAIと同じ130kWくらいだと足りないので、ちょっと大きめのバッテリーを載せて、バッテリーをブースターにして、300kWとは言わないですけど、250kWくらいの出力は出したいなと思うんですよね。
プラグインハイブリッドは重量が重いので、フロントブレーキは対向型のピストンの大きいキャリパーが付いているんですけど、普通のプラグインじゃないハイブリッドは鋳物のフロントキャリパー。なので、あのへんはプラグインと同じキャリパーのほうが見た目もカッコイイなと思うんだけど。
レクサスがいるからってのもあるんだろうけど、ソコは遠慮しないでいい。クラウンはもうかなりレクサスに近いようなセグメントになってきていると思うので、もっとキレッキレに攻めてもいい。それが、クラウンに対する期待というか印象です。
清水和夫さんのようなやんちゃオヤジでも満足できるような、キレッキレに攻めたクラウン希望~!だそうです♪
他にも、上海モーターショーのことについてもチョロッと解説している、清水和夫さんの全ての語りは動画にてドーゾ!
(解説:清水 和夫/動画:StartYourEnginesX/アシスト:永光 やすの)
【関連リンク】
StartYourEnginesX
https://www.youtube.com/user/StartYourEnginesX
トヨタ モビリティ神奈川 コラム「トヨタ クラウンの歴史を振り返る。歴代モデルから最新モデルまで一挙紹介」
https://www.toyota-mobility-kanagawa.jp/column/202208-3
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