トヨタ・ヤリスクロスとアクアの「GRスポーツ」を清水和夫が乗り比べ。「電動パワステとボディ剛性の違いは発進数mで分かる。アクアクロスGRスポーツがあればいいのに!」

■「ヤリスクロスGRスポーツ」と「アクアGRスポーツ」を、清水和夫がそれぞれの素バージョンと乗り比べてみた

●GRスポーツ、この仕様がノーマルになればクルマ選びに悩むことなし!

「ヤリスクロスGRスポーツ」と「アクアGRスポーツ」を、清水和夫がそれぞれの素バージョンと乗り比べてみた
「ヤリスクロスGRスポーツ」と「アクアGRスポーツ」を、清水和夫がそれぞれの素バージョンと乗り比べてみた

トヨタ車には、車名に「GR(Gazoo Racing/ガズーレーシング)」が付く特別なスポーティバージョンがあります。

ヤリスやセンチュリーなどに設定される最強の「GRMN(GAZOO Racing tuned by Meister of the Nurburgring/ガズー レーシング チューンド バイ マイスター オブ ザ ニュルブルクリンク)」、86やヤリス、スープラなどの「GR」、そしてC-HRやハイラックス、ランクルなどにも設定されるライトな「GRスポーツ」の3種類です。

GRバッチが存在感をアピール
GRバッチが存在感をアピール

今回、国際モータージャーナリスト・清水和夫さんがYouTubeチャンネル『StartYourEnginesX』で試乗したのは、コンパクトなSUVテイストが大人気の「ヤリスクロス」と、コンパクトなハッチバック「アクア」にそれぞれ設定された「GRスポーツ」。

カタログモデルとして設定される「GRスポーツ」は、ガチなスポーティバージョンというよりは、比較的ライトなGRテイストを盛り込んだ仕様ということですね。

では早速、ノーマルとGRスポーツ、その違いはどこにあるのか、清水チェックを見てみましょう!(永光)


●凄腕技能養成部の大阪晃弘さんに聞いてみた、ノーマルとGRスポーツの違いとは?

トヨタの凄腕技能養成部・大阪晃弘さんに聞いてみた、ノーマルとGRスポーツの違いとは?
トヨタの凄腕技能養成部・大阪晃弘さんに聞いてみた、ノーマルとGRスポーツの違いとは?

ヤリスクロスとアクア、まぁ似たような感じなんだけど、でもね、乗ってみると意外に似て非なるもの。その辺の話を、トヨタの凄腕技能養成部・大阪晃弘さんに伺いましょう。

清水:ボクが乗った感じは、電動パワステのステアフィールとか、ノーマルからGRスポーツになって良くなったでしょ? あと足もフラット感が出て。

大阪:ボディ剛性アップや、サスペンションのバネレートを上げたり、姿勢変化を抑えるためにっていうような専用サスペンションのチューニング、EPS(電動パワーステアリング)のチューニングもやっています。

清水:一番デカい違いは、やっぱ電動パワステ。もうココから出た瞬間に違いが分かりましたね!

凄腕技能養成部の大阪晃弘さん
凄腕技能養成部の大阪晃弘さん

大阪:狙いとしているステアリングの直結感と、インフォメーションをしっかり分かりながら、応答遅れが無く気持ち良くハンドルが切れていくっていうところです。

清水:アクアとヤリスは、トヨタの中のTCカンパニー(製品開発から生産までを一貫して責任を負う)だから、その中でシャシーの協調領域、同じプラットフォームを使っていますね。

ところが! 乗ってみると、アクセルを踏んだ瞬間のシュワン!っていう感じの加速は、アクアのほうがいいんだよね!

大阪:それは、電池の違いによるところも大きいですね。

全日本ラリー選手権2023で清水和夫選手が乗るヤリスハイブリッド
全日本ラリー選手権2023で清水和夫選手が乗るヤリスハイブリッド

清水:ボク、ヤリス・ハイブリッドで全日本ラリー選手権に出てるんだけど、けっこうショックを受けている! アクアにしとけば良かったかな~って。

でもね、ニッケル水素はトヨタ的には初代プリウスから25年以上にわたる経験がありますから。

大阪:伝統のある技術。バイポーラ化したっていうことで、清水さんが気持ちイイ♪って感じてもらえたような走りになってきたかな、と。

清水:バイポーラは、今までセルをワイヤーで結んでいたのを直接くっつけて圧着しているので、やっぱソコの電池の通り道がスムーズに、大きく流せるような、電気的には抵抗が少なくなったと。それ、ヤリスもやってくださいよ!!

大阪:です、ね! ヤリスはリチウムで、使っている電池も違うので。

清水:でも、ソレやったらまたクルマを買い替えろ!って話になるから(笑)。

●「アクアクロスGRスポーツ」出せばいいのに!!

アクアGRスポーツ
アクアGRスポーツ

清水:今までアクアっていうと、なんかホワッとしたファミリーカーで、あんまりスポーティなイメージは無かったんだけど、今回、ものの見事にひっくり返りましたね! ヤリスよりスポーティになった感じ。

大阪:特にこのGRスポーツについては、ヤリスは素の状態でキビキビっていうところがあるんですけど、高速までさらに安定して走れるクルマっていう、そういう風になっていると思います。

清水:値段も、ヤリスクロスもアクアもノーマルと比べてGRスポーツは20万円アップほどですから。多分、こういった技術は今後、量産のベース車両に入っていくのかな、と。

ヤリスクロスGRスポーツ
ヤリスクロスGRスポーツ

大阪:骨格の部分をさらに、とか。ただ、ヤリスクロスのほうも、ドライブシャフトのねじり剛性を上げたりとか、電池の使い方ですね。出力自体は絶対出力を上げていないんですけど、アクセルのレスポンスを上げたので。SUVなんですけど、遅れのないように気持ち良く走れる。また、アクセルの抜き側にもこだわっていて、荷重移動で走れると。

清水:コレを見ているユーザーはどうすればいいのかっていうんで、無いものねだりしてしょうがないんだけど、『アクアクロスGRスポーツ』があればいいんじゃないかなw!

っていうことで、ニッケル水素バッテリーはまだまだ死んでいません! やっぱり長い歴史があるから、最も安定して、トヨタとすれば、枕を高くして使いやすいバッテリー。リチウムはまだ未知の世界がありますからね。今後に期待!ということで。

●20万円しない差ならヤリスクロスはGRスポーツにするのがコスパ良し!

走り出しの一瞬で良さが分かる、ヤリスクロスGRスポーツ
走り出しの一瞬で良さが分かる、ヤリスクロスGRスポーツ

GRを、たとえばメルセデスのAMGとかBMWのM、アウディのRSという風になぞらえるのであれば、このヤリスクロスGRスポーツは、リアルGRというようなGRヤリスみたいなホットカーというわけではないけど、そのエッセンスを使ってスタンダードのヤリスクロスを少しGR風味にチューニングしたバージョン。だから、値段もビックリするほど高くない。

値段の差はチョットだけ
値段の差はチョットだけ

ノーマルのZグレードと比べると、20万円いかないくらいの価格差なので、乗ってみて良かったら最初からこれでいいんじゃないの?って感じがしなくはないですね。

ノーマルのヤリスクロスとヤリスクロスGRスポーツを乗り比べたんですけど、第一印象は、駐車場から出るときのステアリングのセンター付近の操舵フィールが違いますね。

ハンドルの手応えと、切った瞬間、ノーマルはなんかこの真ん中がちょっと抜けているところがあるんですけど、GRスポーツはしっかりしていますから、そういう意味で電動パワステの制御が良くなったのかなと思います。こういう技術は、やがて量産のほうに入っていくのかなと思いますね。

楽し~い♪
楽し~い♪

ボディもフロアトンネルのところをしっかり補強したり、特にリヤバンパーの内側のレインフォースを高めて、左右のフレームを繋げているみたいな。お互いにサスペンションのリヤの左右の取り付け部をしっかりさせ、つなげることによって、サスが自由に動ける。剛性を上げて、設計通りにリヤサスが動けるようにしたんですね。

まぁ、そういったボディの補強もひとつのポイントなんですけど、もうひとつは、バネとダンパーとハブのところに溝を付けた溝付きワッシャーボルト。あと、ロワアームのブッシュが、GRヤリス系のしっかりしたものに変わっていますね。

ヤリスクロスGRスポーツ
ヤリスクロスGRスポーツ
ヤリスクロスGRスポーツ
ヤリスクロスGRスポーツ

そういったことで、価格的には20万円弱の差なんですけど、実際に乗った感じは、かなりお買い得感があると感じましたね。

やっぱステアリングって大事なんだよな。クルマの印象が変わりますからね。このヤリスクロスGRスポーツに乗ったら、ちょっとノーマルは乗りたくないな!って感じになっちゃいました。

●GRスポーツバージョンのステアフィールの手応え感、いいねぇ!

ヤリスクロスGRスポーツとアクアGRスポーツ、総評!
ヤリスクロスGRスポーツとアクアGRスポーツ、総評!

今まで「GRヤリス」とかって散々聞いてきたんだけど、ヤリスクロスGRスポーツなので、本籍はノーマルのヤリスクロス。そこにGRのトッピングが付いたみたいな感じ。

なんかこれ、凄く良くなっていて、値段が15~16万円アップでしょ。だったら最初から量産車コレでいいんじゃないの?って感じはしなくもないんですけど。

でもね、一番違うのは、ボディコントロール。ロールピッチが少なくなってフラットライドになったのと、駐車場を出て最初に分かったのは、ステアリングセンターがグニュってならなくて、低速でもちゃんと手応えがある。

これね、重いっていう人がいるからノーマルは柔らかくしたのかもしれないけど、でもねぇ『それくらい自分でハンドル切れよな!』って感じ。

●アクアGRスポーツ、やられたなぁ! ちょっとクヤシイw

アクアGRスポーツ
アクアGRスポーツ

ヤリスクロスGRスポーツと違って、コッチはクロスじゃないので普通の車高。ま、オンロード主体かな。

でもね、ヤリスクロスとアクアって、似て非なるものなんですよ。

同じセグメントで、同じようにTHS(トヨタ ハイブリッド システム)だけど、バッテリーがアクアはバイポーラニッケル水素。で、ヤリスはリチウム。

アクアもノーマルとGRスポーツでは価格差もチョットだけ
アクアもノーマルとGRスポーツでは価格差もチョットだけ

リチウムイオンバッテリーのほうが新しいから良いんじゃないか?と思うけど、実はトヨタは、このニッケル水素に関してはプリウスから25年以上使っていますから、実績はあるし、使い慣れている。

今回、バイポーラってことで接点の面積が上がったりして、電気を瞬間的にドバっと出すのは、このニッケル水素のほうが得意らしいんです。ヤリスクロスGRスポーツと比べると、アクセルをフッと踏んだ時の応答性は、アクアGRスポーツのほうがいいですよね。

アクアGRスポーツ
アクアGRスポーツ

今回の試乗会はね、アクア愛に満ちた試乗会で、ヤリス派としてはちょっと複雑な心境です。

電動パワステとかスタビ、バネ、ダンパーとか見直したり、ボディ剛性を上げたり。その辺は、ヤリスクロスGRスポーツとアクアGRスポーツは、同じようなエッセンスを持っていますね。パッと乗った感じは、このアクアGRスポーツ、悪くないです。

ノーマルのアクアと比べて、コッチも違いは20万円弱。シュッと踏んだ時にスッと前に出る。これは、ヤリスクロスGRスポーツよりコッチのほうがいいな。

ドライビングプレジャーはアクアGRスポーツの勝ち!


2023年は、ヤリスCVTからヤリスハイブリッドに車両変更して全日本ラリー選手権を戦っている清水和夫さん。最大のライバルはアクアGRスポーツベース車両かも。清水さんのすべてのインプレッションは動画 ↓ ↓ ↓ で!

(試乗:清水 和夫/動画:StartYourEnginesX/アシスト:永光 やすの

ヤリスクロスGRスポーツの主なスペック
ヤリスクロスGRスポーツの主なスペック

【SPECIFICATIONS 】
・YARiS CROSS GR SPORT(ハイブリッド車)
全長×全幅×全高:4185×1765×1590mm
ホイールベース:2560mm
トレッド(前/後):1515/1515mm
カタログ重量:1180kg
最小回転半径:5.3m
乗車定員:5名
エンジン型式/種類:M15A-FXE直列3気筒DOHC
内径×行程:80.5×97.6mm
総排気量:1490cc
エンジン最高出力:67kW(91ps)/5500rpm
エンジン最大トルク:120Nm(12.2kgm)/3800-4800rpm
燃料タンク容量:36L(無鉛レギュラー)
フロントモーター型式/種類:1NM/交流同期電動機
モーター最大出力:59kW(80ps)
モーター最大トルク:141Nm(14.4kgm)
駆動方式:前輪駆動
サスペンション形式(前/後):マクファーソンストラット/トーションビーム
ブレーキ(前/後)ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ(前/後共): 215/50R18
専用部品:タイヤ&ホイール(18インチ)/ボディ剛性アップパーツ/サスペンション/パワートレーン制御&ドライブシャフト/フロントグリル/フォグカバー/リアバンパーカバー等
車両本体価格(税込):2,750,000円

アクアGRスポーツの主なスペック
アクアGRスポーツの主なスペック

・AQUA GR SPORT
全長×全幅×全高:4095×1695×1485mm
ホイールベース:2600mm
トレッド(前/後):1470/1465mm
カタログ重量:1150kg
最小回転半径:5.3m
乗車定員:5名
エンジン型式/種類:M15A-FXE/直列3気筒DOHC
内径×行程:80.5×97.6mm
総排気量:1490cc
エンジン最高出力:67kW(91ps)/5500rpm
エンジン最大トルク:120Nm(12.2kgm)/3800-4800rpm
燃料タンク容量:36L(無鉛レギュラー)
フロントモーター型式/種類:1NM/交流同期電動機
モーター最大出力:59kW(80ps)
モーター最大トルク:141Nm(14.4kgm)
駆動方式:前輪駆動
サスペンション形式(前/後):マクファーソンストラット/トーションビーム
ブレーキ(前/後):ベンチレーテッドディスク/リーディングトレーリング
タイヤサイズ(前/後共):205/45R17(ポテンザRE050A)
専用部品:フロントバンパー&グリル/ロッカモールディング/リアバンパーカバー/タイヤ&ホイール/フロントブレーキキャリパー/床下ブレース&リアバンパーリインフォース/サスペンション/シート表皮(エアヌバック+合皮)/インパネ&ドアトリム/ステアリングホイール/アクセル&ブレーキペダル等
車両本体価格(税込):2,595,000円

【関連リンク】

StartYourEnginesX
https://www.youtube.com/user/StartYourEnginesX

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この記事の著者

清水和夫 近影

清水和夫

1954年生まれ東京出身/武蔵工業大学電子通信工学科卒業。1972年のラリーデビュー以来、スーパー耐久やGT選手権など国内外の耐久レースに参加する一方、国際自動車ジャーナリストとして活動。
自動車の運動理論・安全技術・環境技術などを中心に多方面のメディアで執筆し、TV番組のコメンテーターやシンポジウムのモデレーターとして多数の出演経験を持つ。clicccarでは自身のYouTubeチャンネル『StartYourEnginesX』でも公開している試乗インプレッションや書下ろしブログなどを執筆。
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